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我が家が一番!  作者: 津村ん家の婆ァ
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七話目 田舎の夏、都会の夏⑧

お待たせしてます、何とか一話更新です。

 王宮に来てからはや七日が経ちました。

私の体調不良は目が回るような忙しさ、主にゼプスさんに関わった事ばかりですが。お陰様でルムックちゃん達の事で落ち込む暇すら御座いません。そして、ロイヤルなお部屋は虫除けの術が施されているそうで「虫嫌いな私の為に」という名目で同室になっているそうな。ええ、まさか気絶するほど苦手だとは知らなかったそうですよ。ホントかしら。


 着ぐるみパジャマ製作を依頼されてからお城の専属お針子さんやら防具を作る職人さんやらにご協力頂きながら、あちこちにお伺いの為のお手紙を部屋付きの侍従さんに代筆してもらって出したり、村宛に事後報告みたいでヤダけど現状を伝えたり、その手紙の中でグレイちゃん宛てのお願いも書いておきました。橇大会、今からでも準備をしておかないと間に合わない可能性が出てきそう。いや、私は参加を辞退したい側だからね。代理の人形製作もコッソリ出しておきたいけど、手紙を書く時点で代筆者にお断りされています。何故に?


 先に言っておきますが、私の裁縫の腕前は超初心者です。糸並みに細い針を、私の爪付きの手で持つのはかなり難しい技。自宅で作業する際は、グレイちゃんに作ってもらった専用のペンチのような道具を使ってちまちま時間をかけてするの。だもんだから玉結びも糸通しも難しいのよ。なので超頼もしい助っ人、王宮専属のお針子の方々に製作協力をお願いしました。これが大正解。


 私のざっくりしたあの図面から、ゼプスさんsizeの型紙を初見で器用に書き起こして布選びに裁断、縫製まですでに七割方終わらしています。しかもオール手作業なのに縫い目がキチッっと揃って均等に縫われてるのよ。勿論縫い目が肌に当たらないように配慮した端始末迄完璧。プロって偉大よぉ、もう尊敬だわ~。もっふもふの尻尾は座り心地を配慮して、手のひらサイズの綿入りクッションで律儀に再現されているという何とも心憎い演出まで。さらにフードに取り付けた耳がもうもう、いやーん、私も欲しーい!


 布地は肌触りがよく天然の素材をと選んでくださったのは、なんとトローの荒編み。厚織りガーゼみたいなものなんだけど、肌触りは確かにいいの。通気性もいいから蒸れにくい上に、しっかり汗を吸収してくれる優れもの。これらを使うなんて普通は思わないわよね。


 トローの荒編みガーゼの二枚重ねた作りは、縫い目が肌に当たらない為の工夫と一枚では心もとない透け感を補う心使いです。これなら寝苦しい真夏の夜でも大丈夫でしょう。


 こんなモエモエパジャマを着用するのが42歳独身の魔獣マニアなおっさんって処がちょび~っと目を逸らしたい現実ですが、お針子さん方のウケはかなり良さそうな好感触。可愛いという評価は私も同意です。


 こっそり2歳児sizeのサンプルも作ってますとも。並べるとまさに親子ペアルック! 将来的にセス君親子で着てみればいいと思います。その時には是非とも絵姿ぷり~ず! 


 お針子さんをはじめ、お城にお勤めの方々に「赤ちゃんの転倒」について聞いてみると、やはり動き出してからの「転倒」はかなり多いらしいの。特にハイハイが始まってから目が離せないそうで、大変だったという話がゴロゴロ。


 お貴族様は専門の乳母を付けられるけど、庶民はそうはいかなくて奥さんがおんぶ紐で背中に括りつけて家事をすることが殆どだそうです。上の子がいる家庭では大体子供に子守りをさせておくので最初だけ大変だとか言ってますが、転倒よりも転落の方が多いと聞いてビックリ。階段や椅子は勿論のこと、中には引き出しとかカーテンをよじ登っては落っこちるそうです。こっわ!


 村の子供たちは駆けずり回って転ぶ事が圧倒的に多いから、落っこちるってのは思いつかなかったわ~。キャットタワーならぬベビータワーとかあった方がいいのかしら。後でブランコと滑り台、雲梯と砂場、あと上り棒辺り試作して、お子様のいる方々にモニターして貰おう。あ、三輪車もいいかもしれない。


 大人の方々にはボルタリング出来る壁面に覆われたアスレチックルームでもあった方がいいかもね。安全帯と命綱付けて壁面上り。トランポリンとかも設置しちゃって、壁走りとか宙返りとかやったら楽しくない?


 ついつい思いつくままにあれこれ書き込んでいたら、気づくと結構な枚数になっておりました。うん、発想は大丈夫。


 公園遊具に体操器具、補助具に着ぐるみ、夏の風物詩まで。村だと流石に思いつかないわ~、あんまり必要ないもの。あ、蚊取り線香と蚊取り豚は必需品ですとも。村だと行水用の大きな盥も必要なのよね、主に食材を冷やすのに。


 あと日差し除けの葦簀は便利よ。風に飛ばされないよう固定しなきゃなんだけど、こちらの王宮には流石にそぐわないわよね。




       *******




 夏バテ療養でハルト国にお邪魔していることは、商業協会の方々にも知れて居た様で、現在宰相さんの居る執務室にて何故かふつーに顔合わせをしております。何故?


 商業協会の方々は新商品の販売に関して「許可」を取得するためにこちらに来ていた模様。そこへ完成した着ぐるみパジャマと掛かった費用の明細書を提出する処で、執務室にノックがかかったんです。普通は先に入った人の用件が終わらない限り、次の人を案内することはないと思ったんだけど。


「失礼します、見本完成品が出来上がりましたのでご検分をお願い致します」

「ほう、仕事が早いですな」


 なんでも相当数の品を作るので、に必要な鋼材の手配の為に早急に認可を取らないとならないみたい。私、席外そうかしらって思ったんだけど、出てきた見本完成品とやらがひっじょ~に見覚えあるんですよ。


「土台は表面を研磨したガウン鋼石の原石を使っています。本体は精製したガウン鋼を研磨してこの輝きを出しました。この色に調整するのに時間がかかりましたが、いかがでしょう」

「出来は文句ない。掛かった費用の概算と利益はどうなんだ」

「試算ではこうなっております」


 ガウン鋼っていうのは主に建物の装飾に使われる鉄鋼なの。色は加工技術の一種で付けられる温度によって変化するので、その辺は職人の腕次第。大体が精製して、メタリックな質感を好んで使うので、彫刻品とかにも使われるの。


 確かにテーブルの上には名刺二枚ぐらいの大きさの台座に固定された掌サイズの大会紋章(エンブレム)。台座の高さは三センチほどで、前側面に『セルシウス陛下とルーメニア妃殿下ご成婚記念企画、タングステン村発祥、ちび竜ちゃん杯単騎橇滑走大会公式紋章』って彫ってあるの。コレ要らなくない?


 見栄え仕様なのか紋章部分は重視の外見は、ほんのり青みを帯びたメタリックシルバーをしていて、真っ直ぐに起立ではなく、若干見上げるかのような緩いカービングが成されていて、見覚えのある仕上がりです。台座の真ん中に立てられたのではなく、向かって左に寄せられ、空いた空間が妙なお洒落感を出しています。土台をよく見ると、墨染のような黒みがかった層と琥珀のような飴色の層の縞模様で構成されていて、却って高級感があります。


「はい。こういう記念品を今後、公式商品として売り出そうと考えております。今回は第一弾として大会紋章を使用し、大会内容を示す小物として単機橇の模型を付ける予定です。いかがでしょうか」


 スポンサーとしての公式商品の販促は確かに大事だけれど、なんていうか優勝賞品よりもめっさカッコよくない?


「ふむ。これは一点物として売り出すのですか」

「いいえ、溶かした金属を特定の型に流し込んで量産しています。材質上、作れる数に限りがございますので通し番号をそれぞれに刻印する予定です」


 うわ、シリアルナンバー付きの高額商品だわ~。ヤバい、ちょっと欲しいって思っちゃったわ~。最初見たときはこっぱずかしくてまともに見てなかったんだけど、こうしてみると結構カッコイイデザインだったのね。


 お値段は高めの銀貨大一枚と銀貨小五枚。う~や~、少し躊躇うお値段設定だけど、使われてる金属と、加工費用を考えるとこれでも良心的と言えるのかしら。後でグレイちゃんかフライス工房の人に聞いてみよ~っと。


「この紋章は隣国カーバイトのタングステン村で開催される大会専用のものだ。他の大会では使用は国家間の条約により禁止されている。販売には我が国の他、カーバイト国とタングステン村の許可も必要となるが?」

「現在同じように商業協会の者がそれぞれに許可申請に動いております。申請がおりましたら、大会開催中のタングステン村での現地販売の他は王都バルトと王都に公式商品取り扱い店舗を設けまして、売上の一部を大会費用へと回す予定です。後は大会で使われる単機橇の販売も考えております。単機橇だけで他の大会を開いても、こちらの紋章を使うことは御座いません」


 うや~、女帝連盟による条約は絶対遵守のようです。お値段高めは大会費用の為だったわけね。寄付金込みの価格なら納得かな、どの位が寄付金になるのかわからないけど、商業協会のやり方次第ってところかしら。


 商業協会の人は前回大会に参加していたそうなんだけど、完走は出来ずコースアウトしちゃったんだそう。なので次回大会開催を確実にした上で今度こそ完走を目指したいと意気込んでいました。こういう人、結構多いそうです。


 ただ公平を期すために、橇の改造は一切認められないのがタングステン村の大会。ええ、ここまで大規模なイベントになるなんて誰が思うのよぅ、そしてここまで橇大会に熱くなる男達が居るなんて思いもよらなかったわ~。


 そしてゼプスさんがハルト国側の公式委員会役員だなんて事も。宰相なのに何やってんですか~!


「暫定で引き受けました」

「暫定なんですね」

「ええ。あのままですと新国王が即位の儀と婚姻式をほっぽり出して名乗りをあげかねなかったんで、宰相職の後任を育てる意味で私が暫定的に役員になりました。その間の私の仕事は副宰相達に割り振って進捗状況を確認しながら進めましたよ」


 お仕事中絡みならゼプスさんは確かにまともね。ルムックちゃん達を目の前にした怖い目の変態さんではなかったわ。


「ちび竜殿。商業協会の商品はどう思いますかな?」

「うーん、記念にはなると思う。ただ、そこまでするような大会かしらって思ってるのも事実だしね。正直言って橇を改造してもっと速い記録を出す事だって出来なくはないのよ。ただ、その速さに対してどこまで安全面が保証できるかって問題が根底にあるの。怪我無く、安全で。そのルールの中で何処まで速さに特化できるかっていう競争だから、橇の改造はしないの。速さを競うだけなら橇じゃなくても艇だって良い訳でしょ。雪山で安全に遊べる方法を考えたらこうなったっていう職人技の集い。それが橇大会だったと思うの」


 だから、公式行事になんてしないでね! 私、勝手に公式キャラクターにされてんのよ、あの寒い中で延々と表彰式まで居なきゃならないのよ。ホントに冷えて退屈で困ってんのよ。おまけに大会の参加賞と入賞者用の副賞品も作んなきゃならないし、大会終了後の橇体験ツアーのお陰で、日中村の中を自由に歩けなくなったし。意外とフラストレーション溜まるんだから~!


「うや、個人的な感想で言えば製品自体の出来はもんのすごくいいと思うわ。正直言ってちょっと欲しいって思ったもの。空間のバランスも色もいいし、無駄を省き切ったこのデザインなら置く場所を選ばないから、売れると思う」

「おお、本当ですか」

「ただ、問題はこの大きさね」


 正直言ってこれを買えるのはある程度の生活に余裕がある人か、収集家だと思うの。記念品だからと言って、誰もが簡単に手を出せる価格じゃないし、高価な置物をわざわざ買うなんて客商売とか何らかの話題が欲しい人じゃないかしら。


 私なら持ってるって見せびらかしたい、そんな気持ちに応える商品の方が余程いいと思うの。例えばペンダントトップとか、キーホルダーとか。持ち運べるサイズならもっとお値段も下げられて、手も出しやすいと思うの。置物を置く場所がない人でも手に取りやすいし、お土産に買っても嵩張らない。高めのお値段をキープしたいならロケットペンダントにして、大事な絵姿を持ち歩くアイテムにしたっていいと思うの。細工の細かさで監修は必要かもだけど、これだけの加工技術はあるんだもの。あとは発想を何処まで引き出して形にするかよね。


「なので、個人的にはこの大きさの1/10を飾り紐に付けて、身に着けるわね。周囲に見せびらかして話題にもなるし、何より置き場所無くても持ってられるから、お土産に買って帰るのも嵩張らないし、紐のデザイン次第でバリエーションは幾らでも出来るわ。リボンタイにしてもいいし、持ち物に目印代わりに巻き付けてもいいわ。使う人次第で使用目的なんて変わるんだから、敢えて明記しないで売り出すのもアリよね」

「ほほう!」

「身に着けるときたか」

「因みに女性なら頭にこうして結んで、片側からこうやって垂らして見せればいいんじゃないかしら。招待客用に敢えて非売品扱いの紐色を配るのもいいと思うわ。紐の代わりに凝った作りの細い鎖とかにしてもいいし」


 昨年は国軍の方々が現地スタッフとして、警備から誘導、記録に審査まで揃いの軍服で頑張って頂いたの。村人もスタッフとして参加している人は、村人揃いの上着に腕に腕章を付けて頑張ってくれたので、お客と間違えることはなかったの。選手はゼッケン番号を付けてもらったしね。


「折角公式って決めてるなら、公式色とか決めちゃって、それを基にした関係者しか使えない作業服とか小物とか作ればいいのに」


 村の羊達は私と違って暗記は得意。スタッフさんをしてくれたら国軍の皆様方の顔をしっかり覚えていて、絶対追い回したりはしなかったの。質の悪いお客も覚えているから、結構マークしてたしね。


「運営スタッフだと分かる方がいいのですか?」

「うや、村の上着着てると会場内で迷子やらトイレ案内やら尋ねられる事が多かったの。あと会場からゲートまでの道のりで、わざと村の中に行こうとして国軍の方々に取っ捕まったり、揉め事の仲裁やら、お店の商品の買い占めやらあったわ」

「それは大変でしたね」

「一人あたりの購入制限とか羊達による巡回とか、とにかく対応出来る人員を増やして何とか凌いだけど。イベント中の村の中を気軽にうろつけないから、村人の鬱憤は結構溜まってね、最後の方は異様なテンションの高さでピリピリしてたわ~」


 次回大会を本気で考えてるならこの辺の問題解決も本気で取り組まなきゃよね。この辺片付かなかったら、それを理由に次回開催を四年後辺りに引き延ばせないかしら。

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