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我が家が一番!  作者: 津村ん家の婆ァ
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七話目 田舎の夏、都会の夏⑦



「ちび竜どの、来て早々にぶっ倒れるまでご飯を作らんでもいいと思うのだが」

「ぶっ倒れたのはバッタが顔に飛んできたからです。虫のせいです。春先はこんな虫なんていなかったのに~!」

「ちびさんの悲鳴に俺は驚いたけどな」

「そういえば虫苦手ってよく言ってたけど、まさか気絶するレベルとはね」

「私も虫はあまり得意ではないのだけど、気絶まではしないから」


 セス君パパさん、気絶は私も予想外でしたとも。間違っても夏バテのせいじゃありません。プレタ君、村で私の悲鳴は既にテンプレ。お陰で何処で迷子になってもお迎えが来なかった事例はございません。そしてセス君、姫ちゃん。変な感心しないで下さい。そして平民の私がなんでロイヤルな方々のプライベートルームに寝かされているのかな~? 


「やっぱりちびちゃんのご飯は美味しいわ~」

「うん、この奇抜さはちびちゃんだよね~」


 ロイヤルな方々のお手にはお箸と先程作っていたサラダうどんが見えるのは、なんででしょう。ズルズルとまではいかなくても和やかにお食事されているのはよくわかります。レンゲではなく小ぶりの木製のオタマらしきものを手慣れた様子で使い慣れてるようですので、おうどんのお食事は結構頻度が高いみたいね。


 新婚新王夫婦をはじめ、皆様とってもにこやかな顔して冷やしサラダうどんをほおばっております。こんな和やかでいいのかしら。


 今回は少しだけ細めのうどんと揚げ玉の製作をお願いして、出汁醤油をベースに干し茸をダシに加えたひんやりスープで仕上げました。薄切りのミニュウのお肉を冷しゃぶにして、いろどりにレタスに近い葉物をちぎって乗せ、すりごまペーストとポー豆豆乳にめんつゆを合わせたタレをかけてトッピング。蒲鉾だの竹輪は流石に無いので、彩りに千切り人参を軽く湯通ししてから添えてあります。


「冷たいうどんもいいですな」

「ええ、食べやすくて、お肉もあっさりしていて美味しいわ」


 セス君パパさん、ママさんも上手にお箸を使って食べてるの。箸って文化は無かったんだけど、料理人たちがこぞって使いだしてから、ハルト国の王宮では現在お箸ブームだとか。外交の場ではそのメニューはやめようね、ロイヤルな方々がズルズルうどんを啜る光景は本気で脱力しそうよ。あ、つゆが跳ねそう。


「ちび竜ちゃん様、移動型クーハン試作機の使い心地は如何でしょうか?」

「ええ、ただ寝ているだけならいいと思うわ」

「さようでございますか。では移動実験に移られてもよろしゅうございますか?」

「それは勘弁ください」


 ええ、春先の結婚式の翌日ににこやかなメイドさんによって、テーブルワゴン車に載せられた浅い大きな籠に載せられて、そのまま城内移動を余儀なくされたあの「クーハン」の改良型に現在寝かされております。簡単に形状説明をすると、支柱の付けられた台車に、ハンモックを付けて、その上に寝籠を載せられているという寸法。振動のショック軽減は確かに出来ているんだけど、別な意味で気持ち悪くなりそう。


「ちび竜ちゃん様が帰られましてから、振動が伝わらないようにと色々創意工夫がなされましたが、これが一番振動を抑えられると結論が出まして、試作機14号機になります」

「じゅ、14?!」

「更に城内の廊下全てに毛織物の敷物を用意する手筈も現在進行形で進めておりまして」

「ちょー! なんて勿体ない上に無駄使いをー!」


 侍女さんのお話で行くと、このだだっ広い王宮内の床を消音効果&衝撃吸収効果のある絨毯で覆うという事よね。それじゃあ泥棒さんとか侵入者の足音とかも消しちゃうって事よ。それは警備の面でも絶対にダメじゃないかしら。


 それに掃除の手間は確実に増える。維持に掛かる経費を考えてもそれは効率悪いし勿体ないわ。城内の床全部ですって? 材料、何を使うのかしら。もし羊毛だったら何頭分要るのかわかってるのかしらね。羊毛って刈ってそのまま使える代物じゃないのよ。刈った毛は先ず洗濯。のぞみ達は定期的に洗われるので、ひどい汚れは無いものの消臭と漂白は必須。


 汚れを取り除いた段階で商人さんによって値段が決められ、状態によって品質のランク分けが成されるわ。その後に加工先で染色や加工がなされて材料として職人さんやらの手元で商品に仕上げられるのが主な流れ。今年刈られた毛だって、商品として消費者の手元に届くまで一年以上の時間がかかっているのよ。


 絨毯にするだけでもこれまた時間が掛かるわ、消音効果&衝撃吸収効果を考えるなら織物の毛足は長くなるでしょうし、王族が使うとなれば品質はもちろんの事、模様とかもかなり凝ったものをと考えてるんでしょう?


 設置面積も考えれば請け負う商人はほぼほぼ皆無と言っても過言じゃないわ。そうなれば生産者に直接依頼って方法を取らざるを得なくなるじゃない。その話、ウチの村に持ってくるなら私が断る。のぞみたちの立派なモフモフを土足で踏まれるなんて私が耐えらんない! せめて上靴に履き替えるか靴下で丁寧に乗っかって欲しいわ。 


 我が家の冬用のお座布団こと厚手のフエルトマット。あれだってどんだけ作るの大変だった事か。ヘタレ防止加工で羊毛三種混合の特許ものなのよ、あれ。一応村外不出の扱いで、現在ヘタレ具合の実験として各家庭の寝具にも使われているけど。


「赤ちゃんの成長は個体差があるからおよその目安でしかないけど、生まれてから首がしっかりするまでは殆ど寝返りも出来ないからクーハンやお布団でもいいけど。問題は寝返りが出来たらよ。すぐにでもハイハイを覚えて目が離せなくなるし、つかまり立ちが始まれば行動範囲は拡大するし、クーハンの出番なんてほんのわずかよ。動き出すまでのわずか半年の期間の為に14もの試作機なんて無駄過ぎよ」

「無駄とは言い過ぎです」

「だまらっしゃい、だったら赤子が転んでもケガをしない服とか安全に遊ばせられる道具とか開発した方がよっぽど世間の皆様にとっても有効で建設的よ。ケガ人のリハビリテーションにだって応用可能なら一石三鳥よ。そういう使われ方の方が生まれてくるお子様たちだって喜ばしいと思えるわよ」


 大体、赤ちゃんだったらおんぶ紐の方が手軽で機能的だわ。引っ付いている分体温とか様子とかよく分かる上にだったら広めの一室に転んでも安全な様に分厚いカーペットを敷いて、遊ばせる方がよっぽど安上がり&確実に安全。それに赤ちゃんはお母さんに抱っこされている方が心臓の音が聞こえて安心するっていうし、抱っこ紐で背負っているくらいの方が機動力も確保出来て尚且つ安上がりでしょうに。え、公式の行事に参加? か弱い赤子が参加しなきゃならない公式行事なんてある訳ないでしょうが!


 赤ちゃんのお仕事はいっぱい寝て、いっぱい泣いて、しっかり出すもんだして、たぁんと食べて元気に大きくなること。公式行事なんて自我がはっきりして、ある程度の常識をちゃんと理解できるようになってからで問題ありません。それまでは心と身体を健やかに育つ事を第一に、一日一回は笑顔になるよう気を付けてあげればいいんです。うちの村なんておんぶ紐と風呂敷でみーんな元気に育ってます。


「それでは歩き出してから転ぶ様な事態に対処出来ません」

「転ぶ事を恐がる子供に、この国の未来を預けたいのでしたらどうぞ。私なら転んでも起き上がって前に進む子供になれと手を差し出します。場合によっては一緒に転がりますよ。うちの子たちは転んでも自力で起き上がり、こっちが転んだら手を貸してくれますよ。困っていたら助けてくれる優しさと、頼れるカッコ良さを兼ね備えた、ちょっとだけ恥ずかしがり屋で心配症で気配り出来て、私のご飯たくさん食べてくれて不意に見せる甘えがもんのすごく可愛くて、最近じゃ苦手な他人とのコミニュケーションも頑張ってて、多感なお年頃の自慢の家族なのよ」


 強くなりたいからって旅に出ちゃって独り寝が寂しいわよぉ~、言ってて余計さみしくなりそう。


「ひっくり返るのが怖いなら、クッションで鎧でも作って着させておけばいいのよ。頭部と臀部と膝をガードできる着ぐるみファッションなら見た目も可愛いじゃない」


 歩行器とか手押し車とか、絡繰り作るならそういうのにしなさいよ。後は木馬とかカッコよくない? あ、個人的にロッキングチェアとかハンキングチェアとか作りたいんだけど。ブランコみたいな感じのがい~な~。んで、風ちゃんと雷ちゃんとゆらゆらされんの、出来ないかしら。


 王宮は流石に物資が豊富。紙と筆記用具が部屋に備え付けられてるんだもの。お絵かきでこーんなカンジでこんなんなってて、ここは強度が必要だとかカリカリ書き込んでみました。でっかいベンチのようなブランコとか、定番のロッキングチェア。動かすとカタコト動くおもちゃの着いた手押し車や、やんちゃな赤ちゃんが乗ったら暴走ドリフトする歩行器も。


 着ぐるみファッションも書いてみたけど、こっちにワンコとかニャンコみたいなのは魔獣なのよ。デフォルメした風ちゃんをロンパース風にを書いて、大体の構造を書き込む。もちろんふさふさの尻尾もちゃんと装備。但しこちらには人工毛皮は存在しないので、ベルベットみたいな上等の手触りの布を使うものと思われるけど、この辺は製作者の力量とセンス次第。


 流石に夏に着用のさせるのは無理だろうから、甚平スタイルとかかしらね。肌触りと吸水性のいい綿素材のが一押し! あ、でも親子お揃いの格好も捨てがたいわ~。ただのTシャツと簡素なズボンで。麦わら帽子まで揃えてたら、可愛くない? あ、国王様にその恰好は拙いかしら。


「全身、ですか。面白そうですね」

「これ子供用! 大人ならシンプルにつなぎ服で!」

「いえいえいえ、このルムック仕様の宰相サイズを作って、贈った反応が是非観たいですな」


 宰相さんって、たしか「魔獣を思うままに愛でたい」願望のある人だっけ?


「ゼプス様ならすっごくリアルな仕様にしないと振り向かなさそう」

「そうですね。魔獣に関しては拘るポイントが妙と云いますか、相当詳しくないと話にツイていけない御仁ですが、業務は至ってまともで有能です」

「仕事に関してはある程度の融通も聞くし、妥協もするんだが。何故か魔獣関連は殊更細かくてな、特定の基準を満たさん事には一切妥協せんのだ」

「おまけに専門家並みに特徴に詳しいもんだから、最近じゃ討伐魔獣の生態図鑑の監修までやっててな。これがまた評判良いんだ」

「しかも通常業務をしっかり終えた後に寝食忘れてほぼ徹夜。その後一般業務も熟すもんだから、誰も文句が言えんでな」


 徹夜しても日常業務に支障ないなんて、どこの社畜かしら。そこまで魔獣への愛情が深いなんてすごいわ、宰相さん。いえ、魔獣マニアと言った方が正しいのかしら。


「だもんで、タングステン村の魔獣が旅に出たと聞いて寝込んじゃいましたけどね」

「近いうちに会いに行くんだと仕事を前倒しで進めていましたからね~」


 うちの子が変態に襲われなくて良かったと思うべきかしら、

 それとも襲われる前に企みが潰えて良かったと安堵すべきかしら。

 はたまた事前申告をしなかったからだと罵るべきかしら。

 いやいや、事前申告をさせたらかえって、うちの子の逃げ道を塞ぎかねないわ。

 むしろ何も知らない方がいいかもしれないわね~、黙って見守るのが良策かしら?


「ちびちゃん、ホントに相変わらずだね」

「え? これが普通なの?」

「そうだよ、こんなの日常茶飯事だったよ。何が出るかわかんなくてワクワクしながら村に通ったんだよ~。下手な政策会議よりも断然楽しかったし、結構使える話も多かったよ。出てくるご飯も美味しいし」

「それは否定できませんね。殿下も嬉々として通われてましたから」

「私も通いたかったわ、これからやってみようかしら」


 プレタ君、セス君、ひめちゃん。一般常識として王族が嬉々として通う「ど田舎村」ってどうなの? 私の家は関係者以外立ち入り禁止ですからね!




       *******




 こうして「王宮の床を絨毯で覆う」案は、セス君の却下を持って闇に葬り去れました。ふっ! のぞみたちのモフモフを土足なんぞで踏みまくられるなんて冗談じゃないわ。


 代わりにベビーサークル、歩行器、手押し車、室内ブランコ、滑り台等々、安心して遊べる遊具の説明を三日程掛けてやらされました。現在幾つかが試作機の製作に入っているそうです。これらの進行を担当しているのは寝込んでいた宰相のゼプスさん。


 ゼプスさんは二日前に業務に復帰し、現在通常業務ほか今回の移動型クーハン試作機の顛末を知り、魔術絡繰り愛好家の皆様に一喝なさいました。元々魔術絡繰り愛好家の活動は新たな魔道具の発明が目的の集まりだったらしいのですが、興味の惹かれるものをとことん追求する癖が悪化しているらしく、今回のような無駄な追及も珍しくなくなっているんだそうです。


 とはいえ、試作品を作るのも無料でって訳にはいきませんから、今回は私の提案した遊具の実用化に向けた試作品作りを担当してもらうそうです。どれも魔道具ではないので構造を理解すれば難しくはない筈です、たぶん。


 当然ここまで聞けば、例の着ぐるみの話もゼプスさんの耳に入ります。ええ。


「布で出来た鎧ですか。ふむ」

「正確には転倒防止対策としての機能を持たせた防護服よ。材質は軽くて薄型、それでいて衝撃吸収に優れた素材が望ましいけど、服としての機能もあるといいと思わない?」

「これは子供専用としてですか?」

「当初の目標としては。次点として、怪我などで日常生活動作訓練が必要な方々の転倒時の補助防具として使ってもらったらどうかしら。着用が簡素なもので転倒しても痛くないなら、練習も怖さが減ると思うの」

「成程、一理ありますね。しかし素材からとなると開発自体に時間が掛かりますが?」

「魔術絡繰り愛好家の皆様が「新王のお子等の為に城中の床を敷物で覆う予算」案に比べたらまだマシだと思うのですが? 一応草案として絵にしてきました。こんな感じでどうでしょう」


 個人的にイメージは空手用の手足に付けるプロテクター。あとヘッドギアは確実にあってほしい。小さな子は筋力の割にバランスが取りにくい体系だから、結構転びやすいと思うの。


 とはいえ見た目は正直不格好としか言えない代物だからねぇ。貴族様方には受けは悪いでしょうから、止む無く「お子様用デザインの一案」として例の着ぐるみパジャマを出してみたら。


「ほう。これは?」

「えっと、五歳児以下のお子様向けのデザインの草案です。可愛らしく強調したうちの子たちをモデルにしてみました。いかがです?」

「何故五歳児以下限定なんだ?」


 ゼプスさん、目が怖くなってますぅ。


「デフォルメしてありますから、それ以上の大きさだと手足の長さから不格好になっちゃうんですよ。だからといって手足に合わせてボディを大きくすれば、ダボダボで動きずらくなるし不格好だし。そもそもチョコチョコ動き回る小さな子だからこそ可愛いんですよ。これ」

「むう、ぅ」


 基本コンセプトは「もぞもぞする可愛さを堪能する」。大人の目線を釘付けにすることで、子供たちから目を離させない効果もあると思うの。それって子供達からしたら「みてみて~」って言わなくても見てくれる訳だから、絶対嬉しいと思うのよ。


「そもそもこれは小さな子に怪我して欲しくないから作るんですもの。魔術絡繰り愛好家の人たちも将来生まれるであろう王のお子様の為に安全に過ごせるための道具を作るって趣旨から始まっているんですから当然かと思うんですけど?」

「では、この「きぐるみぱじゃま」なる衣装はいかなる時に使うものなのだ」

「そんなの着たい時に着ればいいんです。部屋着の一種だと思って下さい」


 思いっきり胸を張って言いました。ええ。


 デフォルメしたルムックちゃんの着ぐるみパジャマは、ゼプスさんの琴線に何かをかすめたらしく、防護機能なしのゼプスさんsizeのサンプル品を黄色と薄茶色の二色で作ることをその場で約束させられました。掛かった費用は全てゼプスさん持ちだそうでいいそうです。


 私、裁縫はあんまし得意じゃないんだけど。いいのかなぁ。


 因みにゼプスさんは現在42歳独身。魔獣マニア過ぎて現実の女性にあまり興味はなさそうです。当人も生涯独身でも構わないが、老後は是非とも魔獣たちと余生を送りたいと豪語する御仁。セス君パパさんのお付きの方々情報によれば、老後の終の棲家の候補地はタングステン村が上がっているそう。うわぁぁぁぁぁぁぁ、勘弁してぇ。


「タングステン村は各国の王族方にも覚えがいいのですよ。披露宴での一品とエピソードが印象深かったようで、機会があれば行ってみたいと言われてますもの」

「セス君ママさん、それドコ情報ですか?」

「カーバイト国の王妃様のサロンでもっぱらの噂ですわ」


 おーひさま、最近チーズせんべいの依頼が多いのはそのせいですか? 来季の橇大会は観戦希望者と参加者増大確実って事ですか? うわぁぁぁぁぁぁ、大会マスコット本気で辞退したい~!

現在書けているのは此処まで。


もう少し時間掛かりそうです。


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