七話目 田舎の夏、都会の夏⑥
諸事情にて更新が遅れてすみません。
もこもこの羊毛の海からおはようございます。暑い~。
結果から言うと「ウトウト」は出来ました。なんだろう。こう、しっくりしないっていうか「これ違う」感が仕事したっていうか、浅い眠りっていうか、枕が変わったら寝らんなくなりました~って感じ?
添い寝は有効だとわかったけど満足しなかったので、改めて次の作戦を考えようと思います。ルムックちゃん達と寝るときはこんなのなかったのにね。
いつもの時間になったので、愛しの家庭菜園に出かけて日課をこなします。水撒きと雑草取りは勿論、葉っぱや茎を見て元気の度合いを確認。根っこがしっかりしている株は大概が元気なんだけど、隠れて悪さをする輩がいるのよ。
私の天敵。そう、葉っぱに隠れる青虫たち。虫嫌いの私にとって、虫食いの葉っぱは赤信号。だからかなり慎重に確認、もし虫食いされていた場合は専用の小壺と箸を用意して、必死に索敵。発見次第駆除。これが精神的に一番大変!
箸越しとはいえあの「むにゅぅ」って感触がいやぁぁっ!
掴んだ瞬間に腕から背中にかけて走る怖気!
更に突然掴まれた青虫が身を捩るあの動き!!
箸先とはいえそれを掴んでいる恐怖!!!
もう投げ出したいのをこらえて小瓶に押し込むまでの時間のなんと長いこと!!!!
更に壺越しとは言え、彼らが入った代物からじわじわと這いずるかのような怖気が伝わる気がして、正直持つのはホント嫌なの。うっうっ。
なので作業完了後はお湯を沸かして壺に静かに注いでそのまま一日放置。翌日におトイレにて中身を廃棄後に、洗粉を使って洗浄して天日干し乾燥。私にとっては何よりも精神的重労働。中身の再利用? 私、ぜーったいしません。
本来なら毎日でもしなきゃいけないんだけど、流石に無理。なので、センセーに頼んで探してもらった虫よけのハーブから蒸留した忌避剤を定期的に散布しております。食べても問題ないって聞いてるからいいけどね~。香りもふんわりで優しいのよ。
さ、頑張った後は美味しいご飯で気分転換しましょう!
消費量がめっきり落ちた我が家の食糧庫は300%の充実ぶり。これは保存食を試作するいい機会かもしれないわ。水分量の多い瓜系は難しいけど、それに合うソース作りは可能よね。お味噌とチーズでディップとか、やれそうね~ってちょぉ-っとだけ欲を出して頑張りました。
そんな訳で本日のブランチは、
生野菜スティックと味噌マヨネディップソース
薄切りミニュウ肉の冷しゃぶポン酢あえ
ごまをまぶしたモチモチ甘さ控えめドーナッツ
千切り野菜と細切りチーズをレタスで巻いたサラダ
出汁醤油にエルルーの果汁と皮を少量、うまみの強い貰い物のナッツ油を合わせて出来たドレッシングを添えてみました~。
飲み物に梅ジュースと麦茶まで用意。
全部試作だから少なめにしたつもりだったのに。だったのに、いつもの癖で大量に作っちゃう自分が居ました。無意識に大量生産しているって、こわい。
救いは生野菜スティック以外は全部一口サイズで作ったので、お茶請け代わりになんとかなりそうってことくらい。一回で運ぶには無理な量なので、数回往復すれば何とかなりそう。
折角だし村の皆でいただいちゃえ~って、運搬用に作った大笊に料理を載せ、順次重ねる事て運べるよう支度を済ませて、表に出れば。うや?
「おや、差し入れですか?」
「あらあら、また随分作ったわねぇ~」
「マミちゃんにセンセー?」
庭で二人が何故か佇んで。って、そんなところで突っ立ってたら熱射病になるわよう、って声かけたら大笊をセンセーに全部奪われました。
「今来たところだから、大丈夫だよ」
「今日もあ~つ~く~なりそ~よ~」
「んぎゃ、せめて水分補給と休息して!」
慌てて家に引っ込んで、冷やした麦茶を二人に突きつける。塩分補給にお漬物と生野菜スティックと味噌マヨネディップソースもセット。
「あらあら~、おいし~」
「んもう、熱中症になったらどうするのよぅ」
「このくらいならまだ大丈夫ですよ」
「マミちゃん、ローブ姿で汗かいてるんだから説得力ないわよぅ」
マミちゃん、普段は村の人と変わんない格好なのに、今日は魔法使いの定番衣装の長衣、しかも夏用の上物生地で作ったおニューを着てるの。こんな山の中に来るのに何でこんな格好してんのかしら。
「流石に今日は正装でないと流石に不味い理由があるんですよ」
「うや? なになに。イベント?」
冷たい水に浸した手ぬぐいを手荒に絞って渡せば、気持ち良さそうに顔や首筋を拭っているのよ。センセーも表情が緩んでるし。
「先ずはちび竜ちゃん、ちょっとお泊まりの支度してらっしゃい」
「何で?」
「ちび竜ちゃんの不調を聞きつけたお客様が麓で待機してるから、ちょっと行って、お泊まりしてらっしゃい」
「お客様?」
*******
そう、お客様でした。ええ、村にとっては観光客という名のお客様。馴染みがあろうともお客様、カーバイト国第二王子がご侍従プレタ君。そして何故かセス君パパさんにお付きの方々まで来てました。何事でしょうかねぇ。
「あや~、珍しい顔ぶれですねぇ。避暑ですか?」
「いや、ちび竜どのの体調不良を耳にされた新王から頼まれて様子を見に来た。不眠症と夏バテだと聞いているが、身体はどうだ?」
「昨日は昼寝したので多少はマシですよ~、てか何で知ってるんです?」
「王妃が母君の定期連絡で知った途端にこちらまで連絡が来てな。いま動けるのが儂だけだった故にこうなった。あとちび竜どのの料理が食いたいと新王夫婦が嘆いておってのぅ」
「俺は王子達の命で、同行して詳細の報告を求められたからだ。あと王妃様からチーズせんべいの発注書を預かっている」
「安定のチーズせんべい好きですね王妃様。気のせいか発注数が前回よりも多くなっていません?」
「サロンで結構評判なんだと聞いてる。甘味と合わせて食される方々がいらっしゃるんだそうだ」
「あれだけの量を召し上がられていらっしゃるのに、あのナイスバディに崩れ無しってどんだけですか。寧ろ周囲の方々がふくよかになってらっしゃったりしてませんよね?」
「否定はしない」
取り敢えず注文書は村営会社に回しておきますね、ご飯の件は麵類のレシピをご用意しましょうかね。
「ところで皆様は「普通の火吹き竜の健康状態」を知っているんですか?」
私の持ち込んだ差し入れブランチをつまみながら聞いてみたら、
「知らん」と、キッパリ。
「というか、ちび竜どのが火吹き竜とは思えんのだ。見た目こそ火吹き竜の幼竜だが、言動や思考は年不相応。そもそもこうして人間社会に適応できる竜は稀なのだ。況してや調理や畑仕事をこなすという時点で竜の姿をした人と思った方が納得する」
あや、パパさんハッキリ言うわ~。そうなんだけどね。
「元々人だった、そこへ何らかの形で今の姿と考えた方が自然だ。人として問診診察は俺でも出来るが、あくまでも人の場合でしかない」
プレタ君、キッパリ言って頂くとかえってありがたいわ~。
「気休め程度にしかならないだろうがどうする」
二つ返事でお願いしちゃった私。そして頂いた結果は、予想通りの寝不足と夏バテによる体調不良。そして私の食事を含めた生活から鑑みて、薬剤による一時的な睡眠よりも、体を動かして得られる疲労による睡眠の方が心身的に良いだろうって診断でした。
「まぁ、幼児向けの安全な睡眠薬剤が高価ってのもあるけど、需要があまりないせいで流通が殆どないのが現状なんだ。だから日中に出来るだけ遊ばせたり、昼寝をわざと減らして調整させる手法を取る。あとは体温調整と寝床の湿度と気温を調整するのも有効だが、俺はその辺までは詳しくはない」
大人なら寝酒とか薬を勧めるんだがな。なんて言わない辺り配慮はして下さる様子なので、有難くアドバイスは頂きます。
「環境を変える意味でも、ちび竜ちゃんはちょっと王都にいってらっしゃい」
「うや?」
「村にいると悶々として寝れなくなるんだから、お泊まりセット持って数日ハルト国の王様の処にお泊まりしてらっしゃい!」
「数日はダメ~」
「何で!」
「私の家庭菜園が枯れちゃうわ! せぇ~っかく色々植えてるのに」
「それならのぞみにミーナを乗せて向かわせるから問題ないわ。収穫と虫取り、雑草抜きに水撒きでいいのよね」
うや~、いつのまに羊乗り(そんな)技能を取得してたのよ。
確かに山羊は僅かな足場さえあれば、切り立った断崖ですら登れるバランス感覚の持ち主。更にベルガコムは山の魔獣とも云われる位の魔獣で、恐るべき脚力の持ち主。
ルムックちゃん達でも来られる場所だもんね、のぞみ達にできない筈はないんだよね。
「うや~、観察日記と収穫したお野菜の消費もお願いします。戻ってきたらちゃんと確認するからね」
「はいよ、何か気をつけなきゃいけないものはあるかい?」
「作業小屋の中は立ち入り禁止。粘土の仕込み中だから触っちゃダメよ。あとは今朝方虫取りしたから中身を明日、捨てなきゃかしら。裏庭のシパターギの収穫もあるんだけどセンセー、どうしよう?」
「ん~、裏庭ね~。やっとくわ~」
母屋のお野菜も消費してもらえればありがたいので、思いつくままアレコレお願いしたら、結構ありました。(←汗たらり) 一部のお野菜は王宮料理人の皆様にご挨拶代わりの手土産として、見栄えの良いものを選んで持ち込みます。ええ、こういうのは気持ちですもの。ど田舎の新鮮お野菜だけど、きっと受け取ってくれるはず。多分。
マミちゃんの視線がちょ~っとだけ痛く感じますが、ここは敢えてスルー。ええ、やりたい事なんて誰だって溜めてるでしょうに。
「よくもまあ、あれだけぽんぽん出てくるもんだと感心しますよ」
「誰だってあれくらいは溜めてると思うわ。あれでもほんの一部だもの」
私の野望を含めればあんなもんじゃなくてよ。
日本の食材を含めた家庭の味を再現するなら、調味料は絶対に欠かせないわ。お酒に味醂、お酢もあればなおグッド。マヨネーズとお好み焼きのソース、醤油に味噌。ポン酢まではそろったんだもの。トマトケチャップとウスターソースがあれば、味のバリエーションはかなり広がる筈よ。あと絶対欲しいのはコンソメ。顆粒タイプでも固形タイプでもあれば、手軽に美味しい料理が出来るもの。鶏がらスープもあると嬉しいわね。お砂糖も他に無いか探してみなきゃよね。
こうなるとお米はなるだけ早く見つける必要があるわよね、お好み焼きとお味噌汁だけじゃちょーっとだけ物足りないのよ。焼きおにぎりの香ばしさがホントに恋しい。
王宮で頂いたお米はパエリアにした以外はそっくりそのまま私の家にごっそりあるので、米粉にしてもっちもちの団子とか揚げドーナッツとかにしたこともあります。温度と湿度管理さえ出来るなら、お米は長期保存可能な食材だもの。非常時の食材としてはありがたいけど、糠を取るのが面倒くさいのよね。この辺も考えなきゃね~。
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思ったよりも大荷物になったんだけど、皆様嫌な顔せずに手伝って下さってホントに頭だ下がります。ハルト国の王城に着くなり真っ先に連れて行かれたのは、恐れ多くも王室御用達のお医者さま達の前。一応ここでも簡単な問診と現在までの症状の経過、体調を一通り聞かれて、簡単な触診までされて出た結果は、プレタ君と同じ寝不足と夏バテによる体調不良でした。うや。
暫く環境を変えて様子見みましょうとのこと。なるだけ丁寧にお礼を言って退出してから、顔なじみとなった王宮料理人さん達に会いに。え、セス君達に挨拶が先? お仕事忙しいのでお夕飯の時にご挨拶すればいいとセス君パパさんから許可もらってます。
お昼前なので忙しいとは思ったんだけど、予想外に皆様のんびりしてます。さすがに暑いので朝方にお昼の用意までしてあるんですって。なのでほぼ配膳だけで済むらしいの。
ごあいさつ代わりのお野菜を差し出して暫くこちらにご厄介になる旨を伝えたら、何時でも厨房に入っていいの許可いただいちゃった。やっほーい! ナクタの実はこっちじゃあんまり流通無かったみたいで、冷やしてお夕飯に添えて出してくれるって。
私のお野菜を渡した時の皆様の顔にちょーっとだけ引っかかったので聞いてみたの。そしたら王妃様の食事量が最近落ちているなんてお悩みを頂いたもんだから、私の夏の定番料理をサッサと作ってみました~。冷やしサラダうどんはお野菜と茹でたお肉を載せたのでボリューム感もあるし、男性でも満足のいく一杯になってます。どや!
一応料理人さん達に試食頂いて、許可も頂いております。冷たいおうどんに驚かれたけど、食べやすさと彩り、素材の品数が良かったみたい。何より器一つで済むのでお手軽感が目を引いたみたいよ。
私は朝ご飯が遅かったので味見程度で辞退。そしたら角切りの果物と寒天の入った品をを勧められちゃった。さっぱりした柑橘系のジュースに一口サイズの果物と寒天がゴロゴロ入ってて見た目にも可愛い一品でした。
予想外に長居しちゃったので、一声かけて退出。調理場を出た途端に手のひらサイズのバッタとヱンカウント。条件反射ともいえる私の反応に驚いたバッタはあろうことか私の顔面に向かって来ました。私、そのままひっくり返って気絶。
王宮に響き渡るおばちゃんの奇声は緊急警報並みの衝撃と緊張を齎し、その原因と理由に頭を抱えた模様です。私が虫嫌いなのは結構言ってるつもりだったんだけどなぁ。




