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我が家が一番!  作者: 津村ん家の婆ァ
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七話目 田舎の夏、都会の夏③



 あの痛恨の一撃ともいえる衝撃のおねだりから一夜が明けて、私は台所で傷心を抱えながらせっせと玉子焼きを製作中。


 二人は旅に持って行くものなんて特にないそうなので、状態維持の機能が付いた私の背負い鞄にこれでもかと二人の好きなほんのり甘めの厚焼卵と鰹節を使ったふりかけを詰め込む為に現在フル稼働で製作中。他にもお煮しめとか唐揚げとかせっせと折詰箱に詰込み中。立派な五段おせちになっちゃったけど、崩れにくいようにって一段に付き一品だから問題ないわ。普通に私一人で食べたら一ヶ月はかかるぐらいあるから暫くは持つ筈。


 マミちゃんはあの後、策を行使する為そのまま魔術門を通って王都に出かけたまま戻ってません。ルムックちゃん達は朝ご飯を食べて、魔獣達のところに出かけています。旅に出るなら一声かけていきなさいと言ってあるから、無断で行くことはないと思うけど。うや~、やっぱりさ~み~し~い~‼


あのきらっきらした笑顔で転げるように走り回る姿とか、

おなかすいた~と駆けよってご飯を強請る姿とか、

玉子焼きをそらもう夢中で頬張るあの顔とか、

起き抜けの寝惚け半分の顔も、

呼びかけたら答えるあの顔も、

なによりあの耳に入るだけで私の注意を引き付けるあの声が、

私の日常をどんだけ彩っていたのかホント思い知らされるわ。


 柔らかい温もりが我が家に来てから、我が家は二人の暖かさに満ちていたの。幼い存在に私が癒されていたんだ~って今更だけど気が付いたわ。以前の生活に戻るのは無理よ、二人が居ないと思うだけで、我が家はどことなくがらんとした冷え込みが漂っている気がするもの。いきなり子離れって厳しくない?


 これ、寂しいってよりも怖いって気配にも似た、そんな記憶が引っ張られる感覚がするの。知らない何かがやって来る、それ自体が嫌な感じと怖さを引き連れてくるのよ。


 気が付いたら二人の気配を無意識に探しているって気が付いて、ハッとする自分に気が付いて、何やってんのよ私~ってなるんじゃないかしら。


 子育ては可愛いからって可愛がるだけじゃダメなのもわかってます。子供たちの成長を喜べないなんておばちゃんダメダメね。よその親御さん方の苦悩が今ならよく分かるわ。


 昔読んだ小説に【相手と同じ立場に立った時、初めてその気持ちが理解できる】って聞くけど、確かに分かるわ~。そしてこれを想像だけで「わかる」なんて、決して言っちゃいけないわ。

「分かったような気持ち」と、「分かった」は同じじゃない。

似たような気持ちはきっとあるかもしれないけど、ぽっかりとしたこのわかんない感覚はとっても「怖い」「恐い」「強い」感情がひっそりと付きまとってくる。


今はまだ「わかんない」感覚だけど、これがハッキリする頃はきっと「寂しい」「淋しい」「悲しい」「哀しい」が私を押しつぶしかけているんじゃないかしら。


「今からこんなんじゃ、おばちゃんダメダメになるの確実じゃない。やーねー、はぁ。子離れ出来ないおばちゃんなんてウザがられちゃうわ」


 いま一人で良かったわ。こんなの皆に聞かれたら要らぬ心配かけちゃうわ。やだやだ。




       *******




 マミちゃんの策はお昼ご飯の真っ最中に村にやって来ました。正確には策を行使出来る御仁を連れたマミちゃんが、村の広場に私とルムックちゃん達を呼び出したんです。めっずらしー。


 魔術門を通って連れられてやってきたのは王都バルト支部の冒険者協会の方々だそうで、バルトの支部長をされている、見た目にはオールバックスーツ眼鏡が似合いそうな年齢不詳なバゼス=トーマさんと、先日お会いした冒険者協会所属のメッシュさんに似た容貌の(眼鏡少年、いえ青年ね。)オーマス=ブランドさんという冒険者協会の副長補佐さん。もしかしてメッシュさんの弟?


「いえ、従兄弟(いとこ)になります。同い年ですが」

「うや、失礼しました。メッシュさんには春ごろに無茶な依頼だったにも拘らず、とてもお世話になったので」

「そうでしたか。依頼はいかがでしたか?」

「ええ。面倒臭い打ち合わせから当日の同行までキッチリと最後まで立ち会って頂き、とても感謝しております。お陰で村人達にとっても良い記憶になりました」

「そう言っていただけると我々も嬉しい限りです。春ごろというと、アト村のですか?」

「ええ、ちび竜ちゃんの「子供達のクロムンブを狩りたいという我儘を叶えたい一心」で企画書を持ち込んで、現地の方々と冒険者協会と商業組合の皆様を巻き込んで、初夏に行われたアレです。親バカここに極まれりでしょうか」

「あの後進の育成企画ですか。あれはそういう経緯だった訳ですか。確かに協会としても後進の育成は課題になっておりましたので、こちらも正直助かったという所です」

「ということは、講習会は開催されたのですか?」

「ええ。皆様の討伐時の映像を宣伝材料にして、期間限定での講習を呼び掛けたところ、先日全ての予定枠が埋まりました」

「おや、それはすごいですね」

「ええ。会場となっているアト村の方々にもご迷惑をお掛けしていますから、問題なく予定通りに終えられる依頼は我々にとっても有り難いです」


 後進の育成って有望な新人さんを育てるって意味合いだよね。けど、冒険者協会の感覚では何も考えず冒険者になった人向けの「冒険者の常識」講習会が主な目的だったみたい。


 コース内容は半日座学、実習込みの四泊五日コースで戦闘以外の指導をメインにされるそうな。野営の火の扱いから始末、材料の採取の仕方や見分け方、夕飯のメニューの捌き方から安全な始末の仕方まで。てか、村じゃ当たり前の事ばかりで逆に「へ?」ってなったわ。血抜きしないで料理するってあなた、野生の肉食獣ですか? 薬草を使った簡単な怪我の治療方法に感心されたって、じゃあ今まで怪我の手当てはどうしてたの。


「なんとも、頭の痛くなる話ですね」

「ええ。講習会で教えた知識のほとんどは、冒険者なら誰もが知っていて当たり前の事ばかりです。火の扱いと食材の下処理は特に気を付け、近隣への影響は最小にすべし。旅をする者ならば当たり前の事ばかりなのですが、それすらこんな有様だったと、逆に知れて良かったと思うことにしました。次からの新規加入者の登録後の義務化して講習させるよう現在提案されてます」


 序に情報の精査や確認も必ずしてくれるよう指導してもらえると嬉しいわ。間違った情報を元にまた襲撃されたら敵わないもの。


 私たちの討伐に付き合っていただいた冒険者の方々は、あのまま指導員として現地に留まっているそうで、アト村の皆様と友好的な関係を築いているそうな。他にも三組程のパーティーが指導員として現地入りしているそうで、彼等からもあの「クロムンブ狩り」は驚きの声が上がるそうだ。


「ふつう、調教士(テイマー)無しで魔獣と共闘出来るなんて有り得ないんですよ。ちび竜ちゃん」

「うちの子達とのぞみ達って村人扱いじゃないの?」 

「先日のクロムンブ狩りまではそうだったんですがね。そもそも魔獣と意思疎通できるって段階で既に常識外れなんですよ。さらに一般的な偏見と常識が無いので有り得ない状態が日常化しているわけです。いいですか、ここまでが前提です」


 育成系の依頼自体が珍しいって言ってたけど、冒険者だって最初から冒険者じゃないんだから「誰かに教えを乞う依頼」ってしないのかしら。武器の扱いとか、野宿の仕方とか、おトイレの始末の仕方とか。


「今日、こちらにご足労頂いたのは先日の討伐に参加した魔獣についてご相談した件についてです」

「ほう、なんでしょう?」

「村にいる魔獣達に冒険者登録って出来ますか?」


―――はいぃぃ、まさか策ってコレ!?


「確か、ルムックとベルガコムでしたか。ええ、可能です」


―――ぅええぇ、本気ですかぁぁ?


「ではお願い致します。序に村のベルガコム達にもできます?」

「クロムンブ狩りの時に居なかった個体ですよね、戦闘能力はほぼ互角という」

「ええ。村の羊達は全頭言語は理解していますし、本人確認もすぐ出来ますよ。言語はこちらの翻訳機を皆さんが使われれば確認化できるかと」

「本人確認は必要ですので翻訳機をお借りします。魔獣の冒険者登録は無かった訳ではありませんし」

「あったんだ」

「ええ。当支部ではありませんが、協会でも珍しい事例として有名な話です。幸い協会の会員の口頭報告とはいえ、戦闘能力の評価も頂いております。先日のクロムンブ狩りではタングステン村の方には大変に貢献頂いてますし、私たちも一度ご挨拶させていただきたかったので」


 マミちゃんの策とは、ルムック達を冒険者登録するという力技。この前のクロムンブ狩りで、ルムックちゃん達とこだまの戦闘能力技能は冒険者さん達のお墨付きを頂いていたそうです。推薦人も態々立候補までしてくれたそうです。こんなのあり?


「何度も言いますが前例が無い話ではないので問題ありません。但し階級(クラス)無し扱いで、更新には一年毎に手続きが必要です。手続きがない場合は登録解除になります。特定の数の依頼を一年以内に達成すると、次回更新時に手数料の免除などの特典が付きます」

「うやー、魔獣でも冒険者ってなれるんだ」

「ええ、かなり珍しい話ですが20年ほど前に組合に在籍証明があります。かなり強い魔獣だったようですが、詳しくは調べないと分かりません」

「そうだ、ちび竜ちゃんも登録しますか?」

「血が苦手な私に出来る事なんてありませんから。ルムックちゃん達が人に危害を加えられないならそれでいいんです」


 おばちゃんに出来るのはお家で待ってる事よ、ううぅぅぅ。


「依頼は多岐に渡りますので、戦闘以外のものもありますよ?」

「只のおばちゃんに何言ってんですか、オーマスさん。これでも村では家庭菜園とか薬草畑の手入れとか羊たちの井戸端会議参加とかご飯の研究とか、やることあるんで村から離れるのは難しいんですよぉ、無理ですぅ」

「そうですか、気が向いたら何時でもお越しくださいませ」


 気のせいか、メガネがキラーんと光ってる気が。もしかして私、値踏みされてます? 


「そういえば初心者講習募集の際に、宣伝素材材料としてタングステン村の方々の討伐のものを使わせていただいたんでしたね。特に映像、かなり好評なんですよ」

「そうでしたか」


 ルムックちゃん達の参加した討伐でお借りした魔石やらの資材の代金代わりに、映像の使用を許可する契約になっております。魔道具(カメラ)の性能がいいのか、羊たちのこだわりの編集映像がいいのか分かりませんが、海面を華麗に駆け回る彼らの雄姿は大変見栄えが宜しいようで。そんな彼らを必死に追い掛け、クロムンブに至近距離で襲われそうになった所とか、雷ちゃんの雷に助けてもらった所とか、ジュールちゃんの頭上から撮影させて頂いた「棍棒で殴打されるクロムンブ」とか、あれこれ撮影した覚えあるわ~。


 必ず画面に誰かしら入るように心掛けていたのが良かったのか、はたまたビギナーズラックだったのかはわかんないけど。


未娘(ラクレコム)達にそのまま伝えて下されば、(こだわりのポイントとかカメラワークの)コツとか教えてもらえますよ。彼女たちは(マスコミ顔負けの情報収集能力を持つ)こだわりやですから」


 ええ、途轍もないお喋り好きな彼女らは、褒められるのも大好きですとも。況してや、お気に入り彼女によく似たこの青年の言葉はご機嫌になるだろう事は確実よ。




 ただ、なんでルムックちゃん達に冒険者登録が必要なの?

今回はみじかくなってしまったので、次回更新をそのぶん頑張ります。


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