七話目 田舎の夏、都会の夏②
お昼ご飯の後、ポー豆狩り隊は食後の休息までしっかりとった後にもう一度、三姉妹ベルガコムを伴って森へと向かいました。今年の収穫量の目安になるよう株の数を確認する為って言ってたけど、本音はもう少し枝豆食べたいじゃないかしら。
私はおばちゃん達に混じって本日収穫のポー豆のさやを塩分食にする作業のお手伝い中。
「ポー豆狩りが始まるって事は、そろそろ市場にも新物のポー豆が出回るって事でしょ。ポー豆の買付もそろそろ本格化するって事よね。お城から産地ごとに分けて豆を購入するって話、どうなったの?」
「今のところ、ポー豆以外のお豆に関してはそのままね。ちび竜ちゃんだから豆によっては調理方法とか違ってたりするんでしょ、お菓子に向くものとか煮物に向くものとか。麦みたいに焙煎して飲み物にするものとかもあるかもよ。商業協会からも新商品の登録に一枚噛ませて~って来てるそうだし」
「へ~、豆ってすごいのね~」
「すごいのね~って、センセーがそれ言ったらダメだと思う~」
豆って括りだけど、種子系の食材は主食から調味料から賄えるすんばらしい食材だと思うの。なにせ私の野望達成に各種種子系食材は欠かせませんからね~、味噌にお醤油、お豆腐に油揚げ、おうどんにお饅頭、餡子とここまで再現できたんですもの。白銀のほの甘もっちりお米、ぜぇぇぇったい見つけるんだから!
「ちびちゃん。さや、煮上がったよ」
「はーい」
「午前中は悲鳴の大安売りだったねぇ、大丈夫かい?」
「ありがとー、予想外に虫が多かったからねー、蓋付きの避難所を作って正解」
「へえ、虫避け持ってても駄目だったんだ?」
「特定の害虫には効いたかもしれないけど、私が無理。虫全般くまなく無理。お陰で叫びすぎてクタクタよ~」
「ちびちゃん、家庭菜園で虫を見かけたらどうするの?」
「最近はう~ん、家庭菜園では見かけないのよね、居る気配はあるんだけど。多分ルムックちゃん達が追っ払ってくれていると思うの」
「あら、いいわね。頼もしい」
「そうなの~。も、何処を見てもありきたりな誉め言葉しか出て来ない自分の語録の貧困さが恨めしい位イイ子なの~」
「出たわ。ちびちゃんの惚気」
「いい子って子供扱いなの?」
「将来二人がいい男になるのは確実よ。だからこそ子供のうちにしっかりと愛情を受け取って欲しいの。子供の時期なんてあっという間に過ぎちゃうもの、二度とおんなじ時間なんて来ないのよ。大人の時間なんてこれから沢山味わえるけど、子供の時間は今だけなの。しっかり愛情を受け取って堪能してもらう予定よ。二人がいつか素敵なお嫁さんと出会って可愛い子供達が出来た時に、受けた愛情を存分に与えられるようにね。んで、偶には顔見せてくれたら嬉しいじゃない?」
「いや、多分そっくりそのままちび竜ちゃんに返されるんじゃないかしら」
「ええ。お嫁さんが出来ても、そのまんま引き込んで囲い込まれる姿しか浮かばないわ」
擂粉木で煮汁ごと擂り潰し、塩を加えて裏漉し。終わったら再び火に掛けて水分を飛ばしながらねりねり。ねっとりしてきたら火からおろして、適当に成形して乾燥。
「ちょ、風ちゃんと雷ちゃんがそんなことするわけないでしょ。思春期の多感な少年なんだから、変な事言わないでください」
「(ちょ、完全に囲われているのに気が付いていないって、どれだけ鈍感なの)」
「(あの臆病と言われるルムックがちび竜ちゃん守るために人前に姿を現してる意味、全然分かってないわ。どうやったらこんだけ鈍くなるのよ)」
「(村人はちび竜ちゃんを傷つけないって知ってるからいいけどねぇ、それ以外の他所もんがいる時がどれだけピリピリしてるか分かってないのねぇ)」
乾燥網の上に乗せられた出来立ての塩分食。見た目は棒状に丸めてあるので、出涸らし茶葉色のしなしなくたくたな「じゃ○り○」。このまま乾燥させると太さは半分位のボソッとした硬い食感の代物になります。羊達には塩味珍味扱いです。旨いってわけじゃなくて、手軽な塩分補給食って感じだそうで、これはこれでアリみたいな感じ? って感想を頂いてます。
食材を無駄にしなくていいのは私も嬉しいので、進んでお手伝いに参加している次第です。今年はポー豆の需要が多いからきっと沢山出来るわ~。
「しかしこの棒状の形態を見てると口寂しくなってくるわね」
「え、これそんなに美味しかったっけ?」
「ちび竜ちゃん、お腹空いてる?」
「え、ああ。違う違う。手軽に食べやすそうな形だから、何かに応用できるな~って思ったのよ」
「さすが村一番の食い意地。食べ物に関しての着目点が違うわ」
「食材の形が違うだけで何か変わるの?」
「確実に食感が変わるでしょ、歯応えとか大事よ。拘る人はホントに煩いしね」
「味とかじゃなくて?」
「味は同じでも食感の違いって、料理の価値そのものを左右するのよ。ま、そこまで拘って文句言うのは王様とか貴族とかだとは思うけどさ」
「流石、食材に関してはこだわりを持つだけはあるわ~」
「それ、誉め言葉?」
「え、事実でしょ。今までの食材へのこだわりをここまで拗らせた村人は居ないわよ。流石ちび竜ちゃんは着目点が違うわ~」
村一番のって事実なの? ただの野望に燃えるちょーっとだけ欲深いおばちゃんなんだけど。揚げたてのカリカリサクサクなフライドポテトを思い出したので、食べたくなっただけだもの。夏は暑いから、どうしても味の濃い食事や酸味や辛味の効いた味付けになりがち。ルムックちゃん達も食べられるように程度は押さえているけど、偶にはガッツリしたファーストフード的なものだって食べたいのよぅ。
しゅわしゅわの飲み物がこれ程恋しい季節もないと思うの。グラスに氷を浮かべた炭酸水にバニラアイスを浮かべたらもう最高。あ、ポテトとセットにして食べたいわ。軽食として売れそうだけど、夏場に揚げ物作りって滅茶苦茶大変よね。手軽にスナック菓子で我慢かしらねぇ。
そうするとうるち米は無いから片栗粉で出来るお菓子、えびせんべいなんてどうかしら。饂飩でかりんとうもいいけど、お砂糖がシュナか花蜜の二択。どっちもべたつく性質だから、衣のように纏わせるっていうのが難しいの。だからといって飴に出来るようなお砂糖は精製にかかる手間の為、お値段高め。私も試したけど、燃料費がホント掛かるわ、目が離せないわで量産はあきらめたもの。
そうなると材料のお値段的にはとっても庶民的な菓子は、私の野望に入れるべき分野になるのかしら。えびせんべいの、ぱりんとしたあの軽い食感は受けると思うの。
片栗粉も卵も村でも入手可能な一般食品だし、エビの殻もお塩もアト村経由で入手可能。私が覚えている作り方も難しくはないし、常温保存可能で味もいい。湿気らないように工夫すればお土産にもいいし、甘さも少なめ、材料さえ揃えば出来るじゃない。よし、グレイちゃんに焼型の相談してみよー♪
エビの代わりに豆のさやを混ぜ込んで作れば、羊達も食べられるかしら。うん、ちょっと試してみようかしら。
「塩っけと相性が良いって、やっぱり黒布草かしら」
「ちび竜ちゃん、何かまた作る気?」
「これって、もっとサクサクって食感にしたら美味しくなると思わない?」
「家畜用の塩分食までこだわるって、どんだけ食い意地張ってんのよ」
「夏の塩分摂取食として働く人達に向けた一品になれば、需要はあると思うの」
「あいすじゃダメなの?」
「うん。甘いのが苦手な人もいるから。それにアイスは常温保存可能出来ないし、食べ過ぎればお腹下すもの。安全で常温保存可能で美味しい一品が目標だから、アイスは嗜好品でいいと思うの」
「保存かぁ」
ちなみにこの塩分食、乾燥させたらボロボロ崩れるし太さも半減。味はともかくボソッとした食感はいただけません。だからといってバターやら小麦粉やら加えれば羊達には不評だし、やたら手間とか材料費が掛かるのも宜しくない。アイスも甘いのが苦手な人もいるから、果物を使ったシャーベットにすればいけるかもしれないけど、塩分食にはなんとも言えないのよね。それに食べ過ぎてお腹壊したら意味ないし。
私みたいな一般人ならともかく、グレイちゃんみたいな鍛冶職人さんとか、常に動き回っているようなお仕事の人なら塩分食は必要だけど、大体が対策は既にあるからね~。需要はわかんないけど。う~ん。
「しょっぱいお菓子の需要ってあるの?」
「甘じょっぱいのは季節問わず絶対需要あるわ~。だからうましお味ってあれば、甘いのが苦手な人も行けると思うの!」
「甘くないお菓子かぁ、う~ん」
そもそも甘味が結構高価なのはお砂糖自体が高いから。村では果物以外の甘味を見かけた事はありません。だから「甘い=高価」って常識が当たり前にあるの。シュナだって割と最近入ってくるようになったんだって聞いたわ。砂糖と比べてベト付く分使い勝手は悪いといえるケド。
「ちびちゃん、あんまり美味しいモノを作り過ぎない方がいいわよ」
「うや?」
「新作求めて、欲深い人が村まで押し寄せるから」
「そんなこと言ったって、出来るときには出来るんだもの。ただ村にまで押し寄せるのは勘弁してほしいわねぇ」
「そうね。賑わうのはありがたいけど、物騒になるのは嫌だもの。ちょっと今年は制限かけた方がいいかもねぇ」
ワイフちゃん出来るの? 入村者制限するってことは村の宿屋経営が赤字になりかねないのよ? 宿屋がつぶれちゃったら困らない?
「実はね」
ここから先はワイフちゃんから聞いた話なんだけどね。商業組合を通してタングステン村と専属契約をって商会が春先から結構いたらしいの。薬草に乳製品。珍しい料理にカーバイト国王夫婦のお気に入りって付属価値に、新年早々の大きなイベントが開催された事で、国内外からも注目が集まっているらしいわ。
幸い、昨年取れた「食文化継承保護区」と「特定薬草保護区」の認定があるので、専属契約を結ぶには相当苦労するって。
そんな中で昨年立ち上げたばかりの村営商会『タングステン村・主婦の会』は、商業組合でも異質の扱いをされているとか。村内の資材入出荷は一手に担っているし、私のレシピ管理も行っている。このレシピが現在注目の品で、簡単アウトドア料理からおうち料理までそこそこ売れているらしいの。ええ、そこそこ。
なので外貨は稼げているから宿屋は大丈夫よと言われても、微妙に安心はできない気がするのよね。
で、ここからがちょっと問題。その村に世にも珍しい魔獣が居ついているって、巷では噂になっているんだとか。
その魔獣は風ちゃんと雷ちゃんとこだまの事なんだって。アト村のクロムンブ狩りの映像が結構話題になっていて、そこに移り込んだルムックとベルガコムに目を付けたおバカさん方が居るそうなの。ほほ~ぅ、私の家族に目を付けたって?
「ええ。あくまでまだ噂の段階なんだけどね、村に出入りする人が多くなれば変な思惑を持った人も増えるかもしれないでしょ?」
「ええ、私の家族を攫おうなんて考える輩には酷い目に逢って懲りてもらわないといけないわよね。ええ。何処の何方なんでしょうねぇ」
「だから年内は入村にはある程度の規約を盛り込もうかって話をしてるの。ただ基準になるものはどうしようかって村長と話し合っているところよ」
基準ですと? そんなの我が村の優秀な未娘に決めさせれば細かいところまで原案出してくれるわ。序に処罰内容も盛り込んじゃえ。のぞみ達に監修してもらえばほぼほぼ問題なんて無くなるわ!
「私の家族を害する輩の罰則に、去年雷ちゃんに付けられた仕掛けを付けて三日間放置の上、子羊によるプレス行進の刑を申し付けた上で、しでかした内容によって罰金付けてもらうのどうかしら。言い訳云々はその後にしてもらうわ。それでも反省の兆しがないなら毎食全部、特性カラミナ(トウガラシ)料理をきっちり完食付きの軟禁生活してもらおうかしら」
「ソレ、只の嫌がらせでしょ?」
「辛いもの好きの変態にはご馳走だよね」
「軟禁ってどこにするつもりなんだか」
たとえ「例え話」だって、私の家族を拉致するような輩には容赦なんてしませんとも。
『チビ竜ちゃ~ん』
「うや? どしたの、のぞみ」
『風と雷がお迎えきてるよ~』
わざわざのぞみが知らせに来たの。二人でお迎えって、なんだか珍しいわね。
「あら、どうかしたの?」
「風ちゃんと雷ちゃんがお迎えに来てるんですって。ちょっと行ってきていいかしら」
「あらまぁ、子供のお迎えじゃしょうがないわよ。いってらっしゃい」
「何かあったら連絡しなよ~」
「ありがと~、行ってきまーす」
後ろから「どっちがお迎えされてんだろうね~」なんて声も聞こえるけど、気にしませ~ん。可愛い家族のお迎えよ、行かなきゃ私の萌え心が激怒するわ。
それにしてもわざわざ呼びつけるなんて、何かあったのかしら?
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『うえぇぇぇえええええっ!?』
いったいどうしてそうなるの!? 私何か悪い事した? だからこんな目に合うの? 何で可愛い二人が家を出ちゃうの~~?
『チビ竜ちゃ~ん、しっかりして~』
『りゅー、こら話聞けって』
『りゅーちゃん、聞いて~』
まさかこれが子育てで聞くあの、反抗期? 反抗期だから二人して家出ちゃうの? そんな私、いきなり一人って耐えられるかしら? 無理、落ち込んでいいよね、てか、引きこもって、お家で泣き暮らしてもおかしくないよね、私のやる気スイッチ、今切れたわ。
ああ、毛布とぬいぐるみ抱えて作業小屋に引きこもるわ~。粘土こねこねしていじけるんだ―!
『のぞみ、誰か呼んでくるね~』
『りゅー、こらりゅーってば!』
『りゅーちゃ~ん』
何が悪かったのかしら。きっと、今朝のだし巻き卵が美味しくなかったんだわ。それともふりかけがまずかったのかしら? だから二人共お家出るなんて言い出したのよ、きっと。はっ! それとも私、二人が嫌がるような行動をしたのかしら。一緒に寝るのはずっとしてたけど、もう思春期の男の子なんだから、そろそろ個室を持たせた方がいいのかしらって思っていたんだけど、あのお家の増改築は難しいから二人の意見を聞いてから、フライス工房に発注しようと思っていたのよ。スタイリッシュで小洒落た部屋なんて、私のセンスじゃ無理だもの。でもいろんな人や商会とか聞く伝手は色々出来たと思うから、試してみてもいいと思うの。狭くても愛着の持てるお部屋になれば、喜ぶかしらって思ってたのに。なのに~、カッコかわいい二人が揃って出ていくなんて、おばちゃんさみしくて凹む! やだもう涙がでてきちゃったわ~、せめて立派に成獣するまでは一緒に居れるって思ってたのに~。
『色々考えこんでんな~、そろそろ話聞けって』
『ご飯はおいしいよ? 泣かないでよ~』
「やだ、風ちゃんと雷ちゃんがお家出るって幻聴が聞こえたのよ。二人がいない生活なんて考えられない~、家出するなら私もついていく~」
『そこまで懐いてくれんのはありがたいが、意味ないから』
「私、役立たずだから?」
『役に立ってるよ、りゅーちゃん大好きだもん』
「でもお家出るって、置いてくって言った~」
『収穫祭までには戻るって。村近辺だと顔見知りばかりだから、色々手加減されるんだよ』
『うん、岩場の皆にも世間を見た方がいいって言われたの』
「ちょ、タルークちゃん達。何てことを言うのー!」
『でも俺ら世間知らずは本当だろ?』
「甘い! 私なんて世間どころじゃなく世の中も碌に知らないわ。私の場合、マミちゃんが一緒に居てくれた上に、保護獣認定が世間に通っていたから出来たのよ」
なのにそれすらもない珍しい魔獣は密猟者ばかりでなく、質の悪い冒険者や商人達にだって狙われちゃうわ。こんなに可愛くて強くて優しい良い子なんですもの。しかも力の使い方も冒険者協会からも認められちゃう程の腕前で、実力だけなら中級冒険者を負かすだろうって言われてんのよ。初夏に行った海でご一緒した冒険者さん達も認めたんだから。
「こんな可愛くて綺麗なルムックを見かけてごらんなさい。下心剥き出しで手を出す密猟者はいても、良心的に手を貸す人なんてほんの少ししかいないわ。変態さんに懐かれたって、誰も助けてなんてくれないのよ。変態さんならまだましかもしれない、変質者とか収集家とか愛好家とかおぞましい人達に捕まったらただじゃ済まないのよ。人だってこんなに大変なのに、魔獣の変態なんていたらどうすんの!」
『魔獣の変態なんて居るの?』
「いたら私がぶっ飛ばす! 世の変態は総じて乙女の敵よ!」
『りゅーじゃ無理だ、てか乙女って誰だ』
「女の心は常に乙女なのよ。風ちゃんと雷ちゃんをかどわかす変態は私が全力で焼き尽く―す! うふ、うふふ、うふふふ。私の大事な家族を毒牙に掛けようとする変態はどーこー…、うや?」
辺りを見回そうとしたら、いきなり視界が真っ暗に。
「見事にキレてますねぇ、落ち着きなさいって」
『あ、マミさん来た』
「ルムック達、ちび竜ちゃんに何か言いました? ここまでキレてるのは久しいんですが」
『うん、ちょっと旅してくるって言ったの』
『近隣の魔獣たちに世間を見て来いって言われて、じゃあ旅に出てみるって言ったんだ。そしたらこうなった』
あや、マミちゃんの上着だわコレ。最近マミちゃんは翻訳魔道具の開発をしていてね、試作品を付けているから二人や羊の話を聞き取れるのよ。
「旅に出るんですか?」
『そう。俺と雷と魔獣たちとで。村の収穫祭までには戻るって話したらこうなった』
「成程。ちび竜ちゃんはルムック達にベタぼれに懐いてますからねぇ、期限とかどこまでとかは決めてるんですか?」
『一応国内近辺を。村の収穫都祭までには戻るつもり』
『雪が降ったらお散歩大変だもん』
「そうですか。お互いに譲れる範囲を決めて約束するのはいいと思いますよ。ちび竜ちゃんが大好きな家族は約束を違えるような性格じゃないんでしょう?」
「その通り! 紳士で男前の二人はお約束は守ります! でもいきなりはさーびーしーいー!」
「おばちゃんが子供に甘えてどうするんです。なんなら拗ねる暇が無い位お仕事回しましょうか。夏は食材確保に畑仕事、やることは山のようにありますから?」
「マミちゃん無駄に優秀な秘書さんになるのやめて~、今年は粘土も仕込むから地図も作らないとなのに~」
「冬の大会用なら手配しますよ?」
『りゅーちゃん、だめ?』
雷ちゃん、その可愛い顔でおねだりは反則! 私がソレに勝てたためしは御座いません。そしてマミちゃん、私が納得いく粘土は石臼で二度引きした特性ブレンドを一月掛けて仕込むヤツだから。手配するなら耐火煉瓦をお願いしたいわ~。
「収穫祭までに帰ってこなかったら、私お家に引きこもって泣いちゃうんだから。絶対ぜーったい。帰って来なかったら、春まで引きこもっちゃうんだからねー!」
「それはダメです。ちび竜ちゃんのご飯をねだる王族方に国軍の方々から却下されますよ。冬の橇大会のマスコットキャラクターで、優勝賞品の授与係はどうするんです」
「セス君とレン君が代理ですればいいと思う!」
「優勝賞品そのものの製作だってありますよ。引きこもっている間のクロムンブ節の取引もアト村からの問い合わせもハルト国の調理師たちからの質問にも冒険者協会へ出している例の植物の捜索状況も一切投げ出すんですか?」
「うう」
「ついでに言うなら村の羊たちの愚痴を私は聴く気はありませんから。あと羊王夫婦は間違いなくちょっかい出してきますよ。ばんようでしたっけ、あれの話が全く進んでいませんからね。第一降雪が始まったら会場作りで忙しいんです。忘れているかもしれませんがフロストリーフの収穫はちび竜ちゃんにしか出来ないんですからね、あれの需要は年々増加してますから引きこもっている暇なんてありませんよ。麦を使った菓子も作るんでしょ?」
「うぁ~ん。長閑な田舎生活は何処に行ったのよぅ~」
「自分で忙しくしたんですから、自業自得です。ルムック達、ちび竜ちゃんを可哀想とか思うなら、期限は守って下さい。時間なんてお仕事してたらあっという間に過ぎますよ、寂しさなんて感じる暇さえ無い位お仕事待ってますよ~。さあ、企画書から始めましょうか?」
マミちゃんの言葉の端々に本気と揶揄いがちらついているわ~、ルムックちゃん達が旅に出ちゃうのはどうやら決まっちゃったみたい。くすん。
『りゅーちゃん、ちゃんと帰るから待っててね』
「らいちゃーん。」
『考えなしにしてる訳じゃねぇから。ちゃんと、終わらして帰ってくるから』
「うう、知らない人に懐いちゃダメなんだからね~。お水とご飯は気を付けるんだよ、帰ってきたらいっぱいご飯作って太らせてやるんだからね~」
『ご飯は旨いの頼むな、りゅーも変なもん食うなよ?』
「野望の為、食材探しはやむなしだもの。だいじょーぶ、ちょびっとかじってヤバかったら口の中、漱ぐから」
『もし寝込んでたら、らい、泣いちゃうよ~』
「う」
『よし、寝込んでたら俺も泣く』
「んぎゃ、反則!」
滅多に泣かないの、この二人は。てかこの村の人も滅多に泣かないんだけど。カッコ可愛い二人が甘えてきてくれるだけで私の理性、白旗振って自爆するわ。二人して泣かれた日にゃ、リアルに吐血して瀕死かもしんない。
「まあ、密猟者は厄介ですからね。現在砂漠地帯が水不足気味のせいで部族紛争が激化していると聞きましたし、その弊害で人も魔獣達もいろんな意味で被害を被っているかもしれません。ちび竜ちゃんの心の平穏の為に策を掛けておくのも悪くはないでしょう」
さく? マミちゃん何か思いついたの?
ほんとお待たせしてスミマセン。




