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我が家が一番!  作者: 津村ん家の婆ァ
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六話目 夏と海と子⑧

本日連続投稿の三話目になります。


※2018年10月21日 金額表示の間違いを見つけたので訂正しました。

※『』内は魔獣のセリフ。〖〗内は翻訳道具を付けた魔獣のセリフです。




「クロムンブ討伐、しゅーりょー!!」


 最後に引き揚げた地引き網の中身を合わせた本日の成果。

クロムンブ、104本。

ヘビみたいなおっきな生き物、2匹。

おっきな海老、14尾。

知らないお魚、多数。


 因みに蛇みたいのは未達が仕留めたものです。クロムンブも53匹は討伐組が仕留めたもの。その日一番の大物は全長2.2Mもある一匹。風ちゃんが風海から叩き上げ、雷ちゃんの雷纏ったダイレクトアタックでKOしました。


 沢山の魚が入った地引網を引き揚げた浜は興奮気味の人々で埋まってたので、私はカメラを外しに建屋へと降り立ったんです。よっこいしょ。


「うや、疲れた~」

「お疲れ様でした」


 メッシュさんが、おばちゃん達とお茶しながら出迎えてくれました。カメラを外して手渡して、お茶を貰って一息。カメラは絡繰り愛好会に返却してくれるそうです。


「凄かったわね~」

「あんなに沢山のクロムンブが浜に上がっているの、あたしゃ初めて見たよ」

「私もです。そもそもそんなに流通している訳じゃありませんからね」

「そうなの? あんなにおいしいのに」

「いくらおいしくても売りに持って行くのに時間が掛かっちゃぁ、美味しくなくなっちまうよ。美味しいまんま運べる魔道具もえらい値段するし、ただ持ってるだけでも手間もかかるって話じゃないか。多少はモールスさんとこの若夫婦が日持ちする燻製にしてくれるけど、あの量は一度には無理だろうしねぇ~」


 事前に冒険者協会と商業協会にクロムンブ討伐の通達がなされていたのは正にこの為。前回の国軍の討伐で半数は仕留められると思っていたのだけど、予想外にクロムンブが素早い事と討伐側の事前準備が整わず、大半を逃してしまうという失態があって、今回の討伐にアト村の皆様はあまり期待はされていなかったのね。


 ところが今回は予想を上回る成果が出たもんだから、おばちゃん達もビックリ仰天だったと思うわ。一番驚いたのはクロムンブだと思うけど、この辺は私達の予想範囲内。勿論この後のクロムンブの買い手も手配も既に決まっているの。ふふふのふ。


「カーバイト国の商業協会がクロムンブ買取を希望してるから大丈夫よ。幸い今回から魔導門っていう時間短縮出来る道があるから、明日の朝市に並べることだって可能なのよ。そして私のクロムンブ料理のレシピも希望購入者にもれなく配布予定というおまけ付き。カーバイト国でそこそこ人気ある唐揚げを作った私のレシピ、知ってる人なら余計買ってくれるわ」


 これ、タングステン村・主婦の会公認の販売方法なの。どのくらいのお金が動くかは知らないけど、春の結婚式で上がってきた経済流通の活性化を促す為にも使われるからって、鰹節をダシにしてレシピ公開しちゃったの。


 ただね、クロムンブのたたきとか刺身って、お醤油とかポン酢とか必要じゃない? これも合わせて販売する為の一大イベントにしているのが商業協会の狙いかしら。


「あらそうなの、じゃあ村で食べつくせなんて無茶はないのね~」

「そんなことあるの?」

「滅多にはないけど、食べるもんがない時もあるからねぇ」

「うや~、今度あったらタングステン村にも連絡ちょうだい。お野菜とチーズ抱えてお邪魔するわよ。その代わり試作のお料理の味見して欲しいわ」


 鰹節の為ならごはん作って貢ぐわよ~。先ずは採れたてのクロムンブで刺身と叩きの準備よね。薬味の準備と火おこししなきゃだわ。ああ、ホントに白いご飯ないかしらね~。


 初討伐を終えた子供達が嬉しそうに戻ってくるまで、建屋の調理場は戦場となりましたよ。ええ。アト村の歴戦主夫の皆様方に合計2本のクロムンブを下ろしてもらい、隅々まで使えるところを全部使って、精鋭主婦の皆様方とご協力の下、欲望丸出しな私の家庭料理全開で本日の宴料理を仕上げてまいりましょう。私も割烹着付けていざ、戦闘開始です!


 え、茶色い田舎飯の間違い? いいんです、クロムンブ討伐成功のお祝いだもの。美味しければいいんですとも。さ~、定番のお出汁から始めないと!


「あ、黒布草くださーい。なければ(海まで)取りに行きます!」

「あるから大丈夫、お願いだから落ち着いて」

「寒干大根と寒干豆腐、これで全部よ。油揚げはどうするの」

「酒の肴にもなる食事が目標。全部開いてピザにするからチーズよろしく」

「空いてる竃ないわよ~」

「賽の目に切ったクロムンブはここでいいかい」

「うや、ありがと。生姜醤油に付け込んで竜田揚げにするからね」

「ああ、ちょっとこっちにも頂戴。お湯沸いたわよ」


 捌いてもらったクロムンブの中骨付きのの赤身を丁寧にしっかりこそげ落として、幾ばくかの切り身を足してから包丁で細かくなるまで叩きまくる。お祝いだもの、全力で叩きまくるわよぅ。

うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃ、うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃ、うりゃうりゃうりゃ、うりゃうりゃ、うりゃ、うりゃ、うりゃ。ぜいぜいぜいぜいぜい。


「ちびちゃん、ハンバーグでしょ? 後ははせんせーがやるわね」

「…うや」


 体力のなさはホントに何とかしなきゃよね。センセー、手際よく二刀流でリズミカルに叩き出したわ。アーケードの太鼓の○人とかで、めっちゃ上級レベルの難曲とかでも笑顔で高得点出すんじゃないかしら。 私、リズム感なんてございません。凡人以下ですもの。


 お酒は夕方に商業協会が村まで届けてくれる手配だし、お子様用にスイーツも作っておこうかしら。豆乳とミルクとお砂糖と卵、果物もあるからマミちゃんに手伝ってもらお~っと。目の前で作れば楽しんでもらえるわよね。


 お魚料理だけじゃなくてお野菜やお肉もバランス良く取らないと、体に悪いわ。主食はう~ん、なんにしましょ?


「ちび竜ちゃん、油あったまったわよ」

「うや~、今行きま~す」


 取り敢えず竜田揚げに集中~。




       *******



 私を含めたおばちゃん達がご飯作りにの戦場に挑んでいる間、今回の討伐の総評とか、買取手続きとか、色々やっていたそうです。


・クロムンブ30本とヘビみたいなおっきな生き物2匹を冒険者協会が買取。

・商業協会がクロムンブ70本を条件付きでの買取。(モールス家で燻製加工する為、状態維持の魔法具付きの貸倉庫に預かる。)

・おっきなエビ14尾と知らないお魚多数も商業協会が纏めて買取。

・今回の討伐の映像は冒険者協会が全て買取。映像の複写は村に無料で配給。(届くまで10日程掛かるそう)

・体験討伐の総評は「初心者離れの戦闘能力。但し過信は禁物」とのこと。

・今回の討伐に使われた地形を活かした仕掛け、加工された結界の使い方にかなりの興味を持った人がいたそう。また、威力はなくとも脅し用の道具の使い方にも。

・このような催物が定期的に開かれないかと聞きに来た人もいた。

・今作戦に参加していた魔獣達と羊達は誰の使役獣かと聞きに来ていた人がいた。(とっても失礼ね!)

・視察に来ていた人達からは「とても興味深く参考になった」と言われた。


 とまあ、あまり悪い話は無かった。誰の使役獣って話はちょーっと引っかかるけど。私を含めて誰にも使役なんてされていないわよ。今回は自己判断による自由参加よ、人権なくたってちゃんとした意思を持った個人としてそこだけは物申すからね~。


 地引き網の編み目が大き目だったので、掛かったお魚はそこそこ大きなものばかり。地元の漁師さんもこれなら売り物になると太鼓判を押してもらえたものばかりだったらしいわ。商業協会もそこそこいい値が付くだろうとホクホクしてたから、明日の市場はきっとにぎやかになるわね~。


 おっきな海老は伊勢海老みたいに結構ごっつい海老で、鎧海老というらしいわ。大概海の底にいて、海中に餌を仕込んだ仕掛け網を置いて採るのが殆ど。今回、驚いたクロムンブ達に追われて地引き網の中に入ったんだろうって言ってたけど、これもそんなに数が取れるような代物じゃないんですって。市場価格は変動時価の高級食材って言われてもあんまりピンとこなかったけど、ここでの買値が一尾銀貨大5枚って聞いて私が吃驚よ。一尾、約5万円よ。


「でも一番驚くのは、まだあるのよ」


 おばちゃんのにやんとしたこの顔は、なんとなく未娘(マスコミ)に似てるわ。


「一番高値だったのは、未達が狩ってきたバッファムホルスよ。小型だけどあれも立派な魔物だからね」

「ばっふぁむほるす?」

「黒くて長ーいうねうねしてるやつよ」

「おっきな蛇の事かしら」

「そうそう。あれ、とっても高い薬の材料になるのよ。あれでも市場買取価格は一匹金貨小5枚って知ってる?」

「うぇぇええぇぇっ?!」

 

 一匹50万円。どんだけ希少価値あんのよ!?


 強くはないけど探すのが凄く難しいので、大体乾燥させた干物でしか出回らないから、生きてるのは初めて見たけどね~。っておばちゃん言ってたけど、何その価格は~!!


「潮干狩りに家族で来て、うふふあははで終わる筈が、埋蔵金みつけて大騒ぎしてるって感じかしら」

〖りゅーちゃん、おなかすいたー〗

〖りゅー、クロムンブ食べたい!〗


 あや。私の魔法の呪文が聞こえたわ~。たった一言だけど、気持ちがスパッと戻ってこれる秘密の魔法よ。ホントに落ち着くわ~。


〖チビ、うちらの主食はどこや?〗

〖私もお腹空いたわ〗

「うや、夕方新鮮な青草リースが届いたから直ぐに用意するわ。風ちゃん、雷ちゃんの分はちゃあんと用意してるから大丈夫よ。今日はみんなすっごく頑張ったもんね。ご飯もうんと頑張ったからね~」


 ルムックちゃん達はスペシャルお子様ランチ特盛バージョン。クロムンブの輪切りステーキ3枚に、ふわふわオムレツ鰹節入り、振り掛けは勿論、竜田揚げと根菜の煮物を添えてあります。クロムンブはシンプルに表面を塩水に付けてからバターで焼いてあるだけなんだけど、美味しいのよ。ニンニクとかは今回敢えて使わないのと使った二種類を盛りつけてあるから、味の違いを楽しんでほしいわ。


 木箱三つ分の新鮮な青草リースも私ひとりじゃとても運べないから、センセー達が運ぶのを手伝ってくれました。オーレ爺ちゃんの心尽くしが詰まってます。うや。


「今日だけは特別よ、たぁーんと食べてゆっくり休んだら、たあっぷり眠るのよ」

〖あれ? おのこしはゆるしまへんでじゃないの?〗

〖残してもいいのかよ?〗

「今日はうーんとうーんと頑張ったから、食べれないかもしれないからね。食べれるだけにしとけば残してもいいわよ」

〖そなの?〗

〖いつもよりは頑張ったけど、そんなにきつくないぞ?〗

〖せやな、精神的にはちと疲れたわ〗


 うんうん、あれだけの人間に注目されての戦闘だもの。ルムックちゃん達ものぞみも気疲れしてる筈よ。未娘達は、別な意味でテンションが高いわね~。


「村への土産話、いいネタ出来たかしら?」

〖ええ、ええ。クロムンブだけでも市場価値がこれからどの位つくのかとっても楽しみだわ〗

〖そうね、今回の討伐ってある意味画期的なんでしょ? じゃあその瞬間に立ち会えたって事よね〗

〖ちびちゃん、今回の映像はいつ村に届くのかしら〗

〖ああ、出来れば無編集なのが欲しいんだけど、やっぱり編集されちゃうのかしら〗

〖あたしがあの黒いのを引っ張り出した時のおっちゃん達の顔、写ってるかしら〗

〖楽しそうやな〗

〖〖〖〖とっても!〗〗〗〗


 オーレ爺ちゃん。暫く羊達は異様に元気だと思うよ、映像が届いたら直ぐに連絡させるね。


 今夜のご飯は、クロムンブのお刺身にタタキ、すき身のあらびきハンバーグ、竜田揚げ、ブチ貝の酒蒸し、根菜の煮物、持ってきた常備菜の漬物、蒸し野菜のサラダ、薄焼きナンもどきと油揚げピザでございます。ふわふわオムレツはルムックちゃんだけの特別メニューだから、こっちにはないのよ。代わりにマヨネーズを作って蒸し野菜のサラダに使っているから問題ないわ。


 そして、デザートは助っ人冒険者の皆様にお手伝い頂きましての「シャーベットの実演調理」になりました。事前に練習として豆乳アイスを製作させるのに協力済。魔術で半氷りにした果物をすりおろして空気を入れながらもっかい半氷りさせて器に盛り、練習の豆乳アイスを添えて出来上がり。


 空気を含んだ事でふんわり感のある氷は、食べやすくて皆様に高評価頂きました。羊乳はチーズ用に回されるので今回は豆乳を使ったけど、牛乳も探せばあるんじゃないかしらね。


 本日のお夕食でクロムンブ丸々一本と半身、食べつくしました。国軍の皆様も居たから賑やかな宴会になっちゃったけど、これはこれで楽しいからいいかな。


「ちびちゃん、これどこで売ってんの?」

「醤油はタングステン村の自家製品よ。一瓶で銅貨大6枚位かな」

「あらー、結構すんのね」

「クロムンブの燻製と似たような製造過程と時間がかかるから、手間賃もやっぱり必要なの」


 タングステン村の自家製品の味噌は茹でて粗挽きにしたポー豆ととある薬草の花粉を混ぜて作るの。この薬草、水のある場所にひっそりと生えている、赤みの混じった見た目は草じゃなくて苔。そこからにょこって感じで花だけが伸びて生成りの花をつけるの。通称、味噌の花。


 因みに醤油は醤油の実と言われる木の実と木の葉っぱを少量の塩と一緒に擂り潰してそのまま熟成。それを絞って使うの。葉と実の対比を変えたり、熟成の条件や具合でうまみが変わったりするの。私はなるだけ前世のお醤油に近いものをと日夜ブレンド中。勿論お塩にもちょっとしたこだわりを持ってます。キリッ!


「今は家庭用で作っているだけだから、販売用ってなるとまだまだなのよ。だからお試し位の量しか用意できないのよ」

「あらまぁ、じゃあ販売が決まったら教えとくれよ」

「ええ。その時はよろしくね」


 余談だけど、タングステン村で作るブレンド醤油はかなりうまみが多いので、他所で売られている醤油とは別物です。ただしょっぱいだけじゃないのよ。


「タングステン村ってどんだけ人外魔境な存在なんだろ」

「ああ、ただの村人であんだけの身体能力だろ。んでベルガコムにルムック、火吹き竜まで居つくなんてありえないぜ」

「それにこの飯。あの火吹き竜がほぼ作ったんだろ、火吹き竜って店でもやってんの?」

「店はやってないけど、春にあった新しい王様の結婚式で立会人と披露宴の料理を一品出したぞ」

「「「うえぇぇぇ!?」」」

「そうそう、んで王妃様の実家の王都じゃ「タングステン村料理」って結構人気あんのよ」

「「「は?」」」

「王室御用達のお菓子もあんの。これまた人気商品なんだぜ」

「人外魔境ってよりは陸の孤島ってのが正しいよ」

「そうそう、なんせ秋の収穫と納税査収がほぼ同時に行われたら、春まで雪に覆われる秘境だもの。今年の年初めに雪を使った大会が開かれて、結構にぎわったんだぜ」

「それもちび竜ちゃんの発案だしな」

「!?」


 うや~、結構言われてるわね。ま、ホントの事だから否定はしないわ。





※簡単に金額価値を表記すると

銅貨小一枚=\10-

銅貨大一枚=\100-

銀貨小一枚=\1,000-

銀貨大一枚=\10,000-

金貨小一枚=\100,000-

金貨中一枚=\1,000,000-

金貨大一枚=\10,000,000-

庶民が日常生活で金貨を使う事がほぼ無いので、分かり易く大と小だけにしたようです。金貨中には中に穴が開いていて、金貨大と同じ大きさ。但し厚みが違うので余程でない限り間違えないようです。

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