五話目 冬と人が去る、春がくる。②
おひさしぶりです、更新遅くなってすみません。
大して話も進みませんが、作者にとっては前進。ちび竜にとってはどうなんでしょうか?
※2018年10月20日 一部変更。
最終日の午後の部、最後のツアー客はなんと村に出店していた商人さんたちでした。
一般人は前日までで、最初から最終日は関係者各位で楽しむつもりだったんですって。因みに王族の皆様が午前中に来たのはおねだりという力業でねじ込まれたからだとの事。
連日監視員及び運営に携わっていた国軍の皆様も、救護室という雪の檻に詰めて突発のケガ人に対応いただいた皆様も、交代しながら橇遊びに興じております。村人も出店を食べ物オンリーに絞って、店番を交代しながら混じって橇遊びに参加中。
今日が最後だから言っちゃうけどね、私個人的にはもっとこう、親子でほのぼの~としたふれあい広場的な橇遊びとか、カップルに橇にタンデムでキャッキャウフフ的な楽しみ方でもしてもらえばいいかなーって思っていたのよ。
いざ蓋を開ければ酒粕に砂糖をぶち込んだ甘酒の如き私の妄想は居合切りされる藁束でした。例えていくなら、辛口ドライなとっても冷えた日本産のラガーを煽る高揚した週末のサラリーマンの群れですよ。何処の居酒屋なんですか、大人なのに目も当てられないノリをかます集団がそこに居ましたよ。
紳士淑女と云われる大人たちはその被っていた多数の猫を脱ぎ捨て、眼の色変えて暴走する大人が続出。豪快に粉雪を巻き散らかしながらドリフトもどきを決めようが、感動して雄たけびやら奇声を上げようが、やってることは橇遊び。雪上を集団で爆走する様は正に猪突猛進、これじゃあ橇遊びじゃなくてレーシングカート(モーター無し)よぉ。ヘルメットとプロテクターの装着を義務付けなきゃ危ないわ。
例えビジュアル的にカッコ良くても、映像素材的に見栄えが素晴らしくとも、いい年した中年親父が幼い少年のようにキラキラした笑顔だろうとも、傍から見たなら雪上の猪。
遊びですとも、ええ。ただ斜面を滑り降りる遊びですとも。いい年こいたおっさんおばさんが、年甲斐もなく奇声あげて雪遊び。防具もつけずに爆走街道まっしぐら。安全面で意見しなきゃだわね。
紳士淑女の仮面を何処に投げ捨てたんでしょうね~、村のお子ちゃまたちが悪い影響を受けないといいんだけど。村の辛口評論家は「祭りの憂さ晴らし」と評価、雷ちゃんも「おじちゃんたち、ちいちゃな子みたいに楽しすぎて聞こえてないんだね~」と一言。風ちゃんと私も同意です。
商人のご家族の中にはご年配の方々や小さなお子様たちもいらっしゃいます。現在大会用コースは暴走する雪上の猪達の支配下、交通安全を鑑みて参加は大変危険と判断し、傾斜の緩やかな場所に初心者用の橇を用意して雰囲気だけでも体感していただきました。下についたら本日限定羊達による運搬リフトで上まで橇ごと運んでもらえるサービス付き。んで上についたら次の人と交代。羊たちは専用に並行して作られた滑り台で下までする~っと下降してゆくの。ゆーっくりした感じで一回にかかる時間は大体10分前後。
スピードよりも体験を重視したアトラクションは、それなりに気に入ってもらえた様子。但し雪原の冷え込みは半端ないので長時間の滞在は程々に、となりました。
寒い中での長時間の束縛はストレスだと思うの。冷えは万病のもと、羊たちにとっても年配のお客にしても、いいことなんてありません。話の種になる程度の体験でお互い十分よね。
『運動不足解消にちょっと暴走してこようかしら』
『あら、いいわね~』
『ねぇ。さっきの重しを引っ張るやつ付けて競争しない?』
『面白いわね。姉さん方に重し増しで、子供らには多頭引き、私らは二頭引きって感じでどう? で一斉に走って一勝負しない?』
『乗ったー』
未娘たちにはストレスじゃなくて、とっても楽しそうな遊びに変化したようです。いっそ『ばんえい競馬』ならぬ『ばんえい競羊』でもやる? 前世で某農業漫画を読んだ時から一度は見たいと思っていたのよ。実現はしなかったけど。
娘達なら犬橇みたいな二頭引きで一台プラス騎手。のぞみ達みたいに力の強い個体達なら、ハンデとして重しを付けた橇を一頭引きプラス騎手。小山の障害を用意した緩やかな坂道を駆け上る六組の200M障害コース競争なんてどうかしら。ただし、指示や発破かけるのは声のみ。鞭や手綱などは使用禁止にして、羊達の脚に牽引ロープが絡まないように、橇には工夫が必要ね。あ、橇と羊を繋ぐ道具も考案しなきゃ。って、考えすぎね。メモには書き留めて、おいおい気が向いたら提案してみようかしらね。
「せんせー、羊達が運動不足を嘆いて暴走してくるってー」
「あらそうなの?」
「なので近場の人は、羊に近寄らないよう注意喚起をお願いしまーす」
「はーい」
午前中の火種のお仕事は終わってるから、私も遊んでもいいのよ。けど、人間に直せば私の年齢はお子ちゃまなので、コースは走行禁止なの。雪上の滑空は許されても、小さい子が真似しないように敢えての滑走禁止。ちょっとだけ滑りたかった。
なので私の橇は職人さん達の試作見本品として彼等の工房に鎮座しているそうです。乳児サイズの橇の使い道なんてそんなもんですとも。
最終日の踏み固められたコースは大会時と違って部分部分が完全な路面氷結を起こし、カーブの難易度が俄然跳ね上がっているにも関わらずとんでもないタイムを先程からたたき出してます。午前中の王妃様もされておりましたが、橇でドリフト走行して大会優勝タイムを上回るって、皆様どんだけ極めてんですか。ふつうはその時点でスリップしてコースアウトでしょうに。
そんな猛者たちは、来年には我こそが表彰台に乗ってみせようぞと熱く語り合っております。優勝うんぬんよりも表彰される方がそんなに魅力的なんでしょうか。おばちゃんにはわかりません。
ま、次回が開催できる程のお金と資材、運営と会場設営に必要な労働力と技術者の確保が叶えば出来る問題です。ええ。勿論集客や大会に参加していただける選手の招致も忘れちゃいけません。って、期間限定の定期祭典にするつもりはないのよ。今回は姫ちゃんとセス君の結婚記念に開かれたお祭りなんだから。毎年こんな賑やかにされたら、私の趣味の時間が無くなるじゃない。せめて四年に一回の開催で手を打ってよ。
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関係者各位で埋め尽くされた会場は日暮れ前には綺麗に解体され、膨大な雪は圧縮されて川辺を覆う分厚い氷のブロックへと姿を変えました。うん、皆様お疲れ様です。
今回の設営と解体作業を含めた大会運営の一切の資料は、三人の女傑たちの独断で村と二国間でそれぞれ持つことになりました。今後の参考文献として保存されるって言われたので、「発案者名=タングステン村のちび竜ちゃん」って項目の削除をお願いしたら、むちゃくちゃ笑顔でそこにいた全員に「却下」されました。
「じゃあ村の広間に記念の銅像を作って、国の歴史書に名前載せるけどいいよね?」
「それこそ却下よ、発案者名じゃなくて考案=タングステン村でよくない?」
「シンボルマークとマスコットキャラクターの由来があるからね、嘘でもダメだよ」
「目立つのヤなのよ。何がきっかけで変な人に目を付けられる事案は出来るだけ阻止します。私の生活を脅かす事案は全て敵。その為にも発案者名の削除を申請、若しくは閲覧規制を掛け、特定の権限を持たないと閲覧できない資料として開示することを提案します」
大陸的保護獣指定の竜の発案なんて知れ渡ったら、ほかの火吹き竜に迷惑行くかもしれないもの。そのせいで私の同族かもしれない竜に嫌われるなんて事態になったら、泣くわ。ボッチ反対。
取り敢えず私の案は一旦持ち帰り、検討してから答えをくれると確約してくれました。ええ。
人間の民族紛争で火吹き竜という種を絶滅仕掛けた過去がありますからね。ちなみにその紛争自体は、他種族の竜からの報復をはじめ、魔物やら他国の侵略やらで、その戦争は収まったそうですよ。火吹き竜は最弱ですが種族的な差別はせず、面倒見がいい種族なので養い親になるのはよくある話なんだとマミちゃんに聞きました。
当時この話を聞いたときは───火吹き竜はきっとおばちゃん属性なんだと確信。───私、他の火吹き竜とうまくやっていける気はしましたが、タングステン村の味噌と醤油には勝てませんでした。今のところ、他所に定住はしませよ。ご飯って大事な要素ですとも。
話が逸れちゃったけども、次回大会は来季の降雪が始まり次第開催準備及び予選リーグ大会が開かれることがすでに詰められているそうで、今現在の時点で次回大会参加申し込みの問い合わせが既に多数、運営委員会や王宮の方に届いているんですって。
取り敢えず大まかな年代別の男女で部門を設けて、部門ごとに難易度を設定。参加地区大会を設けて上位30名まで最終大会に参加すれば見ごたえある大会になるし、大勢の参加希望者の要望には応えられると考えているそうよ。
私個人的には橇よりもスキーとかスノボへの移行を進めたいけど、安全面での対策が必要だし、必要となる板とかの機具の説明がもうひたすらに面倒なのよね。もういいやって感じ。次回以降は参加賞と入賞者の賞品提供のみってだめかしらね。
「シンボルマークとマスコットキャラクターはこの村限定の開催のみ、使われるから問題ないよ。次回開催は確定だけど」
「そうそう。なにせ大会前の告知で十分に知らなかった人たちが、ツアーに参加してその楽しさを体感したものだから、次回開催を楽しみにしている人達は今回の比じゃないんだよ。来期の参加申し込みの問い合わせが既に満杯状態だからね」
「収穫祭以降の降雪が確認され次第、コース設営の準備を始めないとなりませんね。事前練習だって必要でしょうし、選考大会で参加者の選抜をしなければ、あの寒さの中で退屈な時間を過ごすのはさすがに堪えますからね」
「大会参加者を絞れば、ちび竜さんの参加賞の製作目途がたちますでしょ。年度ごとにデザインを変えていけば収集家は食らいつきますし、何より王族の皆様は喜びますわ」
「王太子由来のイベントですものね。今度はご本人が参加してくるんじゃないですか?」
次回開催は確定ですか。次回もあの寒くて暇な時間が確実ですか。うや~。マスコットキャラクターを家にあるぬいぐるみに代わって欲しいわ~。
「今回のイベントでは反省点と改善点が多数見つかりましたし、次回までにどこまでやれるか力量が問われますね」
「ええ、円滑に進行するための要素も対策も、今回のイベントで随分と思い知らされましたわ。一回きりのイベントならこれで十分でしょうが、次回は国の威信が関わってきますからね。ここタングステン村が最終大会地として開催されるとしても、他の大会の開催地を検討しないとなりませんね」
カーバイト国とハルト国の運営委員をしていた方々の反省会は村の宿屋に着いてからも延々と続いていたわ。私はそろそろ夕飯の支度があるから家に帰るけど、運営委員の方々は王都の宿屋にて反省点と改善点の討論会ですって。
設営に携わった建築技師の方々とか、労働力提供した方とか、橇の製作メンテナンスをして下さった方々は一足先に王都に戻って慰労会という名目で酒盛りだって聞いてるわ。村の自警団の面々も招かれて参加しているけど、私は家族との団欒を大切にしたいと願っているからと丁重~にお断りしてます。ええ。
明日からは静かに趣味に没頭できる静かな環境が、平穏な日々が帰ってきます。
=(イコール)野望達成の為の様々な試作が、し放題ってことです。
そして今回、副賞───私のお手製マグカップ&桜の花びらタイル───の提供のお礼として、ハルト国で取れる海産物を色々頂きました。これ王妃様からじゃなくて、レン君とセス君、姫ちゃんの連名で、お手紙をわざわざ付けてくれたの。中身は乾燥した魚の切り身や干した小魚。色んな海藻やらわざわざ下処理したお魚や貝まで色々。食べ方とかまで書いてくれたのよ。勿論ありがたーく頂戴致しました。
んまー、私が喜ぶものを分かってるわね。しかもタングステン村では入手しにくい海産物詰合せを、お礼として寄越すなんて。しかもよく見たら、あおさとか天草とかヒジキっぽい海藻やらあるし、ニシンっぽいお魚とか、鮭っぽいお魚が。あらら、この貝はまぐりみたい。懐かしい磯の匂いというか海の匂いがするこのお礼は、私に泣きながら奇声を発して踊らせるという効果をもたらしました。狂喜乱舞とは正にこれ。
毎日ではなかったものの、日本人なら食べ慣れた食事は身体が作り方を覚えていました。ちょっとだけ手際は悪かったかもしれませんが、待望の家庭の味が程なくして完成。
だし昆布で作るあおさのお味噌汁。
ひじきの煮つけ。
ニシンの塩焼き。
昆布と小魚の佃煮。
麦ごはんと白菜の漬物を添えていざ実食。
味噌汁一口で、頭の中が満たされます。懐かしさに溢れ出る喜びも、体に満ちてゆく手に届かない郷愁も、久々に味わえる懐かしい味わいが様々な感情をに私の中に響かせてゆきます。去りゆくそれらをわたしはただただ感じるしかありません。ただただ無言で口に運び、咀嚼して飲み込む。なのに感情は次々に湧いてきては私を置いて行くのです。最後の一口までしっかりと食べきり、箸を置いた途端にそれら襲い掛かってきました。
───ビバ・日本の家庭の味! んまい。白米とお漬物を添えたら完璧なのに、ああ悔しい。
私が覚えているのはここまでで、気がついたら翌日の朝でした。うや。
同席していた村の皆様曰く
「一口食べて、静かに黙々と完食。食べた後に大泣きしてそのまま寝てしまった」
とのことです。全然覚えていないんですけどね。
さらに私を驚かせたのが、
「これ、ひと月に一回今後も届けてくれるって。ちび竜ちゃん宛てに」
「特撰海産物詰合せセットがレシピ付きで!?」
「ご希望なら他の食材も寄越してくれるって」
「だれがそんな太っ腹な提案を?」
「ハルト国の副料理長とカーバイト国の王太子からだと。妹夫婦の為にうまいご飯のレシピを代金代わりにくれって」
姫ちゃん、お兄ちゃんは妹思いのいいお兄ちゃんですね。てか、私の嗜好を存じ上げているお兄ちゃん殿下、やるわね。
年越し含めて三か月、改めてひでぇ更新状態ですね。
婆ァ、目がしぱしぱして「えん〇ん」飲み始めました。折り紙も無事に折りました。小さい紙が怖くなりました、指先痛い。めもかすむ、肩もパンパン。
なのに「ねえ、このネットに載ってるくす玉作ってよ」と、折鶴を折った時よりも小さな折り紙が…。
結局ひと月頑張って、HAZUKIのルーペを買ってまで頑張ったのに、漸く出来たくす玉は、幼い息子さんの「へんなの!」の一言評価。なのに撃沈するほど綺麗な出来のくす玉の隣りに並べられてます。ホント辞めてこっぱずかしい婆ァです。




