五話目 冬と人が去る、春がくる。①
※この話は架空の物語です。作中に正しくない表記もございます。間違ってもマネや参考になさらないようお願いいたします。
※2018年10月20日 一部変更。
「ロックベル大陸の最北端国のカーバイト。他国と比べても国土に対しての人口数は大陸一少なく、主な産業は農産物と毛織物。大陸内でも珍しい降雪が見られる避暑地と薬草の保護区域として知られているこの地で今年初めに珍しい大会が行われた。」
ミーナおねえちゃんの朗読が響くここは、タングステン村のパパラッチ達の籠り小屋。橇大会のことを紹介したが記事が『王都バルトの観光案内地図に記載されてる』って知った未娘達が、強請ったからよ。私も一応は読めるんだけど、つっかえるし難しい言い回しは解読不能だからね。もちろん未達も読めないわ。
「降雪に覆われた山肌に意図的に配された雪の障害がある順路を、ただ一人で誰よりも早く駆け抜ける。特筆すべきはその速さ。ゴール近くは吹き抜ける風そのもの。ただ誰よりも早い者が勝つという単純な競争だが、それだけに個人の技量が問われる。そして戦うべき相手に年齢差も体格差も身分さも男女の差すらなく、この大会は開かれた。並走する相手こそいないものの、真っ向から戦う様は会場を熱く盛り上げた。300名近い参加者中、5/8以上が途中で脱落したというからその難しさが伺えるだろう。」
読み手をミーナおねえちゃんお願いして大正解ね。こんな言い回し、私じゃ舌を噛んで転げまわりそう。羊たちは珍しく静かにしてるわ。
「ハルト国に艇と呼ばれる小さな舟を使い複数で競わせる競争がある。白熱すると艇同士の接触して事故に巻き込まれたケガ人が出てしまう事がある。だが、橇は単機の為、事故に巻き込まれる自体は防げる。事故事態も安全対策が取られているためにせいぜい打撲か捻挫といった軽微なものだと大参加者から聞いている。」
艇ってボートレースとかに使われる小さな船のことよね。普通の船は大体、艘。タンカーとかの大型船は隻って数えるのを学校で習ったのよ~って、生前のオネエに語られたわ。元気かしら、ジャスミンちゃん。
「そのコースの難易度を下げて体感出来るイベントが、会場となった現地で期間限定で開催中だ。実際に大会で使われた会場で、あなたも降雪した山肌をまるで空を駆け抜けるかのような速さとスリルを体験できる。」
速度は大会よりもかなり抑えてありますとも。コーナーの積雪が異様にすり減るので、わざと勾配を付けた坂道仕様&圧縮して氷状に仕上げた技術スタッフの渾身のコーナーですとも。速さは押さえてもスリルは倍増の仕様です。安全の為にコースアウトしがちな箇所は網と新雪のクッションが待ち構えてますがな。
「勿論実際に大会で使われた橇を使える特別仕様だ。今春、カーバイト国王女とハルト国皇太子殿下とのご成婚記念として行われたこの大会を、20日の期間限定で貴方も体験してみないか。降雪した山肌をまるで空を駆け抜けるかのような速さとスリルを体験できるのはだ今だけ。興味をひかれた方はカーバイト国王都バルトの観光組合までお問い合わせをお願いします。だって」
この記事を書いた人は人の煽り方を心得てます。これ以外の宣伝材料は羊達も聞いて無いそうだから、この記事だけで村にお客さんを呼んだって事。イベントに参加した人の口コミや噂という強力な広告もあって、200名近い橇体験ツアー参加者が連日のように村の広場から橇大会のあった会場までを埋め尽くすんだから、凄いわよね。
普段は80人足らずのタングステン村だけど、運営に力を貸して下さっている国軍の方達や、商売に来ている方たちによって400名近い人間が村に滞在中。生活区域とは離れているのが今のところ救いかしら。勿論私の家は山の中ですから、立ち入り禁止ですとも。
ツアー客のいる間、子供達や私を含めた魔獣組は用事が無い限りツアーの会場に近づかないよう村長命令でお達しが出てるの。
「人攫いや魔物攫いが混じっていたら大騒ぎになるから。出歩くなら必ず三匹以上で行動!」
気持ちはわかるから、納得して大人しくしてますとも。ミーナおねえちゃんは騒ぐ人ではないので、ルムックちゃん達が信頼してる人間の一人。因みに三姉妹からの信頼はオーレ爺ちゃんに次いで高いわ。落ち着きと有言実行なら村で一番だそうよ。
『だからあんなに村が騒がしいんだね~』
『せめてもの救いは日中だけってところだな。夜中まで騒がれたら一撃ぶっぱなす』
『風。ひかりが良し言うたらぶちかまし』
『こだまちゃん。らいもやりたい』
『ひかりが言うたらな』
『うん、わかったー』
橇大会が終わった後に出された村長と王妃様とハルト国の女王様の最高権力者の女傑連盟宣言で、「監視員と救護員立会いの下、日中に限り滑走を許可」された翌日に入念なメンテナンス作業が行われ、大会に参加できなかった軍人さんたちや、当日都合の付かなかった希望者が橇を体験。そしたらそんな人達から口コミで噂が拡散したもよう。
結果として多くの体験希望者が発生し、一時期王都の観光案内所やら国軍の詰所に押しかけての大騒ぎに。このことをカーバイト国の王太子が対処したんだけど、あの大会に同じく参加したハルト国にも同現象が発生。
まあ、折角のお祝いイベントに悪い印象を持たれるのもよくないと、王都バルトの観光協会に協力を仰いで『期間限定』の王都直通の門を使った入場制限を設けた体験ツアーを設けたの。ミーナおねえちゃんに読んでもらったのはその記事で、申込期間はとっくに締め切ったって話よ。
ツアー内容は一回約3時間完全入れ替え制、それを午前と午後の一日二回行うの。ツアー客が立ち入れるのはコースと直通の門の間のみ。それ以外は村の人達の生活を極力脅かさないようにする目的と、もめ事を含めた危険回避を兼ねて立ち入り禁止。運営に携わる一部の軍人さんは一応許可。村の人も厄介な言いがかりをつけられると後々面倒になることを知ってるから、運営時間は近寄らないよう気を使ってるわ。
この集客に目を付けた商人さんや村営商会『タングステン村・主婦の会』は、ここぞとばかりにお土産だの軽食だのを店として出店し、限定販売の商品が並べられたわ。20日間の期間限定の営業って事もあるけど、口コミとチラシで告知されたイベントは一回200名のツアーはあっという間に予約で埋まったとか。後になって知った人はそりゃもう悔しがって、現在最も話題のとんでもないプレミアムイベントなんですって。
橇遊びに夢中になる立派な貴族様。
いい歳こいたおっさん達が子供のような歓声を上げて橇遊び。
冬用の乗馬服に厚手の上着を着込んで、黄色い悲鳴をあげながら雪原を滑ってゆく恰幅の良いおばさん。
正直子供よりも大人が多いのは計算外だったわ、子供なんて良くて10人いるかいないか。しかも、橇よりも雪景色やたまに紛れ込む羊達を堪能している様子。おそるおそる触っていたり、後をついて回ったりと興味深々な様子。子羊が紛れ込んだりすれば行進状態でついて回るそうよ。
王都よりは標高の高いタングステン村の天候不順はどう対応するのかって思ったら、ハルト国の魔術の絡繰り(からくり)愛好家たちの開発した大きな空間をすっぽり覆う技術を提供されたの。で、不天候の風も雪もシャットアウト出来るからツアーは予定通りに行うんですって。何でも、日程をずらす方が予約客の不平を食らって暴動になりかねないし、タングステン村の薬草自生地としての資源環境を壊したりしたら大陸条約に引っかかるとか言ってたわ。
そうそう。総入れ替えの為のツアー客の撤退が始まると、羊娘達が村中を徘徊して入れ替えを逃れようとする客の洗い出しを掛けるのよ。一回出店者に紛れてごまかそうとしたお客がいてね、こだまに見つかって蹴られかけたことがあったわ。寸前で国軍の人が止めて難を逃れたけど、その人にはくらったお説教よりも、こだまの一撃の方が効いたみたいよ。羊達からの提案で入れ替えの際には、会場に羊達や監視員の国軍の人総出で確認をしてから休息とメンテナンスをとって、次の人を案内するようになったの。
ツアーの注意喚起に「入れ替えの際は速やかに指示に従ってください。指示に従わない場合、身分一切を問わず強制的に退出をさせていただきます。」という一文が付いたのは言うまでもないわね。
「ちびちゃん」
「なーに? ミーナおねーちゃん」
「焼き物、もうしないの?」
「このお祭りが終わったらするわ。何か欲しいの?」
「食堂のテーブルに花を飾る為の入れ物」
「分かった。色はどうする?」
「任せた」
「うや。任された」
今日のツアーが終わるまであと30分ぐらいかしら。商人さんたちもそろそろ今日の営業を終わらす準備に入るのよね。羊達も手慣れたもので、危険ゾーンからまず見回って、徐々に門の方へと移動するの。異常があったら即鳴き声を上げて周囲に知らせるからすぐにわかるわ。
ま、私とルムックちゃんと三姉妹は魔獣扱いされている種なので、危険の合図が無い限りは待機になるの。国軍の皆様もグレイちゃん特製の羊笛を持っているから、私たちにはすぐにわかるのよ。あの音色はグレイちゃんこだわり品で村の自警団が使っているものなの。だから聞き間違う事なんてありえないわ。使われないのが一番なんだけどね。
『もうすぐ時間だよ~』
『行ってくるわ。うふうふうふ』
『さっきの人、面白かったわ~』
『救護詰所のとこに運ばれた人でしょ?』
『違うわ、ほら二番目の山に特攻かけて自爆したおっさんよ』
『ああ。後続の女たちを気にして、良いカッコしようとして自爆したおっちゃんね』
『そうそう。頭から雪山に突っ込んで下半身を雪山の上に突っ立てて間抜けな姿のまま後続の人に笑いを提供したおっちゃんよ』
『救助に来た軍人達に笑われながら助け出されて真っ赤になってそそくさと立ち去ったおっちゃんね』
大きな怪我を負った人が居なくて何よりだけど、ホントあれはひやひやしたのよ。捻挫や擦過傷はあるけど、骨折とか生き埋めとか気を使ってもらってるわ。橇なのでコース形成時に速度の調整をしてもらえるようお願いはしてあったの。
お祝いイベントで死傷者は縁起が良くないわ! 安全第一で楽しめた方がいいに決まってる。って。
お陰様で大会ほどの速度は出ないけど、複数の橇がコースに出て居るから危険度は上がったの。だけど敢えて衝突や怪我の危険を告知、その上で故意に危険行為を行った客は国軍の方々と羊たちに連行されて強制退場頂く決まりを事前告知してあるから、大きな怪我が出なかったもかもしれないわ。
「怪我人いなくてよかったわね。」
「ホント。商売してる側からしても楽しんでもらう方がありがたいもの」
「それ、ワイフちゃんが言ってたの?」
「いいえ、ジュールよ」
ジュールちゃんは売子として石臼の実演販売の担当者。トーンちゃんと組んでうどんの屋台のそばで頑張っているんだって。石臼自体がかなり重いから買うのを躊躇う人も多いんだって。現在予約して、夏頃のお届を希望する人がほとんどらしいわ。
「そうそう、備蓄分で足りないから小麦を仕入れたって話よ。母ちゃんが欲しかったら言ってね、だって」
「うや! それは助かるわ~。仕入れるなら欲しいものもあるし、先にお願いしておこうかしら」
「その方が手間が無さそう、伝えとくわ」
村の広場には一時的商業権を正式に通した人たちが出店出しているものだから、そりゃあもうお祭り騒ぎの大賑わい。村からも王妃様のお気に入りチーズせんべいやクッキー、豆饅頭にから揚げ、お揚げを乗せたうどんやら揚げ芋やらが出店して、結構繫盛している模様。村の物流システムが一時的でも王都と直通できる今だからこそ、村営商会『タングステン村・主婦の会』は着実に売り上げと知名度を上げております。
今回お好み焼きは使えそうなお野菜の不足も相まって見送りました。何よりソースが圧倒的に足りません。なので、鶏肉と小麦、芋に豆にと王都でも比較的価格を安く抑えられる材料を使ったお料理の販売に踏み切ったそうです。お客様も小麦がこんなに美味しくなるものかと驚いているそう。から揚げもやはり本場は違うと帰り際にお土産に買われる方が多いんですって。
「じゃ私。そろそろ家に帰るわ」
「うや、ありがとね」
何かあると困るからと、のぞみがミーナおねーちゃんを家まで送ってくれたわ。私じゃ警護には不向きだし、ルムックちゃん達ではあまり人の近くは行きたがらないし、未娘たちはツアー客の追い出しに興味が向いているから、多分行ってくれないもの。ホント三姉妹は頼りになります。うや。
『んじゃあ、私たちもいくわね~』
『今日はどんな修羅場があるかしら』
『あたし川べりからはじめるわ~』
『なら私は畑から行こうかしら』
『王道のコース周辺も忘れちゃだめよ』
『村の中も一応回っておかない?』
『そうねそうね。人ってダメって言われるとやりたがるのよね~』
『ああ。ちびちゃんの話していた瘤取りの欲深い爺さんだっけ、そうね。山の中に入る馬鹿は居なくても村の中に入りたがる馬鹿は居そうよね』
うや、そういう認識なの?
『りゅーは、ツアーが終わるまでここでひかりと待機な』
『りゅーちゃん、らいもいるからね』
風ちゃんに年下扱いされるの、出逢ったときから変わんないのよね。お兄ちゃん気質は変わりません。雷ちゃんも私を小さい子扱いです。基本おうちの事と、ご飯の事に関しては私がオバちゃんで立ち回るけど、基本的に二人は私を保護対象として見ている気がするのよね。子羊たちすらお兄ちゃん視点で注意してくるのよ。そっちは虫居たぞ~って。
『ひかり。私、そんなにダメダメ?』
『欲に満ちた人間の前では無力だな、興奮した群れは何であれ凶暴だ。余計な騒ぎにならんうちに隠れとけ』
『それって、あっちがわるいの?』
『そうだ。見つからなければ何も起こらん、夜になれば問題なかろう』
『りゅーちゃん、らいの尻尾さわる?』
『うう、もふる』
二人して何気~に囲い込むのはやめなさい。最近子羊たちにもされるのよね、もこもこ団子にモフモフ団子。どちらも甲乙つけがたい魅惑の選択。
さっきまで沢山いた未娘たちはあっという間に出払ったので、一気に静かになる籠り小屋はけっこう珍しいわ。昼間だからってものあるけど暖かくて静かな場所で何もせずいるって贅沢な時間かもね。
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問題なく迎えられた橇体験ツアー最終日は朝からとっても穏やかな晴天日で、運営委員さんも商人さんも気合いがとっても入っています。閉店最終セール程とは言いませんが、こなされたルーチン業務といいますか、無駄な動きが全くありません。
そして最終日にちびっ子姿のセス君とレン君、姫ちゃんに見知らぬお子様と男装なされた王妃様が。あ、変装してる王様とハルト国の女王様と王配様もツアー客にいた。一般人として。橇、結構気にしてたものね。王様、そのもこもこした上着は羊毛ですか? てか、王妃様の黒のロングコートを華麗になびかせてコーナリングされてゆくカッコよさは、いったいどこで身に付けられたんでしょうか。未娘の黄色い悲鳴が聞こえそうです。
ぶっちぎりの速さでゴールされた王妃様、そして遅れてゴールする方々って、よく見たら何人かは大会に出ていた人じゃないかしら。あ、あの人ゴール手前の障害でハンドル切り損ねた人じゃない?
「うや、なんでしょね~。今日のお客さんは何だかいつもの客層じゃないみたい」
「うん、半分近くはそんな感じだね」
「そうだよな。食いもんばっか売れてるみたいだし、店も気のせいかいつもより掛け声がしないもんな」
運営委員達の詰所へ、火鉢の炭の補充に回っていたイェライトちゃんメルカちゃんに付き添って、火種提供者として回ってます。私、一応世間では大陸規模の保護獣扱いですが、世間一般的には珍獣扱い。外部の人達が多く集まるお祭りやイベントは参加は専ら裏方専門のみとさせてもらってます。
「さっきの、王妃様よね」
「颯爽と乗りこなしてたね。次の大会にはエントリーしてくるんじゃないの」
「だろうな。ただ、この規模の建築技術は俺らじゃまず無理だろ、そうなると出来るところに要請って形で外注しなきゃ、大会は開けねぇよ」
「次回大会ってこれ続くの?」
「需要と供給が成り立てば、続くんじゃないかな」
今回の大会は記念イベントってことで、タングステン村もけっこう出資したのは知ってるわ。それでもかかった費用の一割にもならなかった微々たるもの。残りはカーバイト国とハルト国がそれぞれ負担してくれたの。国軍の人達は殆どボランティアよ。まあ、建築士さん達や職人さん達もかなり格安で今回のイベントに協力してくれたからなんとか形になったけど。
それでも体験ツアーを組んだのは、その資金の回収が主な目的だと思ったんだけど、どうなのかしらね。
「需要と供給ねぇ。村から外れた土地に専用の施設を設けるってのはどうよ」
「あまい。施設の建設よりも、その維持管理に掛かる手間と金は高いよ、それこそ手を出すべきじゃないね。精々会場を作る土地を貸し出して、あとは運営する団体さんにお任せする方がいいよ」
「そうか?」
「何より定期収入として認可されたら、増税対象になっちゃうしね」
「ああ、そだな。増税はちょっと痛てえわ」
橇の製作メンテナンスも、コースの設計も、強度計算も維持も専門家が必要。宣伝だって必要だし、集客すればトイレと食事処に救護施設やら統括施設も必要よ。
何事もお金がかかってくるのは仕方ないけど、無い袖は振れないもの。
「抜け道としては、そうですね。国が主催のイベントになれば補助金が出ます。初回の今年では圧倒的な知名度が足りませんからね、今回は赤字でも構いませんよ。国内外に広く知られるようになれば出資者が付くでしょう」
「なるほど」
「知名度が上がればがるほど、国が主催のイベントにすることは可能です。今年は口コミの噂がどこまで広がるかが鍵ですよ。収穫祭までに出資者の申し出があるとありがたいですよね」
「やっぱ知名度か。あんまし有名になるのも困るんだけどな~」
「何で?」
「薬草の産地として知られるうちはまだいいよ。下手に自生区を踏み荒らしてはいけないって注意できるから。けど、中には村の生活区域まで踏み荒らす輩が、出てこないとも限らない。安全なはずの村の敷地内が安全じゃなくなるのは小さな子供たちが安心して村の中で遊べなくなるじゃねぇか」
「ラースちゃんが怖がるのは困るわね」
「いや、怖がるのは嫁さんで、ラースは知らない人についていきそうで怖い」
「好奇心旺盛だもんね、息子さん」
そう言えば、人見知りしないのはいいけど、警戒心も薄い子が多いのはこの村ぐらいだってグレイちゃんも言ってたわね。
「とりあえず子供達にはいかのおすしを守るように言っておかなきゃね」
「いかのおすし?」
いかのおすし。私もかなりあやふやなんだけど、小学生の間では常識なんだっていう防犯標語の言葉だったような気がするわ。対知らない人用マニュアルの頭文字を繋げたものだった気がするんだけど、おばちゃんだからあんまし憶えていないわ。
「うろ覚えなんだけどね、知らない人に出会ったらこういう行動をしなさいっていう標語の頭文字を繋げたものだったと思うのよ。
口説かれてもついて「いっちゃダメ」
纏わりつかれても「構っちゃダメ」
その口説き文句に「のっちゃダメ」
可愛いからと「襲っちゃだめ」
かまって欲しいからって「スリスリしちゃダメ」
名残惜しいからって「しつこくしちゃダメ」
の頭文字を繋げたものだったかしらね」
「なんだそりゃ」
「後半三つはちび竜ちゃんの実体験ですか?」
「否定できないところはあるけど、要は知らない人には警戒しなさいって分かればいいと思うのよ」
「まあ、それができれば問題はないんだがなぁ。なにせ子供の好奇心に対する集中力はすげえからなぁ」
「たしかに。今のところは一人で行動しないよう促してはいますが、あまり真剣には聞いてもらえませんしね」
「でもメルカちゃんのいうことは、聞いてくれるじゃない」
「同じく土俵に立つから、皆懐いているじゃねーか」
「辛うじて、ですけどね」
とりあえず子供たちには知らない人には近寄らない、話しかけない、すぐ逃げる、大人に知らせる。一人で行動はだめ。を守らせるように、何か考えてみることになりました。
「子供たちの見本としてちび竜ちゃんも守ってね」
「うや~、一人行動が基本なんだけど?」
「また攫われたいならやってもいいぞ?」
「…マミちゃんに相談するわ。」
※いかのおすし=知らない人に出会ったら「いかない、のらない、おおきなこえをだす、すぐにげる、しらせる」の頭文字をとった防犯標語です。ちび竜の唱えた内容はフィクションです。
すみません、次回は諸事情により遅れることがすでに確定しました。
お友達からのSOSで、小っちゃい折り紙で100羽の鶴を折ることが確定です。
不器用な婆ァに100羽。細けぇ柄のちっさい紙で100羽。
最近目がかすんできた婆ァに細かい作業を依頼だとう?
「虐め?」って聞いたら、お友達は既に300羽近くも折ってました。
「あと一週間で千羽完成させなきゃ!」って一生懸命折ってました。
間に合うかしら。




