表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「あなた、もうすぐ死にますよ」と彼女は微笑む  作者: VANRI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/11

バイトと大学と

 バイトが終わり、着替えて裏口から出ると、ドアの近くに寄りかかっている川田と出くわす。


「お疲れ……」

横を通り過ぎようとして、匂いに気付き、パッと顔に目をやる。

 川田は背が高いため、俺は自然と見下ろされる位置になる。しかもそれだけでなく、ガッシリした体格のため、威圧感を感じる。


 左手をポケットに入れ、右手で煙草を吸っている。


「お前、18だろ!? 煙草……」


 言い終わる前に食い気味に言われる。

「何スか? パワハラっスか?」


 え? これ、パワハラになるの?

注意するだけでも? 正しいこと言っても?


「パワハラとかじゃなくてさ、法律で決まって……」


「あー! うるさいうるさい。

 どうせ健康に悪いとか言うんだろ」

そう言いながら地べたに煙草を投げ捨てる。

だが、その煙草の火を消そうとしない。


 川田の足に触れるギリギリの所に捨てられた煙草を力強く踏み潰し、火を消す。

 近くなった距離のせいで煙草の匂いがぐんと強くなる。怯える気持ちを見せないように平静を装い、そのままの位置から川田を睨み上げる。


「……お、お前の健康なんてどうでもいいんだよ!

 未成年に煙草を売ったら、売った店が罰せられるんだよ! お前じゃない人に迷惑かかるんだよっ!!」


 それに少し前、未成年が成人していると嘘をつきうちのコンビニに酒を買いに来て、警察まで来て大変だったこともある。

 そのせいで店長はこれに関しては過敏に反応するので、見つかったらどうなるかわかったもんじゃない。


「……んだよ、真面目かよ」

川田は舌打ちしながら、俺を軽く押し避け苛つく足取りで歩いて行った。



――――――




 大学で講義を受けるため、席に着いてパソコンを準備していると、同じ学部の達樹と圭介が話しかけてきた。この二人とはよく一緒に行動している。


「巧〜、今度の土曜暇だったよな〜」

達樹がニコニコしながら肩に手を回してくる。

 達樹は短髪でスポーツ大好きってタイプ。フットサルのチームにも入っていて、子供たちに教えたりもしているらしい。


「言ってた、言ってた。今週土曜はバイト入れてないって」

俺の代わりに圭介が答えながら隣に腰を下ろす。

 圭介は少し長めの黒髪に軽くパーマをあてている。

最近、無精髭を伸ばしたせいで、一気に大人っぽくなって女の子にモテ出した。マジで羨ましい。

襟付きの黒いシャツがよくお似合い。


 二人に比べたら俺は「普通代表」って感じなんだよな。顔もどこにでもいるような平凡な造りだし、身長は平均位。特に勉強が出来るわけでも、スポーツが出来るわけでもない。

 あれ? そう考えると虚しくなってくる。


「休みだけど、何すんの? 飲み?」


 二人が目を合わせて意味深に笑みを浮かべた。

 達樹も俺の横に座ったので、二人に挟まれる形になる。


 耳元で小声になり達樹が話し出す。

「女の子と飲みに行くことになったから、お前も来いよ」

圭介は、うんうんと頷いている。


「……二人で行けばいいだろ。

俺が行ったって、引き立て役にしかならないから楽しくないよ」


 拗ねたような言い方をして、遠くの時計を見る。

あと数分で講義が始まる。終わった頃には、もうこの話も忘れてしまうだろう。


「そんなこと言うなよ〜お前にとってもいい話だって」

圭介が気持ち悪いくらい優しい声を出す。


「は? なんで?

俺なんて何の特徴もないから、女の子にとっても特はないって」


 達樹がまた肩に手を回してくる。

「何言ってんだよ〜! 

 何もないから何にでもなれるんだろ。勉強出来そうにもスポーツ出来そうにも見えるし、可愛い系にも見えるから、お前いた方が安定剤でいいんだって」


「そ、そうかな……」

上手いこと二人に言いくるめられている気がしないでもないけど……


「お友達作りに行こうよ〜」

圭介が反対側から顔を覗き込んでくる。


「いや、お前は友達で終わらせる気なんてないだろ」

冷たい目でその言葉に答える。


 達樹が肩に回した手を離しながら、聞こえるか聞こえないかの声量でボソッとこぼす。


「最近、元気なさそうだし……」


 聞き返そうとするが、講義が始まってしまう。


 ……俺の為に?

 気を遣ってくれたのかと、胸がじんわり熱くなる。

講義の声を聞き流しながら、二人の優しさを噛みしめる。



――――――



「アハハハ……!」


 圭介がビール片手に高らかに笑い声を上げている。

横に座っている女の子は、事前に気に入っていると情報があった子。

 清楚っぽく見えるが、上品さをここぞとばかりに主張する、しっかり男ウケする服を仕込んでいる。計算し尽くされているその仕草さえ、それを見抜けない男にはそれが自然のものとして映っている。

 飲み会が始まって数十分だが、達樹はもうその子の腰に手を回し、上機嫌そのものである。女の子も嫌がることなく、むしろ計画通りといったところだろう。


 よく、男は「お持ち帰りした」と自慢するが、実は「お持ち帰りさせる」ように誘導されていることがあるのに気付いていない。



 俺の為に……だよな?

俺を気遣って開いてくれた、飲み会……だよね?





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ