第60話 幕間~その頃のフリスク~
今回は幕間です。
バトルフェスタ初戦の結果を見たフリスクの話です。
「な、何故だ……! 何故、あの無能の女が、我が優秀な生徒に勝てるのだ!!」
闘技場の個人部屋で初戦の圧倒的敗北を見たフリスク・ワルジールは机を叩きながら全身を震わせた。
最初の試合でいきなり制約結界の仕込みをバラされ、二巡目に至っては抜き打ち検査で制約結界を張る効果を持つミクロ型の魔道具を没収された。
そして、二巡目のアリスとの戦いで自分の側近の家系の娘のアクミがなすすべもなく敗れたという。
「あの無能女があんな力を出せるはずがない! ドーピングでもしたんだ! そうに決まってる!!」
「あら、あの子はただ必死で努力をしただけですよ?」
「な……!?」
突如威圧的な声が響いて来たので、振り向く。
そこには王国の騎士達と赤の三角帽子に赤のローブに身を包んだ女性がいたのだ。
「お、お前は……、『業火の魔女』カティア……!!」
「その二つ名は昔の話ですよ。 今の私は『大賢者』クレスの妻、カティア・エトワールです」
そう言いながらカティアはフリスクに笑顔を向けた。
ただ、フリスクから見ればその笑顔に恐怖を感じていた。
「お前が何故ここに来た!!」
「あら、決まってるじゃないですか。 国王から逮捕状を渡されましたので届けに来たんですよ」
「逮捕……だと!?」
「兄のフリットの毒殺、ならびにクーデター幇助、さらには学校運営にまつわる規約違反。 主たる容疑は毒殺とクーデターですけどね。 証拠も既にこちらで手にしておりますので隠滅は不可能ですよ」
カティアがここに来た理由の一つとして、フリスクに国王からの逮捕状を突きつけに来たのだ。
毒殺やらクーデターなどの証拠や、規約違反を犯した事で逮捕するには十分だったという事だろう。
「ですが、今の貴方には抵抗する力が残っていますので、これからも見張りの下であなたの思想があの子……アリスさん達の手によって否定される現実を見ていただきましょうか」
笑顔でそう言うカティアに、フリスクは震える。
もう一つは、抵抗力を奪うためにフリスクの思想をこのバトルフェスタによって否定させて精神的ダメージを背負わせる事だった。
いわゆる、精神的な意味でじわじわとなぶり殺しにするという事なのだろう。
屈強な王国の騎士を見張りとして、逃げ出さないように囲みながら。
「何故……あの女があんな力を」
「制約結界で無理やり初期魔力の状態に抑え込まれたまま、アリスさんは必死で自主練していました。 それを見た生徒も多数いたようですね」
「ぬぐ……」
「そして、あなたが退学させたことであの子には自覚はないそうですが……、爆発的に溜め込んでいた魔力が解放されたのですよ。 重い岩を背負ったまま練習し、その岩から解放したら軽くなったのと同様ですよ」
「な……!?」
フリスクが納得いかないまま初期魔力の低いアリスが何故こんなに強いのかと聞いたが、カティアは平然としてそう答えた。
制約結界は初期魔力の状態にさせる事だけのようで、努力で強くなった部分は潜在的に維持されたままなのだ。
そして、制約結界から解放された事で、アリスの魔力は爆発的に解放され、ようやく本来の力を身に着けたという。
それを聞いたフリスクは、その現実に全身を振るわせた。
「まだ、フェスタは始まったばかりです。 開催期間中は私達の見張りの下であなたの思想が壊れゆく現実を体感なさい」
さらに腹黒い笑みを浮かべるカティア。
そう、フリスクにとっての地獄はこれからなのであった……。
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