第49話 エキシビジョンマッチ③
(時間が迫ってる中でボクが出来る事は……)
残り2分を切った状況で、ボクがアリエスさんに勝てる要素はおそらく一つしかないだろう。
あのファイアボール十発同時撃ちの事だ。
しかし、アレは雷の初級魔法【インスパイア】並みの集中力を要するので、その前に何かを仕込んでおかないと流石に不味いだろう。
アリエスさんは攻め手がまだ豊富にあるから尚更だ。
(よし……)
意を決したボクは、斜めに動きながら魔法を集中し始めた。
「くっ、【ファイアボール】!!」
いきなり動いたことで少し焦ったのかアリエスさんはファイアボールでボクの足を止めようとする。
だが、もう片手にも魔力が集まっているので、そっちが本命かもしれない。
なので、それを出される前にこっちも賭けに出る。
その為に、ここまで集中力を高めたのだ。
「【インスパイア】!!」
「なっ!? きゃあぁぁぁ!!」
ボクが放ったインスパイアの魔法は、アリエスさん自身でなく敢えて彼女の足元を狙った。
電撃が足元に落ちた時、アリエスさんの片手に集まった魔力は消え、彼女自身も足元に落ちた時の衝撃波で吹き飛ばされる。
その間にボクは両手に魔力を集め、集中力を高める。
「おいおい、マジかよ。 中規模のクレーターが出来たぞ」
「【インスパイア】の威力じゃないだろこれ……」
「ワルジールでの抑圧が解放された結果じゃないかな?」
相変わらず観客はどよめいているし、アリエスさんは立ち上がるがよろめいている。
ここで丁度ボクは魔力を集めきった。
もうすぐ残り30秒。
ここで……決める!
「今っ!! 【ファイアボール】、十発同時発射!!」
「あっ、しま……っ!!」
自分がよろめいている間に、ボクの攻撃を許したアリエスさんは咄嗟に【ファイアシールド】で対応しようとするが、キャパが追い付かないようで、十発中七発がアリエスさんを直撃した。
「きゃあぁぁぁぁっ!!」
ファイアボールの弾速の勢いでアリエスさんが吹き飛ばされながら、全身が火に包まれ、そのまま気を失った。
とはいえ、当時のクレス校長曰く、バトルフェスタ本会場と同じように『ヒーリング』の結界が張られているので、服は燃えても火傷はあまりしない。
したとしても、この結界内では少しずつ治っていくのだ。
「し、勝者、アリス・パリカール!!」
審判の判定コールと共に観客がどよめきと歓声が沸き起こる。
アリエスさんの方も、結界のおかげで目を覚まし、こっちに歩いて来た。
何とかスカートや胸の部分は燃えずに済んだか。
「流石特例でバトルフェスタに出場するだけあるわ。 完敗よ」
「でも、アリエスさんも攻撃の引き出しが多かったので……結構疲れました」
「インスパイアの威力やファイアボールの十発同時に比べたら、私などまだまだよ。 でも、バトルフェスタが楽しみになってきたわ」
「ええ、必ずこの学校を優勝させますよ」
「その意気よ。 本戦でもお互い頑張りましょう!」
そう言いながら、ボクとアリエスさんは握手を交わした。
周囲からの拍手で、ボクはある意味で弾みがついたかも知れないね。
こうして、エキシビジョンマッチは終わりを告げ、バトルフェスタまでもう少しとなった。
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