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スクール・ジョーカー  作者: 椎凪瑰
第2章 「過去と未来の交錯」
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第2章12話   「藉々」

 ――俺は家に帰り、哥織と杏子に指輪を見せていた。

 

 「哥織にはこの指輪だ」

 「ありがとう……流石はボクの彼氏だよ」

 

 哥織は指輪を指に嵌め、まじまじと見つめていた。

 

 「まあな。杏子にはこれだ」

 

 袋の中から箱に入った指輪を手に取り、そして杏子に渡した。

 

 「お兄ちゃんからの、婚約指輪……」

 「そういう反応、明理からもされたんだが……」

 

 明理と杏子はシンクロでもしているのか。

 欣喜雀躍きんきじゃくやくしている杏子を前に、俺は苦笑する。

 

 「――瀲君」

 「何だ?」

 

 俺を抱きしめてきた哥織。

 哥織は俺からのプレゼントにご満悦の様だった。

 

 「ああちょっと、わたしにも指輪くださいよぅ!」

 「璃瑠のはこれだ」

 

 ゴスロリっぽい指輪を取り出した俺。

 璃瑠は目を見開いて、俺をジト目で睨んだ。

 

 「わたしが髪を黒に染めたからって、指輪も黒くしないでくださいよ……普通のはないんですか?」

 「おい、勝手に探るな!」

 

 袋の中を漁る璃瑠。

 俺は慌てて璃瑠を制止しようとするが――、

 

 「これは何ですか?」

 「そ、それは……」

 

 璃瑠が取り出したのは、ダイヤモンドが嵌め込まれた指輪だった。

 その指輪は俺が購入した指輪の中で最も高価なものだった。

 

 「もしかして、実は本命の人がいるんですか……?」

 「ち、違うに決まってるだろ! いいから、指輪を返せ!」

 「ちょっと瀲君、どうしたんですか?」

 

 妙に狼狽えている紅を眼前に、璃瑠は不思議に思った。

 俺は急いで璃瑠の手から指輪を奪い取ると、安堵の吐息をこぼした。

 

 「いいか、この指輪はとても大事なんだ。“彼女”にやらなくちゃいけないからな」

 「“彼女”って、ボクのこと?」

 「違う」

 「ふ~ん、ボク以外に付き合ってる人がいるんだ」

 「いるわけないだろ」

 

 俺はそう吐き捨て、袋の中に指輪を仕舞った。

 これは重大なものだ。傷を一つでも付けたら、大変なことになる。

 

 「さて……」

 「わっ、ちょっとお兄ちゃん!」

 

 俺はふと、杏子と哥織の手を取った。

 慌てて後ろを着いてくる杏子。

 嬉しそうに着いてくる哥織とは正反対だ。

 そして、俺はある部屋に二人を連れていった。

 

 「いいか、お前らはここにいてくれ」

 「どうして?」

 「いいから。兎に角隠れていてくれ。特に哥織」

 「は、はいっ! 何でしょうか! ボクをどうするつもりですか?」

 「急に畏まるな。どうもするつもりはない」

 

 「じゃ」と言い残して俺は部屋の鍵を外から閉めた。

 この部屋は以前、璃瑠を閉じ込めた時の部屋と同じだ。

 それにしても、璃瑠はどうやってこの部屋から出たのだろう。

 

 「璃瑠、気を引き締めておくんだぞ」

 「うん……分かってます」

 「そうか、それならいいが、油断は禁物だ」

 

 リビングに戻った俺は、璃瑠と共に正装へと着替えた。

 そして――、

 

 「そこから登場するのかよ……」

 

 俺は自分の部屋の窓から現れた二つの影を垣間見た。

 そして紫水晶の色をした双子が、一人の男性と共に姿を現した。

 

 「やあ、瀲君」

 「瑇黎さん。お久しぶりです……」

 

 黒髪の青年……。

 前散歩をしていた時、バス停で出会った男だ。

 俺は御辞儀をする。璃瑠も同時に頭を下げる。

 

 「この人達って誰ですか?」

  

 隣から耳打ちしてきた璃瑠。

 

 「あのフードを被った男の名前が、夜月瑇黎さんだ。続いてあの双子が椢䤳目怮と䴒だ。普段はユウとレイと呼ばれている」

 

 紫水晶の髪を揺らす二人の少女を、俺は見つめる。

 左に立っている可憐なポニーテールの子がユウだ。

 右に立っている中性的なショートヘアーの子がレイだ。

 二人は俺と璃瑠にそれぞれ視線を飛ばす。

 

 「畏まらなくていいよ。僕より瀲君の方が偉いでしょ?」

 「そうですね――じゃあため口を遠慮なく使わせてもらうとしよう」

 「わたしもため口でいいですか?」

 「お前は駄目だ」

 「むぅ……」

 

 璃瑠は頬を膨らました。

 瑇黎を前に俺は話をする。

 

 「瑇黎、近況報告を頼む」

 「御意。まずは鬼䥸㡭磨についてです。彼は“彼女”の服にお茶を零しました」

 「は?」

 「次は㕗䨊歩乃香についてです。彼女はつい最近――」

 「瑇黎、ふざけないでくれないか?」

 「ごめん。つい」

 

 苦笑する瑇黎を、俺は睇視する。

 

 「最近は全く大事が起こってないからこれくらいしか話すことが出来ないんですよ」

 「そうか」

 「それに、重要なことを話す際、そこのお嬢さんは必要ないでしょう?」

 

 瑇黎は璃瑠を指差した。

 途端、俺は苦笑した。

 

 「流石は瑇黎だな。俺が何故璃瑠を連れているのか分かったのか?」

 「ユウは分かるよ」

 「じゃあ、ユウ。見解を聞かせてくれ」

 

 不意に、ユウが手を上げた。

 俺は名指しする。

 

 「瀲さんが璃瑠さんのことを好きだから!」

 「ごめんだけど、それは違うね」

 

 ユウの発言に、一瞬喜んだ璃瑠だったが、俺の否定に頬を膨らました。

 すると、レイが笑い出した。

 

 「あはは、瀲さんって意外と鈍感なんだね」

 「何がだよ……それより、瑇黎。“彼女”は俺になんと命令している」

 「それが――」

 

 俺は瑇黎の言葉に思わず瞠目した。

 その言葉は、あまりにも残酷だった。

 

 「そうか。なるべく従うことにする。じゃあまた今度な」

 「じゃあ、また今度です」

 

 瑇黎とユウとレイは去った。

 俺と璃瑠は深く息を吐いた。

 そして、璃瑠は俺の方を向く。

 

 「瀲君、本当にそうするの?」

 「まあな。そうじゃないと、俺は――」

 

 唇を噛み締め、憎悪を滾らせて言った。

 

 「紡戯に合わせる顔がない」

 

 天国に行っても、紡戯には軽蔑されるだけだ。

新たに登場した人物名。

【使い?】

夜月やづき瑇黎たいれい

【双子】

・椢䤳目 (くぬぎやま)ゆう

・椢䤳目 (くぬぎやま)䴒(れい)

【その他】

・鬼䥸 (きみ)㡭磨 (けいま)

・㕗䨊 (ゆうえん)歩乃香ほのか

 

 次回もまたお楽しみにしててください!

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