第2章閑話 「ある日のこと」
――己の名は『神楽瀲』
讎銘学院第一學徒だ。
この中学校は古くから存在しており、昔の慣習が未だに残っている珍しい場所だ。
そんな中学校に――己、いや俺と紡戯は通うことになった。
「瀲君、緊張するね」
「ん? ま、まあそうだな」
『緊張』とは?
後から教わったのだが、大きな事柄が起きる前日などに心臓の鼓動が速くなることらしいな。
俺と紡戯は体育館で校長先生の話を聞いている。
俺は周囲を見渡した。
左隣には、どの生徒よりも目立った髪色――白の髪を持った少女がいた。
右隣には、宝石の様に美しい翠の髪を持った少女がいた。
後ろにはベージュの色の髪を持ち、赤の瞳を持つ少女がいた。
前には、欠伸をしながら眠たそうにしている木橡の色をした髪をツインテールにしている少女がいた。
「前にいる少女と俺以外、全員緊張しているみたいだな」
俺はそう言って、姿勢を正す。
少しは緊張感とやらを持ってみるか。
俺は退屈さを気張って鎮圧し、入学式が終わるのを待った。
|幻 夢 虚 悲 戀 朽 。 然 様 な ら|
――入学式を終えた俺は、体育館から去り、バス停まで赴いていた。
すると、
「あんた、あたしのことを見てたでしょ」
「――?」
俺はベージュの髪をした少女にそう問われた。
確か、入学式の時俺の後ろにいた少女だな。
「それに、あたし以外の生徒達も……あんた、何のつもり?」
少女は、何故か俺に憤っている様だった。
「何で怒ってるんだ?」
すると、少女は眉を顰め、
「怒ってはいないわよ。ただ気になったから聞いてみただけ」
「そうか。みんな緊張してるんだなって思ってただけだ」
「そうなんだ」
少女は俺の隣に佇む。
俺は不思議に思い、一つ尋ねた。
「俺も問うが、お前はこっちの方面なのか?」
「そうよ。あたしはこっちが家。あんたもそうみたいね」
「そのようだな」
俺と少女のぎこちない会話に、不意に一つの声が割り込んできた。
「――君は、ゲームが好きかい?」
いや、現実じゃない。
俺がある男の台詞を思い出したのだ。
あの屑達を殺した要因の一つ……。
「ゲーム……?」
「もしかして、ゲームも遊ばせてもらったことないのかい? 可哀想に。――そうだ、僕が君に買ってあげるよ。でも条件がある。それは――」
「――君の両親を殺すことさ」
そうだったな。こいつは俺にゲームを買おうとしたのだな。
しかし、そんな慫慂は俺には通じなかった。
俺は男の股間に刃物を突き刺したのだ。
男がもだえ苦しんでいるところを見て、俺は楽しくてしょうがなかった。
――こんなに楽しいのなら、あの屑達でも試してみよう……。
その日の夜。
俺はまず母の首を切り裂いた。
酸素を求めて口を魚の様にパクパクしているところを、頬を赤くして俺は見つめていた。
次は父の両手をそぎ落とし、痛みに悶え苦しんでいる顔を見て、俺を虐げていた方法と同じ方法で父を嬲ってやった。最初は精神的に殺し、最期は肉体的に殺した。
――ああ。また人を殺したいなぁ。
俺は過去を偲びながら、そう思った。
「ねえ」
ふと、俺の隣で少女は囁いた。
「――を手伝ってくれる?」
おかしなことを言われたのであった。
「断る」
それに対し、俺は率直に述べた。




