第2章3話 「最高のプール②」
――俺はふと、見学している鸞樹が目に入った。
忘れ物でもしたのだろうか。
俺は鸞樹の近くへと行き、声をかけた。
「なんで見学なんてしてるんだ?」
「なに、己は貴様らを監視しているだけだ。無様なほどまでにはしゃいで、恥ずかしくはないのか?」
「恥辱の一つもないな。鸞樹、お前も着替えればいいのに」
「なんで己が水着を持ってきているということを知っているのだ?」
俺は溜め息を吐いた。
「朝、お前は普通に水泳バッグを持ってきてたぞ。手に持ってな」
「な!? そ、そんなはずが!?」
これはこれは、鸞樹が珍しく慌てているではないか。
俺はもっと揶揄いたくなり、言葉を続ける。
「なんでそんなに慌てているんだ? もしかして泳ぐの苦手だとか……」
「そ、そんなわけないだろう! お、己が泳げないなど、あるはずがない!」
鸞樹は図星だった様だ。
俺はプールサイドに上がり、鸞樹の隣に座った。
「泳げないなら俺が教えてやろうか?」
「き、貴様に教えてもらうなど恥でしかない!」
「大丈夫だ。他の奴らには見られないよう、市内にある温水プールに行く様にするから。そこは幼児ばっかりだから恥ずかしくなんてないだろ?」
「確かに、そうかもしれないが……」
鸞樹は俯き、戸惑っている様だ。
俺はそんな鸞樹に続ける。
「俺が最後まで付き合ってやるから、安心しろ。必ず泳げる様にしてみせる」
「か、感謝する……ぞ」
鸞樹が珍しく人に礼を言ったな。
俺は微笑ましい鸞樹に対し、本心から久しぶりに笑った。
「あはは! 鸞樹、腹痛い……」
「な、何を笑う! 礼を言って悪かったか!」
鸞樹は俺に対して怒鳴る。
だがしかし、俺は楽しくて仕方がなかった。
哥織と紡戯以来の愉悦に、俺は嬉しかった。
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――翌日、俺と鸞樹は市内にある温水プールへと出向いた。
鸞樹は小学生の様な水着を着ていた。
俺は思わずその姿に吹き出しそうになったが、必死に堪えた。
「な、何だ! せ、折角プールに来てやったと言うのに、己を見て何故そんなににやにやしてるんだ!」
「いや、お前可愛いなって」
「かわ……は?」
鸞樹は顔を真っ赤にし、地団太を踏み出した。
「か、可愛いってなんだ! か、可愛いって、己のどこが可愛いんだ!」
「格好がだよ。さて、泳ぎの練習だ。最初は俺が手を引いてやるからな」
「切り替え早いな……」
鸞樹は小さく呟き、そして温水プールの中に足を入れた。
すると、鸞樹は顔を真っ青にして、
「い、嫌だぁあぁあぁぁぁあぁぁあぁああ!!!!! 水怖いいいぃぃぃぃぃぃぃいぃいいぃいぃいぃい!!!!!!」
急に泣き出した。
俺は鸞樹の態度の急変に驚愕した。
そして俺は鸞樹に歩み寄り、
「大丈夫だ。俺に捕まってろ」
「ぐすん……うん」
鸞樹は俺に手を引かれながら、必死にバタ足をする。
最初はこういう練習から始めていった。
泳ぎの基礎部分ができれば、後は簡単だ。
そして、実に一時間後。
「おお、泳げる様になったじゃないか! 凄いぞ、鸞樹!」
努力のしがいがあったぜ。
俺は手を引かなくても自分で泳げる様になった鸞樹を見て、思わず涙が零れそうになった。
これが成長した息子を見送る親になった気分か……。
「か、感謝しよう! 己は紅のおかげで泳げる様になったぞ!」
「じゃあ、引き続き頑張るぞ! 次はクロールだ!」
「ひいっ!」
こうして、俺と鸞樹の特訓は一日中行われた。
新たに登場したキャラクター達。
【彼女?】
・拯美坂哥織
【新生徒会副会長】
・零羽次鸞樹
【クラスメイト】
・時司魅宇
・東健斗
※東健斗に関しては名前のみの登場となっております。ではまた次回。




