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スクール・ジョーカー  作者: 椎凪瑰
第1章 「波瀾の入学式」
26/64

第1章25話   「犯人」

 ――明理は瞠目していた。

 その原因は、俺の発言によるものだ。

 『俺が死んだら、悲しいか』。

 そんなことを訪ねてしまったのだ。

 すると、明理は瞳を潤わせながら、

 

 「――紅君が死んじゃうなんて、私耐えられないよ」

 

 明理はうつむき、震えた声で続ける。

 

 「明理、ありがとう」

 

 俺は明理の頭を、自然と撫でていた。

 明理は驚いたのか、俺の方を見上げる。

 

 「明理のおかげで、俺は覚悟が決まった」

 「覚悟?」

 

 俺は明理に、犯人の手紙を見せた。

 明理は再び目を見開き、俺にしがみついてきた。

 

 「駄目! 絶対に行かないで!」

 

 明理は涙をこらえながらも、俺に言った。

 

 「お願いだから、紅君は私から離れないで!」

 

 明理は必死に、俺にそう言った。

 涙を堪えきれず、遂に零してしまった明理。

 

 「紅君が死んじゃうなんて嫌だよ……絶対に、絶対に嫌だ!」

 「明理」

 「何……?」

 

 首を傾げる明理を前に、俺はこう言った。

 

 「俺は死なないさ。絶対に、またこうして楽しい日々を送るんだ。思い出だってもう出来てるし」

 「で、でも……」

 「明理。俺が戻ったら、また笑顔で迎えてくれ」

 

 俺は呆然と立ち尽くした明理を後に、『宵波公園』へと向かった。

 海辺近くにある公園内には、誰もいなかった。

 

 「いつもなら人は沢山いるはずなのにな……」

 

 不気味な公園内を、俺は歩く。

 すると、後ろから声をかけられた。

 

 「紅さんっ!」

 「そ、天!? どうしてここに……」

 

 意外な人物に、俺は驚愕した。

 悪戯いたずらに微笑む天は、俺を後ろから抱きしめる。

 

 「天。この公園は危ないから去ってくれ」

 「どうして?」

 「でなきゃ天が死んでしまうじゃないか」

 「ふ~ん」

 

 天は俺にそう言葉を返すと、ふと俺の顳顬こめかみ辺りに何かを押し付けた。

 俺は気になり、天に「何をしてるんだ?」と尋ねた。

 すると天は不敵に笑い――、

 

 「私が紅さんの探し求めている戮殺者りくさつしゃだから。別に逃げなくてもいいよね?」

 「な!?」

 

 俺は天の発言に目を見開く。

 それに、俺に押し付けられていたのは、見事に拳銃だった。

 天はにやりと哄笑し、引き金に指を絡げた。

 

 「紅さん。じゃあね」

 「な、何故……!」

 

 俺が言葉を発する前に、天は引き金を引いていた。

 

 「なーんてな」

 「ひゃっ!」

 

 俺は拳銃を握りつぶし、天を投げ飛ばした。

 天は地面に背中を強打し、身悶えする。

 俺は天を見下ろし、

 

 「お前との児戯には付き合ってられないんだよ。天、お前は本当にあの犯人なのか?」

 「一言一句違わないよ」

 「そうか」

 「そうだよ」

 

 天はにっこりと微笑んで見せた。

 だが、俺は溜め息を吐いた。

 そして無表情になり、

 

 「――ならば、お前はここで終わりだな」

 

 そう、冷徹に述べたのだった。

 

 ―――――――――――――――――――――――――

 

 「明理さん、どうしたんですか?」

 「紅君……」

 

 明理はバスの中で、ずっと彼の名を呼んでいた、

 凛音は紅と明理に何があったのか、気になって仕方がなかった。

 

 「紅君が、本当に死んじゃうかもしれないの……」

 「ど、どういうことですか!?」

 

 凛音は声を荒げ、明理に尋ねた。

 明理は涙を零し、

 

 「あの犯人から、手紙が来たんだよ。それで、それで、紅君は犯人に呼ばれたんだ。そして紅君は犯人と会いに……」

 「そうなんですか……」

 

 凛音は紅に電話をかけた。

 しかし、紅は応答しなかった。

 凛音は冷や汗をかき、明理の方を向いた。

 

 「紅さんがどこに行ったのか、知りませんか?」

 「ごめん。私何にも分からない」

 「そうですか」

 

 ――紅さんは一体どこに……?

 

 凛音は俯き、考えに考える。

 しかし、何も思いつかない。

 

 「どうすれば……」

 

 時は過ぎていき、凛音と明理はバスを降りた。

 

 「じゃあね、凛音ちゃん」

 「明理さん、さようなら」

 

 凛音は重苦しい溜め息を吐き、自分の無力さに怒りが募る。

 

 「明理さんの言う通り、このままじゃ紅さんが……」

 

 死んでしまう。

 凛音は泣きたくなるが、でも涙は堪えた。

 

 「あれ? 君は『1-A』の凛音さんだよね」

 

 後ろから飛んできた言霊に、凛音は驚嘆した。

 後ろを振り返ると、そこには生徒会長がいた。

 

 「どうしたのかな? 泣きそうになってるけど……何かあったのかい?」

 「はい、実は紅さんが……」

 

 凛音は生徒会長に話をする。

 生徒会長は真剣に話を聞いてくれた。

 

 「そうかい、そうかい。それは大変だね」

 

 生徒会長こと、廻糾烈徒はにやりと不敵に笑い――、

 

 「でも、僕にとっては好都合だね」

 「や、やめてください!」

 

 烈徒は凛音を人気のない路地裏に押し倒し、そして凛音の制服を脱がした。

 凛音は突然の出来事に、驚愕し、恐怖した。

 

 「暴れないでくれると、僕も嬉しいのだけど」

 「は、離してくださいっ! い、いやっ!!」

 

 烈徒は凛音の口を掌で覆い隠した。

 凛音は言葉を上手く話すことが出来ず、必死に踠く。

 

 「おおっ、可愛い下着じゃん」

 

 烈徒は微笑む。

 烈徒は、凛音の桃色の下着に触れ、口角を歪ませている。

 

 「う、うぅう!」

 

 凛音は涙を流しながら、烈徒に必死に抵抗する。

 烈徒は凛音に馬乗りになり、凛音の両手を自分の制服で縛った。

 凛音は身体の自由を奪われ、怯えた瞳で烈徒を見た。

 烈徒は嬉々とし、凛音の頬に触れた。

 

 「可愛い顔してるね。僕の好みだよ」

 「う、うぅ!」

 

 凛音は烈徒から視線を逸らした。

 だがしかし、烈徒は凛音の顔を無理矢理自分の方に向かせる。

 

 「駄目だよ凛音ちゃん。僕から視線を逸らすなんて愚行、この状況でやるなんて馬鹿だよ」

 

 烈徒は続ける。

 

 「もう僕を本気にさせちゃったね。一刻も早く凛音ちゃんを犯すことにするよ」

 

 烈徒は不敵に笑った。

 すると、

 

 「生徒会長さん、何してんすか?」

 「誰だい?」

 

 生徒会長は振り返った。

 やけに落ち着いた口調の男は、烈徒と凛音を一瞥するなり――、

 

 「そうすか。生徒会長さん、最低っすね」

 「な……!?」

 

 生徒会長を、男は蹴り飛ばした。

 金髪の男――内田淳二は凛音に歩み寄り、縛られた両手を解いた。

 そして烈徒に向き直り、

 

 「生徒会長さん、おれは見損なったっすよ」

 

 淳二は血塗れの烈徒の顔を一回、二回、三回と蹴り続ける。

 そして数えきれないほど蹴り続け、淳二は凛音の方を見やった。

 

 「あ、ありがとうございます……」

 「危なかったっすね。レイプ寸前だったすよ」

 

 淳二は烈徒の顔を再び蹴り始める。

 

 「あ、そうっすね。凛音っち、その協力って奴、おれがしていいすか?」

 「別にいいですけど……」

 「それならいいっすね。じゃあ協力完遂――っと」

 

 淳二は烈徒の顔を蹴り続けた。

 烈徒の顔は血で濡れすぎてよく分からなくなっていた。

 凛音は服を着て、走って家に戻った。

 

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