表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スクール・ジョーカー  作者: 椎凪瑰
第1章 「波瀾の入学式」
22/64

第1章21話   「友の相談」

 ――夢、だったのか。

 俺は飛び起き、心悸しんきを激しくしたまま汗を流す。

 隣ではすやすやと、気持ちよさそうに碧五が寝ている。

 彼女の寝顔を見て俺は安堵し、ベッドから降りる。

 そしてリビングにあるソファに座り、テレビを点けた。

 しかし、何も面白い番組がやっていなかったため、結局はテレビを消した。

 俺は気怠けだるい気分に溜め息を吐き、ふと、悪夢のみぎりが脳裡に浮かんだ。

 

 ――俺を呼んでいた茶髪の少女。

 

 彼女は紡戯と瓜二つだった。

 何か暗喩でもしているのか?

 真意は今のところ掴めてはいない。

 あまり深くは考えないでおこう。

 あれはただの夢だ。

 夢なんだ。

 

 「腑に落ちないな……」

 

 やはり、あれを普通の悪夢だと片付けるのには少し納得がいかない。

 何かがつかえて、あの悪夢で悶えている様な気がする。

 

 「紅君、朝は早いんですね……」

 

 後ろから声が聞こえた。 

 俺の部屋から出てきた碧五が、目を擦りながら隣に座った。

 

 「碧五か……」

 

 俺は呟く。

 

 「大丈夫ですか? 今日は一段と元気がないようですけど……」

 「なに、気にするな。俺は今日も元気だぞ」

 

 俺は満面の笑みを返した。

 しかし、碧五の言う通り、残念ながら空元気だ。

 やはり碧五の心配は晴れないのか、じっと俺を見ながら何かを考えている。

 

 「ふむふむ……じゃあ、紅君には特別に私お手製のごはんを食べてもらいます! いいですか!」

 「まあ、確かにまだ朝食はってないし……丁度いいな、食べさせてもらうぞ」

 「それでこそ紅君です」

 

 碧五はにっこりと笑みを浮かべた。

 そしてキッチンへと向かう。

 俺は椅子に座り、テーブルの上で欠伸をした。

 暫くすると、かぐわしい香りがキッチンの方から漂ってきた。

 そして、碧五は作った料理をさらに乗せて持ってくる。

 俺の目の前に置かれたその料理は――、

 

 「どうです! これが私のお手製チャーハンです!」

 「こ、これが……」

 

 俺の台詞を聞いた人なら、屹度美味しそうなチャーハンが目に飛び込んできて驚いているのだと思ったはずだろう。

 

 ――だが違う!

 

 そう、このチャーハン途轍もなくやばい雰囲気を醸し出しているのだ。

 緑色をしたチャーハン。どこからどう見ても美味しくはなさそうだ。

 俺は恐る恐るスプーンを片手に、一口食べてみることにした。

 俺の隣では、椅子に座って俺の答えを待っている碧五がいた。

 どうする、俺。

 正直に不味いと言うか、嘘でも美味しいと言うか。

 どうするんだ、どうすればいいんだ!

 葛藤かっとうを繰り返し、俺はその瞬間チャーハンの味に驚いた。

 

 「どうですか?」 

 

 碧五は隣から尋ねてくる。

 

 「――美味い」

 

 俺は驚嘆を口遊くちずさむ。

 見た目は米粒と具材が緑色でエイリアンみたいだが、味は有名な超人気ラーメン店が作るチャーハン並に美味い。何回でも食べられる。

 俺は次々と口へチャーハンを運ぶ。

 

 「このチャーハン、名付けてエイリアンチャーハンだな!」

 

 俺はそう叫んだ。

 

 「はい……ていうか、エイリアンはどこから来たんですか?」

 「見た目だ!」

 

 俺は快哉かいさいを言い放つ。

 

 「そんなに見た目がおかしいんですか……?」

 「ああ、毒でも混入したのかってぐらい緑色だしな。一目見たら、屹度誰しもが『これは食べちゃいけない奴だ』って本能が感じるレベルだぞ」

 「ひっ、酷いです! エイリアンなんて言わないでください! 紅君の馬鹿!!」

 

 俺の発言に碧五は怒り、そっぽを向いた。

 

 「でも……味が美味しいのは本当だ。本当に、本当に美味しいぞ。もう何回でも食べれるぐらいだ」

 

 俺がそう言った途端、碧五は何やらもじもじし出した。

 

 「く、紅君の鈍感! そうやって私を喜ばせようとしないでください!」

 「お前に喜んでほしかっただけなんだが……」

 「ひゃあっ……!」

 

 顔を真っ赤にし、俺から目を背ける碧五。

 その可愛げな行動を横に、突然インターホンが鳴った。

 まだ早朝の五時だぞ。 

 一体誰だ?

 俺は渋々と玄関へと向かった。

 そしてドアを開けると――、

 

 「おはようございます」

 

 そこにいたのは、凛音だった。

 

 「おっはよう、紅君」

 

 すると、奥から明理と共に或朱が現れた。

 

 「ふぁぁ~、本当はまだ寝たかったんですけどね」

 

 欠伸をしながら凛音は言った。

 

 「別に、オレは来たくて来たわけじゃないからな。勘違いするなよ」

 

 そっぽを向きながら或朱は言った。

 そして俺――微睡紅は、

 

 「お前ら、こんな朝早くに何の用だ?」

 

 と、頭を掻きながら言った。

 

 「だから、オレは何の用もないんだ。凛音達に着いてきただけだし」

 「じゃあ帰ってくれ」

 「え!? いや、それは!? い、嫌だ!」

 「じゃあ入ってよし」

 「馬鹿……何言わせるんだよ……」

 

 羞恥心を剥き出しに、或朱は顔が真っ赤になる。

 そして、明理と凛音と或朱は玄関へと上がった。

 俺は三人よりも先にリビングへと戻った。

 碧五は椅子に座ったまま、テーブルに頭を乗せて寝ていた。

 

 「おい、起きろ」

 

 俺は碧五にそう促した。

 

 「もう少しだけ、寝かせてください……」

 「もう、しょうがないですね。――って、ひゃああああああああっ!!」

 

 飛び退いて俺から離れる碧五。

 そして、リビングへと三人はやってきた。

 

 「やっぱり、紅君の家は広いね……えいっ!」

 

 明理はそう言い、ソファにダイビングした。

 俺は明理の頭にチョップをお見舞いした。

 

 「紅君のチョップだ……ああ、身体が悦んじゃってる」

 

 変なことを口にする明理。

 

 「暴れるなよ。まだ杏子と天が寝て――」

 「「おはよう!!!!」」

 

 俺の台詞の途中で、天と杏子の部屋のドアが同時に開いた。

 

 「あ、或朱ちゃんだ!」

 「やっ、またお前か! くそっ、離れろ!」

 

 抱き着いてくる杏子を必死に引き剥がそうとする或朱。

 俺はその光景を眺めていた。

 一応言っておくが、俺は嫉妬などしていないからな。

 前は俺によく抱き着いてきた杏子が、もう俺じゃなくて或朱に抱き着く様になってしまったからって、羨ましくも思ってないからな。悲しくもないからな。

 

 「紅さん、早く『堕天使の憐憫』の五巻を読ませてください!!」

 「あ、それなら別にいいぞ」

 

 凛音は前、俺の家に来た時に四巻までしか読んでなかったからな。

 それに一巻までしか凛音は持ってないから、凛音にとっての最新刊の五巻を読みたくなるのは理解できる。

 

 「ありがとうございます……むふふ、早くエッチなシーンが見たいです」

 

 ん? 今、凛音が変なことを言わなかったか?

 多分気のせいか。

 

 「それで、この子は?」

 「明理にはまだ紹介していなかったな。一年C組の柄沫碧五だ」

 「よ、宜しくお願いします」

 

 碧五は丁寧に、明理へ御辞儀をした。

 

 「私は許宮明理。宜しくね」

 

 天使のような微笑みを浮かべて自己紹介を行う明理。

 やばい、明理につい見惚れてしまった。

 

 「む、紅さんったら、私以外の女の子に惚れてるんだ」

 

 俺の腕を胸に抱き寄せ、天は言った。

 天の発言に、明理は俺を見ていた。それも頬を赤くしながら。

 まずい! 勘違いされたかも。

 誤解だよ誤解! 俺は冤罪えんざいなんだ!

 

 「助けてよぉ! ええぇええぇん!」

 

 突然、俺に背後から泣きながら抱き着いてくる或朱。

 その或朱には、杏子が抱き着いている。

 俺は仕方がないので、杏子を引き剥がしてやった。

 

 「お、お兄ちゃん! もう、本当に……」

 

 杏子は俺に抱き着いてきた。

 

 「可愛いんだから」

 

 一応ながら言っておくが、俺は杏子に抱き着かれることを狙って或朱を助けたんじゃないからな。勘違いするなよ。

 

 「ありがとおぉ、紅!」

 

 俺に抱き着いてくる或朱は、勢いのあまり、俺を杏子ごとソファに押し倒してしまった。

 

 「私もはーいろっ!」

 

 押し倒された俺が一番下の状況という非常事態なのに、明理は上に乗ってきた。

 俺は上半身を三人の体重で圧迫され、吐き気を堪えながら、必死に三人を振り解いた。

 

 「はぁ。おい、お前らは、はぁ。俺を殺す気かよ! はぁ」

 

 俺は三人ごと起き上がり、息を切らしながら言った。

 明理と杏子は申し訳なく思ったのか、俺から距離を取った。

 そして何かを話している。

 

 「ちょっ、紅……」

 

 俺は或朱の声で気が付いた。

 そう、俺は無意識に或朱を押し倒していたのだ。

 そして両手は或朱の両胸に。

 ほう、胸ってこんなに柔らかいんだな。

 俺は掌から伝わってくる感覚に驚きを隠せなかった。

 ていうか、驚いている場合じゃない。

 速やかに、何事もなかったかのように或朱から離れよう。

 

 「待って」

 

 俺が離れようとした途端、或朱は俺を呼び止めた。

 呼吸が荒くなった或朱は俺を誘うかのように両手を広げ、妖艶ようえんに囁く。

 

 「オレは、紅とならシてもいいぞ……」

 

 頬を赤くした或朱は、俺だけを見ていた。

 俺は或朱を前に、必死に理性を保とうと苦闘していた。

 

 「そ、その気持ちはありがたいんだが……今はな……」

 

 俺は動揺を隠せず、声を震わしながら言った。

 そして或朱から距離を取った。

 

 「そう、なんだ。また、今度な……」

 

 或朱は起き上がり、俺に呟いた。

 

 「お、おお、お兄ちゃん……今何してたの?」

 「あ、あれは不可抗力だ!」

 

 俺は必死に杏子へ弁明する。

 

 「ぐふふ、紅君と或朱ちゃんのエッチなシーン。撮っちゃった」

 「な、何してんだよ!」

 

 カメラを両手に、俺と或朱のハプニングを収めた写真を眺めていた明理。

 

 「お兄ちゃんって、変態なの?」

 「ち、違う!」

 

 俺は「それに」と続けた。

 

 「本当の変態はあいつだ」

 

 皆の視線が一斉に、本を読んでいる凛音に集まった。

 

 「何ですか? 今いいところなんですけど……」

 

 不思議そうに皆を一瞥した後、凛音の視線は本に戻った。

 俺は微動だにしない凛音を前に、微苦笑した。

 

 ――――――――――――――――――――――――――

 

 「――紅さん、相談があります」

 「凛音、どうしたんだ?」

 

 俺と凛音以外がリビングに居る中、俺と凛音は空き部屋で会話をしていた。

 それも、凛音からは相談があるそうだ。

 

 「もしかして恋愛相談か?」

 「ち、違います!」

 

 凛音は顔を赤くして否定した。

 彼女は咳払いをして、真剣な表情になると、

 

 「或朱の相談です」

 「或朱の相談って、どういうことだ?」

 「或朱が抱えている問題を、紅さんと私でどうにかできないかと思いまして……」

 

 俺は無表情になり、

 

 「――分かった。話を聞かせてくれ」

 

 そう俺は言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ