養蜂における女王蜂選別の基準と遺伝子の歪みについて
養蜂をしている者が次世代の女王蜂をある程度人工的に残す手法として、幼い蜂児にローヤルゼリーを与えることで王台を作る方法があります。 この際女王蜂の遺伝子を選ぶ時一般的に行われている基準は集蜜量が多いこと、蜂の群れが1年を通して大きく保てること等です。
旧王と新王を比べた時新王のほうが産卵力が強く群れが大きくなりやすいです。新王は健康状態もよく、併せて交尾してから日が浅いために十分に雄から受け取った遺伝子を貯蔵しているからです。 主に採蜜の終わった後の割群で新王が大量に生まれることになりますが、 養蜂家の心情としてはこの後群れが大きくなりやすい新王を手元に残して 旧王は花粉交配に利用したり、花粉交配を主に仕事をしている大きな養蜂業者へ群れそのものを販売したりすることが多いです。
しかしながらここには1つ考えておくべきことがあります。本来ならば生物というのは長期間に渡って生き残る遺伝子こそが強い遺伝子であって、1年生きるミツバチより5年生きるミツバチのほうが種として本来は残っていくべきです。人の手でミツバチの交配が行われることで近年この点に歪さを感じます。
旧王は2年連続で採蜜に使われることはあまり多くありません。場合によっては古い王は一度潰して新王を作り直すことが非常に多いです。本来は数年に渡って生きる王というのは自然の中であったら遺伝子を増やす機会が多くなり、逆に1年そこらで命が耐えるような王の遺伝子を持つ個体は減っていきます。これが人の手が入ることで産卵量がひたすら多く1年間だけ生きればそれでよいという遺伝子が多くなっている気がします。
本来は季節に応じて春は群れが大きくなります。それ以外の季節は流蜜量によって自然に群れの大きさが増減するのがミツバチの本来の姿です。この状態がミツバチにとって正常な状態で、真夏や真冬の蜜が殆ど無い時期には、群れは巣枠で数えると3枚くらいに収まっているのが一番ミツバチにとって良い状態なのではないでしょうか。夏や冬に餌を与えることによって無理に群れを大きくして蜂を売るときに群れを大きい状態にしたいというのはわからない心理ではありませんが、人間の都合にミツバチを付き合わせています。この歪さというのは近年のミツバチヘギイタダニの大繁殖にも影響していると考えています。
細かい部分は割愛しますが、ミツバチヘギイタダニはミツバチの有蓋状態の蛹に卵を産み付け、蛹が生まれるまでに繁殖を終えます。つまり、ミツバチの蛹が多ければ多いほどミツバチヘギイタダニが繁殖しやすい環境と言えます。近年は冬が温暖なことも影響し、冬場に産卵が完全に止まらない地域も増えています。これに加えて産卵量が多い女王蜂が選別されているため、1年中蛹が途切れることなく群れの中に存在します。1年中ミツバチヘギイタダニが増えることができる環境を人が作り出しているとも言えます。従来であれば夏や冬の産卵が途切れる時期にミツバチヘギイタダニは繁殖することができず、ミツバチの知恵ともいえる習性である程度はダニへの対処ができていたのでした。人が介在することで薬剤耐性を持つ強力なダニや、繁殖力が以前より強くなったダニが出現していることも併せて現在世界中が頭を悩ませているミツバチヘギイタダニの大被害が生み出されているように思われます。
従来のミツバチの生態を取り戻すためには、旧王ができるだけ手元に残し、長生きしている王から遺伝子を残していくというやり方も今後考えていくべき手段ではないでしょうか。
旧王は年をとるごとに産卵数が減ることや、越冬が難しいことが嫌われる原因ではありますが、採蜜期において増えすぎたミツバチは消費する蜜の量も多いため必ずしも採蜜に適しているとは言えません。春の採蜜期においては産卵数が絞られることにより群れの過剰な増加を抑えることができます。群れの大きさや産卵量、消費する蜜の量が適度であり、なおかつミツバチの習性としての集蜜量の多い群れこそが採蜜に適しています。




