47、親の七光りなんてお断りだよ〜
音楽が絞られ、ワンターンした所で、やがて止まった。
やっぱり、楽しい!
これが仕事なんてさ、やっぱり夢があるよね。
「まーちゃん! パパりん感動したよー!
凄いよ、逆向きなのに完璧じゃないか。ビックリだよ!! 」
「大げさだなー、パパりんが知らなかっただけだよ。
僕と遊んでくれなかったから〜
パパりんだって、僕らの前で踊ったこと一度も無かったじゃない。
ずるいよ〜 」
ステップ踏んで、バックに流れてる曲に合わせて軽く踊ると、パパりんも隣で踊る、
ダンスバトルみたいで楽しい。
「まーちゃん、ダンス教室だけは続けたもんね。
小さい頃から、身体で表現するのが好きだったよね。」
「だから〜、毎日基礎トレだけは続けたじゃない。」
パンパンパンパンッ!
サチ先生が、手を叩く。
僕らは我に返って先生に視線を向けて踊りをやめた。
「マリンさん? ダンス歴は? 」
「えーっと、5才からやってます〜 」
「なるほどね。
ハルさん、息子さんの予定は無いの? 」
急に呼ばれて、マネージャーのハルさんがシャンとした。
「あーー、実は、うちとは契約まだです。名刺渡しただけで。」
「そう、デビューさせるなら、社長に契約急ぎなさいって言っといて。」
「「 えーーーーっ!! 」」
僕とパパりんがそろって顔を見合わせ、声を上げた。
「ダメダメダメーーーー!! まーちゃんは駄目だよ! 」
「何言ってんの、これ、天性でしょ。あんた相変わらず諦め悪いわね。
何? 息子と舞台に立つっての、夢には無いの? 」
「ない。」
「即答するな、バーカ。
息子の進路だ、息子に聞くんだよ、あんたの意見じゃ無い、息子の人生でしょうが。」
「うーーーーーーー」
「どうなの? 息子。
あなたアイドルになりたくない? 」
うーーーーーん、
アイドルか〜
「ちょっと、 違うかな? 」
「それだけ歌って踊れるのに? 」
「うん、僕は色んな服を着たいから、モデルになりたいと思うんだ。
それに、彼と別れたくないし、彼と一緒にいたいもん。」
サチ先生が、ちょっと目を見開いてイヤーな顔したパパりんを見る。
首を傾げ、考えながらペロリと唇を舐めた。
「ふう〜〜ん。わかったわ。」
えっ? なにが? わかったの?
「駄目だよ、サチ。この子は18だけど、まだ高2なんだ。
それに、モデルには背が低いだろう?
僕もあのんも背が高いのに、何故か、この子はなかなか背が伸びないんだよ。」
そう、だから僕はいつまでも子供扱いなんだと思う。
ニョキニョキの2人に挟まれて、僕はいつまでも白雪姫の小人の気分。
「あら、高校生モデルなんて普通にいるわ。背が低い子もね。
この子、いいわ。最近は承認欲求が強い子が多いの。
目立ちたい、注目を浴びたい。じゃなくて、純粋に色んな服着たーいって、可愛いじゃない。
それに、あなたの息子ってだけで話題性があるわ。」
僕は、サチの提案に飛びついていいのだろうか。
こんなにすんなり、モデルへの最短ルートが開けてしまった。
ただ、パパりんの息子ってだけで。
なんだか、ムカムカする。
それは、僕という存在を無視したやり方だ。
僕は、僕だから必要とされたい。
「先生、僕、そう言うの嫌いなんだ。」
「あら、どうして? あなたモデルになりたいんでしょ? いいじゃない。」
「だから、僕は僕の力で…… ! 」
先生が、手で僕の言葉を遮った。
そして、何か途方に暮れてるパパりんを指さす。
「彼、どこに行っても週末はレッスンに来たわ。奥さんと子供は放ってね。
週末よ? みんな家族サービスにファミリーでショッピングに行ったり、食事を楽しむときだわ。
なのに、こいつは自分のことしか考えてないじゃない。
ひどい親、呆れるわ。
こんな親の七光りなんていらない? チッチッ、それは甘いわ。
モデルなんてね、なりたい人間は千万いるわ。でも、なれるのは一握り。
そしてあなた、どんなモデルでもいいわけじゃないんでしょ?
あなたが着たい服は何? 日常のバーゲンのTシャツ?
違うでしょ? 素敵なブランドなんでしょ? だったらなんでも使いなさいよ。
親なんて利用してなんぼよ。いい仕事が来たなら、爪立ててガッツリ引き寄せるのよ。
こんな親なんて追い抜いて、そう言えばミカエルってあなたの親でしたねって言わせるのよ。
どう? 」
サチが、甘さを捨てた大人の世界をぶつけてくる。
僕は、圧倒されて言葉が出なかった。
そんな獣みたいな考えは僕にはなかった。
きっと、考えがまだ子供なんだ。甘かったとしか言えない。
わかってる。僕にはガツガツした所がない。
でも、苦労を知らないけど世の中には思い通りにならない所があるって言う、苦いものは知っている、そんな中途半端なものはわかってる。
僕は、何故モデルになりたいのか、そうか、理由がまだ、フワフワしているんだ。
だから圧倒されちゃう。
パパりんもママも、僕を見ているのか自信が無かった。
ここにいるんだって、ただそれを……
そうか、
そうか!
僕は顔を上げると、サチにニッコリ笑った。
「サチ、僕にとってあいつはね、利用とかする価値なんて最初から無いんだよ。
だって、あれはただの、僕のパパりんなんだもん。
それにサチは大きな勘違いしてるよ。
承認欲求がないなんて、ウソ、 大ウソだよ。
それが無けりゃ、それが大きければ大きいほど、モデルっているのは輝くんだ。
見て、 見て! 私を見て! 見て! 見せつける!
僕の存在を、見せつける! そんなモデルにならなきゃ意味が無い! 」
サチの顔が、一変した。
パッと輝いて、僕を見て、そして笑った。
「くくっ、あはははははははは! いいわね! やっぱりあなた、天性だわ!
あの、川上あのんの息子だもの、それでこそよ。
素敵だわ! 」
サチが、僕の身体をハグしてバンッと肩を叩いた。
「サチ〜 、どうすんの? 」
「うん、いいわ。中性的でどちらの服も似合いそう。
まあ、とにかく契約しなきゃ、ね? 」
ねって言われても〜
「だってさ、どうする? まーちゃん。」
んーーー、ちょっと、考えたい。
僕は、パパりんのデビューに華を添えるのはいいけど。
ぶら下がって、それでズルズル歌手になるのはちょっと違う。
「少し考えます。
でも、レッスンは受けさせて下さい。」
「オッケー、私、きびしいわよ? 」
「了解です。」
グッと親指立てて、その日からパパりんと2人でスタジオに通うことになった。
僕は基礎からもう一度。
夜に社長さんから連絡来たけど、考えさせてって言ってる。
悩ましい〜、僕の人生、山と谷がすっごい。
クラスじゃシカトの爪弾きなのに、デビュー??
想像出来ない。しっくりこない。
僕が高校でシカトされたって、それ嫌われたからでしょ?
僕が歌って踊って成功するわけないじゃん。
はあ〜〜
雅史とだって、やっと上手く行き始めたのに〜〜
わかれたくなーい!




