38、彼氏(仮)と親友、バチバチになる
翌日、
しいちゃんと早速、ランチデートした。
彼女は合宿先で、メイクをいじられて虐められてたらしくて、うっぷんがたまってたの全部吐き出してきた。
ああ、そうか、そうだよなー
しいちゃんは強い女だから、そう言う偏見には負けたこともないんだって思い込んでた。
普通の女の子なんだよね、言葉は強くても、心は繊細。みんな同じだよね。
勉強に集中したいのに、それに気を取られて困ってたって。
なのに、塾の人が何も対策してくれなくて参ったって。うんうん、わかるよ、わかる。
いじめやってた子を帰らせるとか、ちゃんと管理してくれなきゃ、何の為の合宿かわかんないよね。
「それ、おかしいよ。
しいちゃんが1人我慢するなんておかしいよ。
なんで塾の人何もしてくれないんだよ。」
僕が怒ると、しいちゃんはとたんに余裕が出てきて塾の人を庇い出す。
ほんと、優しいんだから。
「んー、きっと塾でこう言うこと初めてだったのかなあって。
ギャルメイクしてるの、あたしだけだし。1人目立ってんだよなあ。」
「んんーーーー! もうっ! そう言うの腹立つー! 」
一緒に怒ってると、しいちゃんの顔がどんどん明るくなる。
声がいつものしいちゃんに戻って行く。
ああ、1日でも早く誘って良かった!
こう言うの、あれ?様子が少しおかしいな?と思ったら、後回しにしちゃいけないよね。
一緒に怒るの大事。
「なあなあ、マリンの彼氏、紹介しろよ。
日曜だから来るだろ? 」
「どうかなあ、LINE、最近既読つくの遅いんだよね。」
「えー、信じらんない、瞬で既読付けろよなー、俺が怒りのパンチ入れてやるわ。」
「あははは! やめてよー アレ?! 」
とにかく、すぐにファミレスに来てってライン入れたら、ビックリするほど瞬で既読付いた。
面倒臭いって返事来たけど、あえて返事しない。
遠くないから、マッツーで来いよ〜、5分だろ〜
ピコン!
日曜なので、家でだらだら、ベッドに寝っ転がってBeエンジェの音楽聴いていた雅史は、面倒くさそうにスマホ見た。
『 一番最初にデートしたファミレスにいるの。来て〜 ね♡ 』
「あーーー、 どうしよかな。」
確かに、昼飯はまだ食ってないし。
でもこいつ、どう見ても1人じゃないだろ。俺を彼でーすって、見せびらかすつもりか〜
しかし、あいつが友達って呼んだの1人だけだよな……
なんだったっけ? ギャル仲間の女の子?
…… どんな子だろう
めんどくさって返したけど、返事がない。
既読なのに、わざと返事してこないな。
おっさんを試しやがって、ガキ。
起き上がると、スェット脱いでベッドに放り、はたと何着ていこうか悩む。
最近Gパン履かないんだよなー、アレが一番年齢不詳になるのに。
チノパンはどうかすると若作りのおっさんに見えるし、そうか、やっぱ俺はアレか。
と言うわけで、サラリーマンの制服、スーツのズボン履く。
シャツに…… ネクタイはいらねえな。
姿見見て、ボサボサの頭に手ぐしで整え、ガサガサの肌に年齢感じて手近にニベア塗った。
しかし、なんか生活に疲れたおっさん臭が漂ってる。
これ、3点セットだったよな。
暑いとか言ってらんねえ、マリンはオシャレだ。
ベスト探してボタン留める。
お? うん、いいんじゃね?
「よし! 」
マッツーでファミレス行って、席を見回す。
今日は日曜なので、ランチ時は流石に人が多い。
窓際の、初めてマリンとここに来たときの席に目が行くと、やっぱりそこにいた。
今日はミニスカートにスパッツか。
よしよし、へそも出してないな。
歩き出すと気がついて手を上げる。
窓からの輝きが天使のような微笑みとツヤツヤの髪に輪を作って反射して、ま、まぶしい!
マジで天使か、
すげえ、やっぱキラキラしてる。
なんだろ、このオーラ。
「雅史さん、ここだよ! きゃー、ベストスーツ、カッコいい! 」
「お、おう。」
ポッと頬を赤らめるその顔につられて、俺まで顔に火が付いた。
向かいの女の子が、不機嫌そうに顔だけ上を見る。
気まずい感じで目を合わせると、チッと舌打った。何だこのガキ
「ほら、しいちゃん! 僕の彼氏の雅史でーす! 」
グイと腕を引いて、隣に座らせると、腕組んでベッタリくっついてくる。
は、は、は、あああああ、やめてえええ、はずかしい
「ふう〜〜〜〜〜ん、」
足下モゾモゾして靴脱ぐと、俺のすねを思い切り蹴ってきた。
ドカッドカッドカッ! 3回も!
「あたしい〜、マリンの親友のしいちゃんで〜す。よろ〜 」
この野郎、いい根性してるじゃねえか。
顔をひくつかせながら蹴り返そうかと思ったが、大人なのでやめた。
「しいちゃんさん、俺の足蹴るのやめてくれませんかね? 」
「やっだ〜〜〜! あたしい〜、そんなことぉ〜、してませんけどぉ〜
マリン、こいつがあたしいじめるぅ〜 」
「こいつじゃない、名前言えクソガキ。」
「命令口調、ヤッバー 、つかクソガキじゃねえ、しい子って言え。」
ギリギリにらみ合う横でマリンはニコニコして、嬉しそうにジュースチューッと飲む。
「2人とも、相性バッチリじゃん! 僕、2人が仲良くって嬉しい! 」
「「 は〜〜?? 」」
なんで天然なんだよ、マリン。
でも、意外と大人びて喋りやすい子だ。
タメ口でも気にならない親しみやすさがある。
マリンはだから、この子には気を許しているんだろうな。
俺がスパゲティ頼んでると、やはりパフェをたかられる。
どうせこいつらの払いは俺が払うことになるんだろうなと、溜息交じりにパフェ2つ頼む。
ああ、俺って都合のいいATMになっちまってるなあ。
「で〜? 雅史はどんな仕事してんだよ〜 」
「お前クラブは何してんの? 」
「俺は帰宅部で塾だ。話そらすな、お前の仕事〜 」
料理が来て食べていると、パフェ突きながら、しい子が聞いてくる。
この子たちと話していると、まるで自分も高校生に戻った気持ちになる。
そんな自分が面白くて、ククッと笑った。




