35、メグミさんに会いに行く
「ん〜、んんん〜♪ 」
着替えて髪整えて、ヨシ! できた!
クルリと回ってポーズ作り、自分を指さす。
「キミを! 救いに来たんだ! 」
はあ〜、くっさ。
実は、このパパりんのデビュー曲、歌もフリも完コピ出来る。
何でって? だって、ママと一緒にカラオケで踊ってたもん。
今はしいちゃんと一緒にカラオケ行ったときの定番芸。
しいちゃんの受けが良いのでついやっちゃう。
僕が踊るとママが喜ぶのが嬉しくて、引っ越す先にダンス教室があったら必ず通った。
「行こ行こ! 先に行かないと、きっと待っててなんかくれないし。」
土曜日、雅史と表通りのコンビニ前で待ち合わせ。
今日はね、メグミさんの美容室までドライブだから、気合い入れてホットパンツにレースのニーソに、おへそ出してチューブトップ。
って、パパりんにチューブトップ着たら上に白パーカー着なさいって言われてるんだった。
あ、そっか、雅史にもヘソ出しノーだった。
うーん、まあ、パーカーで隠せばいいや。
ちぇっだよ、まったく。
まあ、日が高いし、ここだけ日焼けしても確かに変だよね。
颯爽と、パーカー翻して。
赤い車見えたら、ヘイ雅史―って停めるの。
浴衣持って、メグミさんの着付けのアドバイス、楽しみ。
お婆ちゃんに習って着付けには問題ないんだけど、これがどうしても男っぽい。
貫禄出すためとか言うけど、僕には貫禄いりませーん。
家を出てコンビニの前で待ってると、すっぴんのしいちゃんとバッタリ会った。
「あれ? しいちゃん合宿は? 」
「あれなー、前期面白く無かったから、後期キャンセルした。
もう少しきびしいとこがいいからさ、塾変えようかなーって思ってるんよ。」
「今から〜?? 遅いだろ、もう。しいちゃん、自分にきびしすぎー!」
「だろ〜? ヒマだろ、たまりにたまった愚痴聞いてくれ。ドリバ付き合えよ。」
「ごめんね、今から彼氏とお姉さんとこに行くんだ。」
「彼氏? あー、まだ付き合ってるんだ。何だよ、1人だけ綺麗になりやがってよお〜 」
「うん、あっ! 赤い車来た、彼かな?
あとで連絡するよ。ドリバ行こうぜ! 愚痴聞いてあげるよ。」
僕が赤い車に身を乗り出すと、ウインカーが付いて寄せてくる。
ちょっと手前で止まって、雅史が手を上げた。
「やっぱり彼だ、ごめんね。」
「幸せそうじゃん、じゃあ花火大会もダメか。 」
「うん、彼と一緒に行く約束してるの。何か埋め合わせするから、ごめんね〜 」
「仕方ねえ、マリンの幸せ優先してやらあ。
今度スカしたら絶交だぜ! 」
「わかった、必ずしいちゃんと百合デートするから。じゃ、あとでライン入れるね! 」
「おう! 」
しいちゃんが、ニヤリと笑って手を振ってくれた。
僕は車に乗って、しいちゃんに手を振る。
久しぶりに会ったしいちゃんは、化粧もせずに少し疲れた顔をしていた。
なんか、メイクしてない顔なんて初めて見る。
なんかあったのかな?
きっと、ストレスでいっぱい喋りたいことたまってるんだろうと思う。
明日ランチしようってライン入れよう。
2年生の夏休みは、みんな受験の準備で結構勉強してる。
僕はのんびりしてる方だと思う。
まあ、全然勉強してないわけじゃ無い。
パパりんも、お勉強してるの? って言いながら、あまりうるさく言わないし。
大学で、何をしたいかが定まらないから目標が持てない。
僕は一年遅れているから、失敗出来ないんだよなあ。
3者面談でも、焦る様子もない僕とパパりんに、早く進路を決めないとって先生はけしかけてたし。
でも、パパりんは息子を信用していますからって言ってくれた。
僕はちゃんとそれに応えたいけど、今のところ考え中。
大学って、行かないと駄目なのかなあって思う。
「友達いないって言ってたけど、いるじゃないか。彼女? 」
ほらすぐそう言う。そう言うとこ、おっさんだよね。
「親友だよ、すぐ彼女とか言わない。
しいちゃんはギャル友親友だよ。ほら、僕会った頃ギャルメイクしてたでしょ?」
「あー、あれか。あれは〜、無しだな。」
「え〜〜〜〜〜!! アリだよ、可愛いじゃん。僕が似合わなかったってだけだよ。」
「ナシナシナシ〜! 」
「アリアリアリアリ!! 」
「まあ、人それぞれだけど、俺はナチュラル派だな〜 」
「そうそう、人それぞれの個性だよ。
しいちゃんは、可愛いと思って話しかけてそれからだよ。付き合い始めたの。
凄くいい奴で、僕より目標しっかりしてる。凄い女の子で尊敬してるんだ。」
「ふうん、尊敬か〜 」
ふとため息付くと、流れる景色見ながらぼやいた。
「大学って、行かなきゃ駄目なのかなあ。」
「落ちたら専門学校に行くって言ってたじゃないか。
洋服が好きなんだろ? 」
「そうなんだけどさ、僕は洋服の何が好きかというと、作りたいわけじゃないし、デザインをしたいわけじゃない。
歴史は好きだけど…… それじゃ仕事は限られてくる。
パパりんは、僕に普通の人生送って欲しいみたいだけど、その普通に振り回されたくない。
僕はね、僕は、きっと、洋服を楽しむことが好きなんだよ。」
「ふ〜ん…… 、楽しむねえ……
なんか、そうだなあ、お父さんには怒られそうだけど。
マリンはきっと、若いうちはモデルとかした方が良さそうな気がする。
まあ、勝手な言い草だけど、本当に仕事があるのかわからないけどね。
1度、お父さんの所属する事務所に相談したらどう? 」
「あー、そっか…… 事務所か〜、あそこモデルもいるのかなあ。
そう言えば、名刺もらってたんだ。」
パパりんに秘密で社長さんに相談してみようか。
大学か、専門学校か、何科に行けばいいのかとか、アドバイス貰えるかもしれない。
「うん、 うん! そうする! ありがとう、雅史さん! 」
信号が青になって、ギア握る手を上からギュッと握る。
「わあっ! 」
雅史が真っ赤な顔でパッと手を引っ込めた拍子に、ガクンとエンストした。
「なんで手を握るんだよ! ビックリするだろ、運転中だぞ!
追突されたらどうすんだよ! 俺のマッツーがっ!
運転中のおさわり禁止! 」
「ごめん、ごめん、でもさ、そろそろ手くらい慣れてよ。ね〜」
「慣れてたまるか。」
後ろ見ると1台車いる。ごめんねーって、心で手を合わせた。
慌ててエンジンかけて、しゅっぱーつ。
で、それはいいとして、僕は許さないんだからね。
「ねえ、なんで最近さ〜、すぐ既読付かないの? 」
「えっ、それは〜…… 忙しいんだ。大人だから。」
「もー!またそう言って誤魔化すーー!! 」
「まあ、色々付き合いがあるんだ。大人になるとな。」
「もーー、」
プンプン! 僕の周りは秘密が多すぎ!




