32、僕は心が揺れ動く
だいたいさ、パパりんは僕のこと守りたいのか、秘密にしたいのかわかんなくなるよ。
「いいじゃん、別に。バレたって。
それにさっきから聞いてるとさ、パパりんめっちゃ偉そう、上から目線は一番嫌われるんだよ。
ペコペコしてろって言うんじゃ無くてさ、ちゃんと周りを大事にって、パパりんが僕に教えたんじゃない。
新人のくせに、人に迷惑かけるんじゃないよ。僕に過保護すぎ!
大丈夫だって、ちゃんと卒業するから。受験もちゃんといくつか受けて、受かったとこに行く。」
社長さんが、パンッと手を叩いて声を上げた。
「まーちゃん! よく言ってくれたわ。」
マネさんと社長さんが、うるうるした目で見てる。
うん、困るよね、パパりんのわがままには。
「でも、でもね、パパりんは心配なんだよ〜 受験だって…… 」
「心配、ノーサンキュー。僕の人生だし、あと一年だし。
ほら、そんな話あまり聞かないじゃん。パパりんが思うほどバレても騒ぎにならないよ。
僕は知らない振りする。」
パパりんは神妙な顔をして、大きく息を吐くと眼鏡外して浮かんだ涙を拭いた。
え〜、泣くなよ、何ですぐ泣くんだよぉ
「なんで泣くの? 」
「だって、まーちゃんがこんなに立派に育ったんだって、ううっ、感動しちゃったんだよ。」
ニッコリ笑う顔が、うっっ、まぶしい!
「いいから眼鏡してよ、無駄に顔だけいいのが鬱陶しいんだから。」
「うん、ごめんね。くすん。」
「ねえ社長さん、僕も撮影見に行っていい? 」
「あー、そうねえ、パパの仕事見学かー 」
「ダメだよ、また変な奴に声かけられたらどうするの。」
「もう、過保護だなあ。」
どっちかというと〜、声かけられるの待ってるんだけど〜
パパりんはほんと普通にこだわってるなー
「そうね、まーちゃんはパパそっくりだから、防衛戦張っとかないと。
もし声をかけられたら、もう事務所決まってるって言って頂戴。
しつこかったら、これ見せて。」
そう言って、社長さんが名刺をくれた。
“ プロダクション・メイクフェアリー
代表 春日井 秋 “
社長さん、秋さんって言うんだ。
「はい、じゃああたしの名刺もあげとくわ。
Be.エンジェのマネージャー吉井ハルって言います。よろしくね。
困ったことあったら、相談して。
まーちゃんはしっかりしてるから大丈夫と思うけど、問題起こさないようにね。」
秋さんとハルさんか〜、夏と冬はどうした。
「よろしく、僕はパパりんと同じ字を書いて、マリンって読みます。
パパりんがカイで、僕はマリン。生活では注意するようにします。
あっ、えーと、僕、社会人の彼がいるんだけど、オッケー? 」
マネさんと、社長さんが顔を見合わせた。
やっぱりマズいっぽい。
パパりん、何も言ってくれない、会社の上司ですって言ってよ。
「清い関係だと誰しも思うような関係ならいいのだけれど。
まだ高2でしょう? 頻繁に会うのは遠慮してとしか言えないわ。
とにかく、マスコミには注意して、外に出たら写真撮られると常に思って頂戴。」
ちょっとがっかり。
「じゃあ、花火大会の時にデートするから伝えます。
お休みの日の、昼間に会いましょって。」
「え〜〜〜〜〜 」
パパりんが、渋うい顔で嫌そうに言った。
わかりました、じゃあ別れます。なんて言うかよ!
誰が親に振り回されるか! 僕は僕の道を行くぜ!
ってわけで、結局、撮影は極秘だから見学ダメになって、僕は家の中を片付け始めた。
いつでも引っ越し出来るようにって感じかな。
不要な物処分する感じ。
でもさ、僕には不要な物って良くわかんないな。
都心の、パパりんが昔住んでたマンションには、生活出来るだけ物があるから、今度そちらに泊まりに行こうってパパりんが言ったけど、その存在さえ今まで秘密にされてたことが、なんか嫌だ。
他人の家みたいで嫌い。
僕も自由に使っていいって、そんな事、もっと早く教えて欲しかった。
学校でも村八分で、家でまで秘密の外側に放り出されてる感じする。
どんな豪華なマンションでも、何か僕は行きたくない。
生活レベルの違いが見せつけられるようでキモい。
そんなにアイドルは偉いのかよ。
いや、きっと儲かるんだな。
僕はパパりんのコンサートとか知らないし、生で歌ってるの、随分前にカラオケでテキトーに人の歌を歌ってるのしか見たこと無い。
あれでほんとにやっていけるのか、大丈夫なのかなあって、何か心配だ。
家族の前くらい、素顔をさらけ出しても良くない?
何かパパりんには裏切られた。
あーあ、あーあ、
新学期から、学校行くのが何か面倒臭い。
あー、もう学校辞めちゃおっかな。
でも、しいちゃんと別れるのは寂しいし。
考えてみれば、ちゃんとした友達って、しいちゃんくらいしかいないんだし、大事にしたい。
ダンススクール、再開しようかな。
勉強しなきゃと思ってやめたけど、思い通りにはなかなか行かないね。
余程、身体動かしてる方が気持ちいい。
親が芸能人って、どんな感じなんだろ。
僕は家で待ってるだけなんだけど、パパりんが遠くなる。
やっとなんか僕のこと、気にかけてくれるようになったのに。
くすん、
なんか寂しい。
LINE見ると、昼に送ったメッセージ、まだ既読が付いてない。
雅史のバカ。
またあの女のとこ行ってるんだ。
僕とどっちにするんだよ、ねえ、ハッキリしてよ。
もしかして、ほんとに付き合ってないって思ってんの?
そんなの、寂しい。あのドライブ、楽しかったじゃない。
行こうよ、花火。
僕は、もう! マジで諦めないんだから! ね?!




