31、パパりんのデビューの話がリアルになる
翌日、僕らは事務所の人が迎えに来て、家に送って貰った。
来たのは社長さんとマネージャーさんで、マネージャーはベストスーツのカッコいいおばさんだ。
パパりんにカッコいいねって言ったら、何着るか考えなくていいから制服みたいな物だよ、だって。
事務所の社長さんは僕も知ってる。
時々どうしてるか、様子見に来てたおばさんだ。
うちに来るときは、いつも軽の小さい車でお婆ちゃんみたいな白髪交じりのカツラで来てたから、何かビックリする。
実物はパリッとしたおばさんで、同一人物なのか僕はしばらく頭が混乱した。
「家はどうするの? ここじゃセキュリティが甘いわ。
前のマンションに引っ越すんでしょう? そのためにリフォームしたんだし。」
「話し合って、しばらくここに住むことにしてます。
まーちゃんの高校が遠くなるので、そちらの方が心配なので。」
「あー、そうね、どうしたらいいかしら。
とりあえず、セキュリティ入れましょう。
最近は、以前よりマスコミもプライバシーに踏み込むことはしてこないわ。
違法行為が見られたら、すぐに法的に対処するし。
ただ、変質者が怖いのよ、まーちゃん一人になるし。
ここは道路と近すぎるわ、なんで庭もない家買ったのよ。」
「庭は手入れに時間取られるので、その時間がもったいない。」
「あー、そうね。とりあえず、マンションに引っ越す検討はしてて頂戴。
マンションに引っ越して登校に問題あるなら、学生寮とか調べるわ。」
バッと、パパりんが僕を横から抱きしめた。
だよなー、パパりんはまだ子離れ出来てないもん。
「まーちゃんと離れて暮らすくらいなら、デビューの話は無しにする。」
「またそんなこと言って! ガキか! 」
「ガキでいい! 僕はこの子がいるから頑張れるんだ。」
「あーもう、わかったわよ。こっちのマンション探すから! 」
「いいよ、ここで暮らすし。この子にしても、ママの思い出残ってるだろうから。」
ほうっと息ついて、僕の頭をなでなでする。
僕、もう18なんだけどなー
「まあ、おっさんアイドルが昔ほど流行るとは思わないから大丈夫だよ。」
パパりんがそう言うと、社長さんが大きく首を振り、ニイッと笑った。
「そう言うとこよね。ちっとも変わらないんだから。
老若男女こだわらず、ファンを愛せる男が愛されないわけないでしょ?
昔からの熱狂的なファンは一定数いるからね。
トップスピードが大事だから、CMはデビュー前からゴールデンで流すわ。」
「テレビの露出は歌番組メインね。
あと、トークで4本受けたわ。バラエティはまだって、全部断った。」
「うん、バラエティは今のところ出る気がしないね。
昔みたいに可愛いわけじゃないし。」
パパりんが、ため息付いてソファーの肘掛けに頬杖付く。
きっとストレス半端ないんだろうなー
でも、何か面白そうな世界だなーって思う。
「CM撮りは予定通り先に済ませるから、スポンサー分も合わせて5本ね。
1本はロケ。2本ブルーバックで撮ってCG。残り2本はスタジオ撮りね。」
「え?? もう来てるの? スポンサーの話。早すぎ! 」
「来てるわよ、当たり前じゃない。みんな使いたくてうずうずしてるのよ。
水面下で計画はもう動いてるの。
今更無しなんて無理だし、覚悟決めてよね。
しばらく帰りも遅くなるし、ロケもあるし。
まーちゃんはおばあちゃんとこに行ったほうがいいと思うけど、どうする? 」
「いえ、僕は大丈夫です。ご飯はコンビニで買えばいいし。
会社どうすんの? 」
「出張扱い。今の会社は事務所の親会社だから、バレないようにしてもらってるの。
8月いっぱいで辞めて、9月に転勤の名目で移籍になるんだよ。」
「まあ、バレてもしょうがないよね。」
「うん、まーちゃんが高校生の間はね、静かな高校生活送って欲しいんだよ。
だから、四季島って名前も漏らしたくないんだけど。
バレたら仕方ないね。」
「うん、仕方ないよ。
まあ、昔の名前で出る、すでにおっさんだし、そんな話題にならないんでしょ?
大丈夫だよ。」
「社長、あの週刊誌押さえられた?
なんだったっけ? 瞬館社だっけ。」
「一応警告はしたわよ。一般人なのでーって。
でも、報道の自由だって、今週の記事にするって息巻いてるらしいのよ。
まーちゃんの事、学校探ってるらしいわ。興味あるのわかるんだけどね。」
あー、やっぱり。僕はそんなので注目浴びたくないなあ。
「記事で出たら、今後この出版社に関連する雑誌、一切記事は断るから。」
「え〜、全部? でもあの会社、親がデイバードテレビよ?
親会社がなんて言うか…… 」
「関係ないよ、僕は家族を守るのを最優先する。
ガブと一緒にいたことで動きがあると踏んだんだろうけど、僕ならともかく、まーちゃんのこと探り入れてるの、今の僕には許せない。
来年は受験なんだよ? 僕は最悪の時期にデビュー決めてしまって、まーちゃんに申し訳ないんだ。」
「でもね、困るわよ、叩かれるわ。相手はマスコミよ? 」
「騒ぎにするなら尚更だよ。僕は会社員でいいんだ。
このデビューはバンドのみんなのためだけど、子供が高校に通えなくなったらそんなの親として許せないよ。」
パパりん、僕には普通に生きて欲しいから。それわかるけど、重―い!
それに社長さんよりパパりんが優位に立ってるのが見える。
なんかやな感じぃ、歌手のパパりんは、夢を与える仕事なのにさ。
僕はたまらず口を開いた。




