30、ババ抜きしよっ!
脱衣場で天使の残り香を胸いっぱいに吸って、風呂場のぞいたら、確かに湯が抜いてあった。
なんて防御力だ。
天使のだしを飲もうかと思ったのに、阻止されてしまった。
服を脱ぎ、風呂場に入ると床を見る。
天使の身体を伝って落ちた湯が、水が、この水滴がっ!
ハアハアハア、駄目だ、こんな事、駄目だ。
と頭に巡る言葉を蹴って、床に寝転がる。
天使のだしを少しでも感じたい。
床に体をこすりつけ、うっとりとしていると、排水口にはっとした。
まさか、この中に抜けたものが入っているのでは?
まさか! 天使の○毛が!
プルプルしながら排水口見たら、 洗ってあった。
ガッカリ
なんて鉄壁の防御なんだよ!
つか、俺の方が恥ずかしいいい!! きっといっぱい何かの毛がたまってた。
やだ、さっき入ったとき、もう一度見ればよかった。
そう、実は、すでに入浴済みだ。
だって! 天使の入浴した後だぞ! 入りたいじゃないか!
なので、床でだしをつけたら上がろう。
ガタッ
ハッとドアを見たら、マリルー父がドアに張り付いていた。
「あなた、やっぱり風呂は済んでるんでしょう? 」
「ち、ちがいますよ! ここ洗ってたっけ?って見てるだけです!
何してるんですか! へ、変態ですか?! 」
声が裏返るんですけど!
「全然シャワー浴びてないじゃないですか? 」
ジャーーーー!
バシャバシャ、ほら、ほら!
「風呂のぞかないでくださいよ! やだなあ。」
ううう、俺は血の涙を流しながら、すべてを洗い流すしかなかった。
つらああぁぁぃぃぃぃ
「まーさーしい、なんかゲームしよー 」
風呂から上がってダイニングでパタパタしてると、マリルーが甘えてくる。
おおおおお、風呂上がりのいい匂いする。
くんくんくん、俺、この香りを記憶に刻み付けろ。
「ゲームったって、トランプくらいしかないぞ。
俺基本スマホだから。」
「いいよ、ババ抜きしよー 」
居間のソファーの背もたれに、マリルーが身を乗り出してくる。
彼に着せたダボダボのロングTシャツの襟ぐりから、ほんのりピンクに染まったぺたんこの胸とおなかが見える。
エロい
俺の理性よ、今夜一晩だ。
自室にトランプ取りに行って、マリルーの隣に座る。
ふうう、俺は冷静だ。
「四季島君もやりますか? 」
「ヤリますかだって。やだ、エッチ」
やめてえええええ、ミカエル様の前で、それはやめて。
俺の顔はきっと燃え上がってる。
ゲンコツしようとしたら、父にエヘンエヘン咳払いされたので、マリルーのほっぺを手で包み、ムニュムニュした。
「トランプですから! トランプ! 」
父を見たら、こっちは顔を手で覆って泣いてる。
「まーちゃん、パパりんにエッチなこといっちゃダメ。パパりんなんだから。」
「へっ、誰が近親相姦とかするかよ、バーカ。」
「だから〜、パパりんにエッチ語禁止〜! 」
「わかった、わかったよぉ〜
は〜い、パパりん、ババ〜 」
マリルーが、一枚ピョンと上に出してくる。
横から見たら、ババだった。
マジクソ野郎で、父はそれを素直に取ってしまった。
「え? 何? お前それズルだろ? 」
マリルーが、ビックリした顔でこっち見る。
「え? だって、うちのトランプは昔からこうだよ? 」
「じゃあ、2人でやっても面白く無いじゃん。」
じーっと、マリルーが父を見る。
「だって、ママいなくなってからパパりんとトランプなんてしないもん。」
「えっ、そうだっけ? パパりん、ちゃんと遊んであげたよね?
ほら、幼稚園の遠足とか、動物園とか。」
「ウッソばっか。パパりんは普段、お片付け済んだら筋トレだし、土日はいないし全然遊んでくれなかったもん。
ママいなくなって、パパりんはきっと僕のこと嫌いになったんだーって思ったもん。」
はあああああああああああ!
マリルー父が、見る間に顔色が変わった。
いまだにあれだけ歌って踊れるんだから、恐らく相当のレッスンを積んでいる。
再デビューは元々視野にあったのか、それともただの趣味なのか。
レッスンやってるのなんて子供は知らないんだから、ほとんどその間ほっといたんだろう。
それじゃあ子供に嫌われても仕方ないよ、ミカエルさん。
父は空気不足の魚みたいにパクパクして、トランプバサッと落とした。
「ごっ …… ごめんなさい。」
プイッとして、マリルーがそっぽ向いてる。
「一枚もらいますよ。」
ご愁傷様、俺が父のカードを一枚拾ってひっくり返す。
ババじゃねーーーーかよ!
何だよ、いったいこの父はっ! 強運の持ち主かよ!
ギリギリ歯を剥いてマリルーにカード差し出す。
「ちっ、馬鹿だね、ババあるね? 」
マリルーが、見極めてパッとハートのエースを取った。
く、く、くそ、
何だこの親子は……
クソ強運強えええええええ!!
結局、ババは最後まで俺から不動でババ抜き負けた。
「キャーー! 勝ったー!! 勝ったからあ、一緒に寝よ! 」
ノシッとマリルーが俺に抱きついてくる。
が、それを父が許すはず無かった。
「ダメですっ! まーちゃんはパパりんとお休みなさいですね。」
「え〜〜〜〜〜、ちぇっ! じゃあ、またデートしよ! 今度はホテルね! 」
ホ、ホテル?!
はああ、父が鬼のような視線を送る。
鬼でも顔がいい。何だこのオヤジ、ホントにめっちゃ顔がいい。
考えてみれば、元でも推しのアイドル家族が家にいるなんて、俺はもう、すぐ死ぬんじゃないか?
幸せすぎる!
「まーちゃん、明日早朝、家に帰りますから寝ますよ。」
「は〜い、お休み〜、じゃあね、雅史ぃ〜 」
2人は部屋に入ると、布団を横にして2人で寝っ転がった。
寂しい、もっと遊んであげたい。でも可愛い。
居間の冷房つけっぱなしで、中で扇風機回すと涼しいって、兄が泊まりに来るといつもそうしている。
そうっと扇風機セッティングすると、俺も自室に戻った。
この壁の向こうに、天使の親子が寝てると思うと興奮…… いや、そんなこと言ったらファンに殺される。
楽しい、楽しいんだ。そう、くそお、たのしーーー
はあはあはあはあ
ダメだ! 俺の股間が爆発する!
俺はその夜、天使たちと同じ屋根の下で一夜を過ごし、一睡も出来なかった。




