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【BL】四季島親子は無敵すぎる  作者: LLX


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26/30

26、引退したワケ

「で、なんで親子で俺んちに来るんですか。」



と、言うわけで、in ザンジバルマンション。

何でこんな奴のとこに来るんだよ~!

でも、冷房効いてて涼しーーー!

3LDKか〜、リビングダイニングキッチン、意外と広い。

何でこんなにキレイに家具そろえてるのか、やっぱ結婚考えてたんだなーって思える。

真新しいパステルイエローのソファーとガラステーブルが初々しい。

ベージュの幾何学模様のコットンラグは、踏むとひんやりする。

趣味、ヨシッ!



「あなたのせいで、息子が町中で目立つことするはめになりました。

責任取ってください。一晩お邪魔します。」


「はあ? なにそれ。覚えがないんですけど。で、何で俺の家ー 」


そんなことより! ぺちんっ! 優しくガラスのテーブルたたいた。


「あの女誰?! もー! 信じらんない! 」


「は? 女? 」


「イチャイチャして、肩抱いてたじゃん! 

わーーーん! ザンジバルが浮気したーーー! 」


「してない! つか、まだ付き合ってないし! 」


「ザンジバルの薄情者! 好きって言ったじゃん! 」


「言ってない! な、な、何言うんだ、お父さんの前で。」


「私はまだ、お父さんじゃありません! 」


「わあああ、ごめんなさい! って言うか、まだって何だよ!」


「息子は嫁にやらん! 」


「息子は嫁に行けないし! 」


「僕、雅史のお嫁さんになるもん! 」


ハアハアハア、みんな顔つきあわせて息切らす。

ハアーッと大きく深呼吸して座った。


「まあ、それはあとで。あなたの家が一番近かったので来たんです。

空いた部屋もありそうじゃ無いですか。結婚まで考えた間取りですね。

ダイニングテーブルも程よい広さで、居間も落ち着いた色合いだ。

良い部屋です。」


パパりん、部屋チェック早い。


「帰って下さい。」


「今日は無理です。

事務所には電話しましたので、対応が済むまでお邪魔します。」


「ホントに今夜一晩でしょうね! 客用お布団、一つしか無いですよ! 」


「構いません、息子と寝るので。」


「やーだー、パパりんオヤジ臭いもん! 」


は? なんて事言うんだ、ミカエル様に。


「じゃあ、床で寝ろ、クソガキ。」


「は?! 今なんと?  」


「いえ! 床でお休みになられますか? お坊ちゃま。」


「雅史と寝たい~、チュッ! ん〜、チュッチュッ! 」


キッスやたら飛ばしてくる。

やめろ、お父さんが見てるじゃないか。殺される。


「えーい、駄目です! まーちゃん、自粛して。

まあ、暑いので布団なんかどうでもいいんですが、シャワーお借りします。

着替えが無いのでコンビニで下着とTシャツ買ってきてくれませんか? 」


「あー僕ももう汗でベタベタ、お風呂入りたーい! 」


「あー、じゃあ買ってくるのをメモに書いてください。もう、面倒ですね。」


「ねえねえ、あの女、誰? 肩組んでニッコニコしちゃってさ!

僕ジェラシ~~~!! 」


「女?…… 」


言われて雅史、しばらく考え、ポンと手を叩く。


「ああ、あれ、そんなんじゃ無いから。」


なんか言いにくそうに誤魔化した。


「ウソッぽーーーい!! 

僕、泣きながら雅史探したんだからね! ほんと、マジで泣いたんだから! 」


ええええええええ、俺のために泣きながら〜〜??

マジかよ、まだ付き合ってないのに。天国か。

ダメだ、ここでニヤけちゃダメだ。

雅史、クールに決めろ。


「ふ、カンケーないし! じゃ、買い物行きます。

あっ! その部屋だけ入らないでください。プライベートなので。

絶対入らないでくださいね! 」


「承知しました。ではよろしく。」


「ねえ! 無視すんなー! 」


プンプン! 失礼しちゃうっ!


逃げるように去って行く雅史を玄関まで見送ると、居間からパパりんが手招きした。


「まーちゃん、こっち来て座って。」


パパりんが、険しい顔で隣を指さす。

仕方ないので、すとんと座った。


「なんで追いかけられたか理由、説明するから。」


「いいよ、わかってるから。」


パパりんは、にぶいからわかんないと思ってたんだろう、びっくりした顔する。


「え? え? ママの事? 」


「違うよぉ、パパりんのこと。

むか~し、歌手でちょっと人気あったんだって。

いっちばんいい時にやめちゃったからねって、ママが言ったんだ。」


「え~~~~、ママ~~、そりゃないよ~~~ 

しゃべったんなら教えてよ~ 」


バタッと突っ伏して、しくしくパパりんだけどさ、ママは守ってあげてねって言ったんだ。

まあ、僕は無理って断ったんだけれども。


「わかんない方がおかしいでしょ。

昔の歌番組は禁止だし、ママはパパりんがいない時だけねって、同じ歌手の歌ばっかカラオケで歌うし、パパりんは妙に顔だけはいいし、ママが押し入れにいっぱい貼ってたポスター、どう見てもパパりんだし。

ママの愛読書 “ミカエル様聖典” だし、読んだ後は必ず結婚して良かったってしばらく泣いてたし。

公園で知らないおっさんが話しかけてきたら、すぐ引っ越しだし。」


「ママ、パパりんのファンだったんだよ。とっても熱心な。」


「くっさい歌なのに、ママの好みがわかんないよ。」


「まあ…… 、古い歌だから許してよ。

まあさ、もう忘れられた人だから、昔ほど影響は無いと思うんだ。

だから、明日かえろっか。」


「ねえねえ、なんで辞めたの? 」


「あーーー、だよねえ。」


「後悔した? 」


「してない、最後が最悪だったんだよ。

メンバーの一人が亡くなっちゃってね。

パパりん、びっくりして声が全然出なくなっちゃったんだよ。

ほんのちょっと前に後ろでドンパン叩いてたドラマーがさ、何か調子が悪いって、でも心配するほどじゃないよって、笑って言ってたのに。

ガンであっという間に死んじゃったんだ。

悲しくて、悲しくて、心が追いつかなくて。

ほんとに、ほんとにいいお兄ちゃんだったんだ。」


パパりんが、涙を浮かべて額に手を当て、両手を合わせる。

人が死ぬって大変なことだけど、きっとパパりんにとってバックバンドの人たちは、身体の一部のような物だったんだろう。

まだ人の死を経験してない僕には良くわからないけれど、その痛みは計り知れないほどパパりんを締めつけて、歌手の命とも言える声までも奪ったんだろうと思った。

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