24、僕の進む道はなんだろ?
「真島様、お待たせ致しました、ご案内いたします。」
ホテルの人が来て、個室に案内してくれるらしい。
廊下を進み、エレベーターで上がる。
静かで、ただ浮遊感のあるエレベーターが、まるで雲に上がって行くみたいだ。
スウッとドアが開いたとき、正面に待っていた着物姿の上品なママさんみたいな人が、お待ちしておりましたと頭を下げる。
「ホテルって、すごいね。」
ちょっと感動して前を行くパパりんの腕を引っ張ると、あんまり僕がキョロキョロする物だから、手を繋いで引かれていった。
店に入って個室を案内されると、早速ガブさんが、うなぎ特上3つだって。
僕は思わず、うっひゃーって声出た。
「初特上だよ! 楽しみ~! 」
「え〜、特上食ったことないの? 」
「ないない、パパりんドケチだもん。」
「倹約と言いなさい。ケチじゃ無いし。お家も借家じゃ無いし。
パパりんはちゃんと考えて生活して…… 」
「あーはいはい、うっさい、マジウザい。」
クスクス笑って見ていたガブさんが、ふと切り出した。
「ホントそっくりだねー、親子。
まーちゃんは、モデルやる気ないの? 」
その言葉に、ビックリするほどパパリンがざわめいた。
「ガブッ! なんでそんなこと言うのっ! 」
「あー、だって勿体ないじゃん、こんな綺麗な子。」
バッと立ち上がって、僕の手を握って引っ張る。
「帰るよ、まーちゃん! こんな話聞いちゃ駄目! 」
「え? でも…… 」
僕はこんなにパパりんが怒ったの見たこと無い。
ビックリして固まってしまった。
「あー、ごめんごめん、ウソだから落ち着け。
うなぎ食って帰ろ? な? 」
「二度とうちの子、惑わすこと言うな。」
「オーライ、わかったよ。」
「パパりん、なんか怖い…… 」
「ごめんごめん、驚かせちゃったね。まーちゃん。」
ガブさんが誤るけど、ホントはパパりんが悪いんだぞ。
なんか雰囲気悪くなったけど、うなぎが来て、蓋を開けるとニッコリする。
あー帰らなくて良かった。
「ふわっとして、おいしー」
「ここのうなぎ美味いんだよ~、なあ、パパりん。」
「おごりなら美味いね。」
ブスッとして言い捨てる。可愛くないぞ、お礼言えよパパりん!
「ひでえ、ほんと可愛くないなあ。」
「ねー、」
美味しく食べてると、ガブさんとパパりんは食うの早い。
待ってくれる2人に、僕は肝吸い吸うと思いきって切り出した。
「でも、モデルになると綺麗な服がいろいろ着れるよね。」
「またその話、駄目だよ。早く食べなさい。」
「でもね、僕は洋服関係の仕事したいんだよ、パパりん。」
パパりんが、渋~い顔になる。
「モデルなんて、太れないし肌荒れも出来ない、好きなものも我慢しなきゃならない。
綺麗な身体を維持するの、大変なんだぞ。簡単に考えちゃ駄目。」
「わかってるよ~、別にモデルって言ってないもん。
僕、低身長だし、なれるわけないじゃん。
ガブさん、洋服関係のバイトあるかな? 」
「ああ、夏休みか。知り合いに聞いてもいいけど、保護者がなんて言うかなあ。」
パパりんが、僕の顔見て百面相みたいに表情動かす。
ぷふっと吹き出すのガマンして最後の一切れ食う。
むぐむぐ、超美味かった。
自分の金でこんなの食えるようになりたい。
「いいけど~~、顔出しNG、仕事内容の明示、信用おけるところかどうか。
それから考える。」
「きっつ~、大変だね~、この人の息子やるの。」
「でっしょ? じゃあお願いね? 時期は学校始まってからでもいいよ。
うちの学校、バイトオッケーだから。
お腹いっぱい、ごちそうさま~」
パンッと手を合わせる。
LINE交換して、駅に向かうガブさんと別れて、すっかり夜の町をパパりんと歩く。
「まーちゃん、課長とケンカしたの? 」
「違うよ、パパりん脅したでしょ。
LINEに返事来なくなったんだよ、どうしてくれるの? 」
「え~~~、あのくらいで? こっちが勇気出したんだよ?
そっかー、じゃあ会社で聞いてみるね。」
「お詫びにベルフェのケーキとゼリーを要求する! 」
「わかったよ、買って帰ろう。
でも、今日はカロリーオーバーだから明日食べるんだよ。」
「え~、カロリーオーバーなんて、初めて聞くなー 」
「ママは昔モデルしてたからね、食べに行く度にカロリーの話だったよ。
それほど大変なんだよ。」
は~~、そっか、何の仕事でも大変なんだ。
「モデルになりたいって言ったらどうする? 」
パパりんは、なぜか遠くを見て歩いてる。
立ち止まって、僕を見ると手を伸ばす。
もう手を繋ぐ年じゃ無いけど、やっぱりまた、手を繋いで歩き出した。
「有名な○○さんの息子って、良く見るじゃない。
歌手とかスポーツとか。」
「うん、見るね、特にスポーツなんか。
子供は別人なのに、同じように期待されて大変だなあって思う。」
「うん、息子ってだけで、期待されて沢山仕事が来る。
どこに行っても自分の名前じゃ無くて、○○さんの息子と言われる。
仕事が来ても、だんだん自分のことがね、自分の価値が……
周りが見えなくなるときが来る。見失うことがあるんだって。」
「うん、」
「芸能の世界は、怖いことがいっぱいあるってママが言ってたんだ。
パパりんはだから、ずっと側にいてやれないから、
だから、きっと、まーちゃんより、きっと怖いんだ。」
「うん、そっか。うん、わかるよ。
パパりんは、普通を大事にしてるから、わかるよ。」
「パパりんは、まーちゃんが大事だから。
でも、だからって、まーちゃんを大事に箱に入れておくのも駄目だってわかってる。
だからね、ちゃんと応援したいから、本当にやりたいこと見つけて欲しい。」
「うん、」
ふふっと、何かむずがゆくて、深刻な話なのに笑みが出る。
優しいんだから、ほんと。
自分のことより周りを大事にする人だからって、ママがよく言ってたな。
だから、僕もママも大好きなんだよ、ねえパパりん。
最近、僕のこと、ちゃんと見てくれる。気にしてくれる。
それが嬉しくて、繋ぐ手の汗も気にならなかった。




