22、ダンディーなおじさん
おじさんが、驚いて思わず周りをキョロ見する。
僕も恥ずかしいこと大声出して、周囲の視線に我に返った。
「な、何言ってんのかなあ。物騒なんだから。
ほら! イライラするの、糖分が足りないんだよ。
美味しいパンケーキのお店知ってるよ、フルーツいっぱいの、ね?
おいでおいで、落ち着くまで付き合うから。
えーっと、君、四季島君だろ?」
「え…… うん、四季島。」
え、何で知ってんの? 僕知らないおじさんなのに。
あ~、フルーツいっぱいのパンケーキか~~
僕の失恋はパンケーキごときで……
「ほら、そこのデカいホテルのラウンジ。
一流ホテルだよ、他にも美味しいのいっぱいあるよ~
好きなだけ頼んでいいから。
えーーーーー、あそこお高いホテルじゃん。
「え~~、でもあそこ、高いから無理ってパパりん言ったとこだよ。
あそこのいちごフェアに行きたいって言ったのに、駄目って。
おじさんお金あるの? 」
「あるある、おじさん金持ちだから。
そうか、パパリンきびしいなあ。昔は金銭感覚ゼロだったのに。
行こう、おじさんも年だから、ほら、暑いし腰が痛いし、丁度いいよ。」
へ~~~、パパりん、そうだったのか。
「うん、行こっ! おじさん、パパりんの知り合い? 」
「若い頃ね。あー、えー、そう、同級生だったんだ。」
「ふううう~~ん、おじさん年寄りなのに。パパりんと一緒なんだ。」
「ガーーーーーン! 年寄りって…… ひどいなあ、
41はもうジジイか~、くすん」
「ねえ、ねえ、何で名前わかったの? 会ったことある? 」
「ないなー、でもパパそっくりだし、間違えようが無いだろ。
あんな顔、2人目いたらビックリするよ。
スカウトに声かけられないの? 」
「んー、無いよ? だって、この間まで厚化粧してたから。」
「あーー、そうだっけ。あははは! 」
腕から手を離して、手を差し出す。
手を繋ぐと、力強くておっきい。
気がつくと、夕暮れ時でまだ暑いのに、ショックでビックリするほど手が冷たくなってるのに気がつく。
ザンジバルの馬鹿。許してやんない。
おじさん、見上げるとすごくダンディでカッコいい。
「おじさんギター弾けるの? 」
「そうだよ〜、パパさんも弾けるんだよ。家では楽器やらないの?
歌とか歌わない? 」
「家では何にもしないよ。だって僕に全部隠してるもん。」
ブフって吹き出すと、笑い出した。
隠しごとってさ、隠せるわけないんだよね。
だって親だもん。
またちょっと泣いて、パンケーキ頼んでオレンジジュース飲んで落ち着いてきた。
はあ、腹立つし、スマホ見てもまだ返信こない。
はあ~、失恋か~~、いきなり失恋か~~
いやいや、なんか理由あって一緒にいたかもしんないし。
いや、待てよ、肩組むか? こんなとこでラグビーとかあり得んし、
くっそ、また怒りがぶり返してきた。
ふううっと鼻息吐いて、ジュース、チューッと飲む。
「ここのジュース美味いだろ? もう一杯飲む? 」
「うん、今度グレープフルーツジュースにする。」
「いえーい、」
手を上げて、ホテルの人呼んで注文する。
なんか言う事ジジイだけど、やることスマートでカッコいい。
「おじさん、家に帰るとこだった? 」
おじさん、スマホ片手になにか打ち込む様子がめっちゃ遅い。
うーん、やっぱりお年寄りだ。
パンケーキ来たけど、おっきなお皿にちょこんと載ってて、盛り付け綺麗で宝石みたい。
写真撮って、しいちゃんにLINEで送っておく。
わー、直で返事来た。
コロスだってw
今度一緒に食べに行こうぜって言ったら、うすっ!ってオッケーのスタンプの返事来た。
でも、食えば物足りない。とりあえず上品に食う。
「うん、そうだねえ。お父さんとも会ったんだよ。」
「えー、パパりんと? なにしてんの? 」
「えーーと、あー、趣味の仲間なんだ。秘密の趣味。
お父さんに遅くなるって連絡しとくね。」
「パパりんか~、バーカって息子が言ってるって書いといて。」
「ぷふっ、ひどいなあ。お父さんカッコいい? 」
「ぜーんぜん、いっつも眉間にしわ寄せてさ、お勉強しなさいしか言わないもん。
どこにも連れてってくれないし、1人で行ってきなさいしか言わないし。
バーカ、バーカ、大馬鹿野郎だよ。」
「ははは、ふうん、何か新鮮だなあ。馬鹿野郎か~ 」
「うん、でもね、ご飯一生懸命作ってくれるんだ。
毎日お弁当にね、クマさんのおにぎり入れてくれるの。
甘い卵焼きとね、エビフライ。それが定番。
もう普通のおにぎりでいいのにって言っても、まーちゃんが喜ぶのがパパりんも嬉しいからって。
僕もう18だよ? ほんと、いつまでも子供扱いなんだから…… 」
「フフフ…… 大好きなんだね。」
「だって、パパりんだもん。誰にも代わりは出来ないよ。」
「うん、いい関係だね。」
「ああいう親の息子やってるとさ、悩みも多いんだよ。
ずっと過剰に心配されるし、あっ、
家の事あまり人に喋っちゃ駄目なんだった。」
「ふうん…… なんで家の事喋っちゃ駄目なんだと思う? 」
「理由なんかいらない。パパりんがそう言うならそれでいい。
ねえ、もう一個たのむう、小さくてフワフワで全然食った気しないじゃん。」
すぐ食べ終わっちゃって、ぶっす~っとしてフォーク置いて外を見る。
ここからは中庭しか見えない。
ザンジバル、僕のこと嫌いになったのかなあ。
まあさあ、無理矢理恋人だもんねえ。
僕も車係とATMくらいしか思ってなかったのに、こんなにショックでビックリした。




