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【BL】四季島親子は無敵すぎる  作者: LLX


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18/36

18、レッツ、カラOK

「何処に行くんです? 」


マリルー父が、暑いのにマスクして、かばんを手にさっさと前をゆく。

いつ見ても背筋をしゃんとして、姿勢がいい。

歩き方がモデルみたいに綺麗だ。

ジムに通っているのか、体幹がしっかりしている。

なのに筋肉はほどよくついて、ムキムキじゃない。

こう言うのなんて言うんだ? 痩せマッチョ?


「ジム、行ってるんですか? 」


「いえ、毎日ローテーションで短時間、効率よく筋肉を動かしているだけです。

日課のようなものなので、さほど鍛えてはいません。」


「息子さんも? 」


「そうですね、最初は一緒にやってました。

小さい頃は、それはそれはそれはそれは可愛いもので、コロンと転げながらやる姿は、もうもう、もう、も~~う! 一日の疲れが洗い流されるようでした。」


「今は? 」


「今は…… パパりん、うっとうしいから部屋でやる、そうで…… うっ…… 」


はあ、


電車に乗って、2駅でおりる。

車中、ずっと本読んでるんだが、英字で本当に読んでいるのかわからない。

何の本か聞いても、無視して教えてくれないケチ


無言で付いて行くと、駅前の通りから路地に入った。

飲み屋が並んで、ここかと思ったら通り抜ける。


「ここです」


言われて看板見ると、ポップな字でカラオケボックス エンジェル。


「カラオケなんか…… 」


おっさん二人でカラオケとか、そんな気分じゃないんだけどな。

入り口に向かうかと思ったら、勝手口に向かう。


「ちょっと、大丈夫なんですか? 」


「ええ、知り合いなんです。」


ドンドンドン


叩くと、いかつい顔のオヤジが出てきた。

見ると、そこは受け付けのバックヤード、支配人の部屋のようだ。


「こんばんは、」


「おー、久しぶりだな。例の部屋か、開いてるぜ。」


「お世話になります。」


「へえ、同僚さんかい? 珍しいな。あんた、ここはボンの専用口だ。しゃべるなよ。」


「分かりました。」



ヤクザか? え? こいつヤクザの息子か?


いったい、いったい、なんだってんだああああああ!


俺は、生きて帰れるのか??



薄暗い部屋で滝汗流してあとを付いて中に入ると、普通にテレビやら監視カメラの画像やらのモニターがあって、タバコの匂いに満ちている。


マリルー父が奥に進んで壁のドアノブに手をかけると、ちらりと俺の顔を見た。

くるりとノブを回し、ぐっと引っ張る。

ジャッと音がして、ブオッと風が鳴った。

中に入るマリルー父に続いて入ってみる。


「にいちゃん、これ、サービスだ。」


そう言って、フタ空けた瓶のファンタ2本渡された。


瓶?! まだ作ってたのか、これ。


「オヤジさん、ありがとうございます。」


「なに、いいってことよ。ゆっくり楽しみな。」


中に入って、壁のスイッチを入れると、ブルーのライトに切り替わる。

6畳ほどの、普通のカラオケボックスだ。


「なに? ここ」


「オーナーの趣味部屋。

ここは完全な防音だから、外に声が漏れないんです。」


「あー、なるほど。普通のカラオケは漏れるもんなあ…… って、なんでこんなとこ。」


壁に貼ったポスターにだけは、穏やかにスポットライトが当たり、一番大きなポスターがブルーの世界で浮き上がった。

いや、そんな生易しいものじゃない。

壁にはその、同じ人物の、その男の、いや、少年の? 青年の?


壁がすべてポスターで埋まっている!


「なんだこれ! みんな同じ歌手? あー、これBeエンジェのミカエルだ。

でもずいぶん前に引退したでしょ? テレビで見たの、小学校の頃だ。」


「推しなんです、今でも。その仲間。息子は知らないので。」


「へえ、カッコよくて、爆発的な人気だったもんなあ。

確か、バンドメンバーがガンで亡くなって、そのまま解散したんだっけ?

ソロになると思ってたら、引退して残念だったって言ってたなあ。

両親が好きで、うちにもこいつのヌード写真集ある。

ものすごいプレミアついてて、何かの時に売ればいいじゃんって言ったら二度と見せてくれなかったんですよ。

あっ、これ。このポスターも貼ってあるな。

UVカットのラミネートして、更に額に入れてあるからほとんど褪せてない。

それも凄いプレミアついてたな。

で?

見せたいって、これ? なんで?

俺はあんたの隠し事なんて、別に知りたくも無かったんだけど。」


マリルー父は、いつもの眉間にしわ寄せた仏頂面に、ちょっと途方に暮れたような微妙な顔して、カラオケにBeエンジェのデビュー曲を入れてきた。

マリルー父がネクタイ緩めて前に出ると、ギターとベースの前奏曲が始まる。



ボンボン、ボボンボボボボン


キュインキューーーン ボボボボン

ババババババッビビビン、チャリチャリチャリ、


バッと、眼鏡を外し椅子に投げると、髪をかき上げる。

手を広げ、大きく回して胸の前でクロスする。そして俺を指さした。



「  君を、 救いに来たんだ!  」



「は? 」


ジャンジャン、ジャジャジャジャン、ジャーンッ


マリルー父が、マイクを掲げてワンターンする。

なんかのボックスに片足を上げ、歌い始めた。


「 儚く生まれ落ちた君のために、

この世界は、

白い羽を羽ばたかせ、

僕を生み出した


ああ、空に輝くハーティムーン、

君の背中に影を落とす

さあ僕の手を取って、

鏡の向こうに逃げていこう~ 」


ババッ ババッ 


激しいダンスに、服が風切る音が鳴る。


「 ああ、青い青い鏡の世界、

水の、中に、おぼれるように、

すがり、付く、君の手が、あーああ、  こぼれ、落ちる、


ラブリーラブリーデンジャラス、

氷のようなヤイバを手に、君のために、血を流す

Only love will save you


ラブユーラブユーデンジャラス、

闇の世界で君だけが輝いてる~~ 」


完璧な振りをトレースし、そっくりな声で歌い上げて

タンッとジャンプして、片足を振り上げる。

大きく腕を振り回し、最後にまた俺を指さして、チュッとキッスを飛ばすと、くるりと後ろを向いてカラオケのスイッチを切った。


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