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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の甘い甘い生活の始まり〜Shall we sweet?  作者: 蒼良美月
序章 出会い編 (人物紹介が主になります)
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5.両親

 いったいどういうこと?

 と、言うか、何を考えている?

 馬鹿なのか?

 この人達は?


 どこの馬の骨かもわからない、素性もわからない、ましてはこの世界の人間ですらない私に……

 頭がおかしいのか? この人は?

 と、しか思えない内容であった……


 読み終わった後、私は手紙をゆっくり元の状態に戻した後、手の平にのせ、反時計回りに半回転させ中央にゆっくり置いた。三人の表情は皆が優しく、柔らかな表情だった。



 は?


 何考えてるの? この人達も?


 馬鹿なんですか?


 ──この国の行く先が少し不安になって来た感があるのは私だけだろうか……



「どうだい? 凛花ちゃん、一度受けてみてはどうだろうか?」

 中将様はにっこり微笑みながら、いつもと変わらない口調で言った。


 受けてみる? 一度?

 馬鹿なんですか? 貴方がたは?


「もちろん、受けたからと言って絶対合格。とはいかないかも? だけど、まぁその辺は、ね? ほら? 紹介状もあるし? ね?」

 と、中将様はちょっと口角を下げながら、うすら笑いのような意地悪めいた顔をした。先ほどの手紙とは別にある二通の紙をトントンと指で軽く押したたいた。


 肝心の手紙の中身はというと。


 ──おおまかに言うと、私を「内宮」の「右大臣付きの秘書官」として召し上げる。

 と、言うものだった。何度も言うがこの国に「大臣」とつく位の者は二人しかいない。そのツートップの秘書に、何処の馬の骨かも分からない小娘を充てがおうとしているのだ。

 とても、正気の沙汰とは思えない話である。


 内閣制度が無いこの国での最高権力者は当然、今上帝になる。だが、この時代の性質上、偶像物、天子様、神の子のような存在と崇められている部分があり、実際の政を行っているのは、太政大臣と右大臣中将であった。


 太政大臣宰相様は、この茶髪イケメン様のお父上にあたる。なんとまぁ、親子でこの国のすべてを決定しているのだ。

 

 その中でも一番驚いたのは今上帝の后様、皇后陛下は、太政大臣の御息女。つまりこの茶髪イケメン様の実の姉上にあたるのだ。

 私の目の前にいる茶髪イケメン様には皇位継承権は無いが、血筋的には現臣下の中では最高位であった。(父親をのぞいては)


 そんな、やんごとなきお家柄の「お坊ちゃん」様の直属の秘書官に、私を推薦してきたのだ。ただの秘書ではない。「秘書()」である。当然ツートップともあろう方に秘書が一人のわけがない。

 その数多の数の秘書の取締役のお役目が「秘書官」である。


 馬鹿か?


 君等は?


 何度も言うが私はこの国の、いやこの世界の人間ですらないのだ。


 私が目が覚めた時に、この女将さん夫婦の家の二階に居たことも私には全く覚えもないし、わからない。

 

 ただ、店の前で倒れていたのを熊男が見つけ、すぐに二階に連れて行き、ご夫婦で介抱したのだ。と後から聞いた。

 それから私は今に至るまでこの夫婦の親切に甘えてきてはいたのだが。そろそろ、金も少しは貯まってきていたので、自立せねばなぁ。とは思っていたが、今の環境があまりにも居心地が良すぎるのと、この夫婦のあまりにもの人の良さについつい、甘えてしまっていた。


 遠く離れている両親にちょっと雰囲気が似ていたせいもあるのかも……


 そして手紙には受験するにあたって、たった一つだけ条件を添えられていた。私を正式にこの夫婦の「養女」としてむかえる。と書いてあった。


「私達は、凛花さえ良ければいずれは養女、いや娘としてむかえ、私達の娘としてこの家から嫁に出してやりたい。と考えていたので、最後に書いてある条件に関しては何ら問題はないよ? どうだい? 凛花?」


 熊男が珍しく真面目な眼差しで私の目を真っ直ぐに見て、低い声でゆっくりと言った。

 

 普段は、恥ずかしいのか? 女将さんの手前か? 私と話す時は直ぐ冗談を言ったり、茶化したりと、賑やかな口調な男だったが、こんな真剣な眼差しを真っ直ぐ向けられたら、それ相応の対応もこちらもしなくてはいけない。


 ……困った。


 でも、この世界の居場所を与えてくれた、いや、これから与えて貰えるかも? と思う安堵と、これでこの夫婦への恩を少しは返せるかも? と思う気持ちが、私は抑えることが出来なかった。


「わたくしで良いのでしょうか」


 私は普段より少し低い声でゆっくり下腹に力を入れて背筋をピンの伸ばし、中将閣下の目を真っ直ぐに見て言った。


「試験は十日後の十時からだ」

 

 中将閣下は私の目を真っ直ぐに見て、こちらもいつもよりも少し低い声でゆっくり言った。


「承知しました。よろしくお願いいたします」

 

 私は頭を下げた。

と、同時に私の両親である夫婦も畳に頭がこすりつくのではないかと、いうぐらい深く深く頭を下げていたのが何よりも嬉しくそして、有り難く思った。




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