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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
第三章 婚約(仮)編

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12.一枚上手

 支宣の衣装作りが着々と進んでいる中、凛花はあることを思い出した。

 そう言えば! ブレスレット!!


 皇太后陛下への謁見の表向きは贈り物を届けること。その贈り物とは、先日「三木堂」との会合の際に店主が持って来た「白珠」を使用した、ネックレスだった。元々皇太后陛下に献上する予定で、試作として店主が持って来ていた物を、あまりにもの出来が良かったので、その場で凛花が買い取った物だった。


 それと、一緒に凛花は手作りのブレスレットを作ることにした。


 あ!! 忘れてた!!


 最近忙しくしていて、すっかり忘れていたのだ。


「光様へのプレゼント!!」


 凛花は直ぐ隣にある自宅へ急いだ。



 ハァハァハァ。



「おい! どうしたんだ? 凛花?」


 ちょうど朝の会議が終わって、昼餉を食べに来た殿下が、何事か? と驚いた顔をしている。


「あ、大丈夫。 それより殿下! 申し訳御座いません。 忘れてました!!」


「ん? 何がだ?」


 凛花は少し申し訳なさそうに、小さな紙袋を手にしていた。そして、殿下の前にすっと出す。


「俺に?」


「はい……。以前に市井に出た際に」


「ああ! あれか!! 結構前よのう?」


「……すいません」


「開けてよいか?」


 凛花は、少し恥ずかしそうに、うんうんと、首を上下に振った。


「ほう? 中々目が高いなぁ。流石は凛花だな。 三木堂で買ったのか?」


 ブレスレットを手に取り、天井の方に向けたり、窓の方に向けたり、光の角度でキラキラ光る宝珠を殿下は愛でていた。


「……宝珠は三木堂で買いましたが……。実は繋いだのは私でして……」


「!!」


 殿下が目を見開く。普段から紫のビー玉見たいにキラキラ輝く瞳が、今はその何倍も輝いて大きくなった。


「凛花が俺の為に?」


「……お気に召して頂けたでしょうか?」


「お気に召すも、何も! 良い嫁よのぅ」

 そう言って殿下が目を細めた。


「まだ、嫁ではありませぬが……」


「早くなりたいか?」


 凛花は頬を染ながら俯き加減で答える。

「このような時間も楽しいかと……」


「……悪い女じゃのう」

 少し横目で凛花を見ながら、髪を一束手に取り、そっと口づけした。


「実は私の分も作っておりまして……母様も、父様の分と御自分のを作られました」


「そうなのか? 凛花のも見せてくれまいか?」


 凛花は恥ずかしそうに、衣の懐に仕舞ってあった、自分の分のブレスレットを取り出し、自分の腕に付けた。


「なるほど! 腕にするのだな? これは!」


 あ! ブレスレットをする習慣がないのか! この国に。名前すらも?

 ブレスレットじゃ駄目かなぁ…… 腕輪か……


「皇太后陛下様にもお作りしました」


「殿下頼みが御座います。今度開かれる「園遊会」での贈り物なのですが、高位の方には三木堂の「白珠」の帯留めを御用意する予定で御座いますが、その侍女達に、こちらの()()のもう少し簡素にした品を御用意することは可能ですか?」


「それは構わぬが……侍女にもとなると相当な数だぞ?」


「侍女衆の分は珠の種が小さい物で簡素に作成します。で、その仕事を民に外注したいのです!」


「ん? どういうことだ? 詳しく説明しろ」


「その前に、その手を離して頂いても?」


 彼は先程、凛花がつけたブレスレットを見る為に腕を掴んで、そのまま手を握ったままの状態だった。

 頬を少し膨らましたが、直ぐに手を離し、椅子に座る。


 私の狙いはこうだ。

 先ずは先行投資で、ファッションの広告塔である宮廷の侍女に安価で手に入る腕輪をプレゼントする。


 真珠はバロックと言われる歪な形の物が出来る。バロックパールや、小さすぎる物、宝珠でも研磨前の物など、売り物にならない所謂、屑石を使って作成する。


 穴開けのみ三木堂で行い、組立は市井に内職として発注する。

 これなら小さな子達でも駄賃稼ぎに出来る。最初はブレスレットだけだが、ネックレスや、ブローチ、髪飾りなどを、今まで捨てていた屑を使って安価で作成して、売ろうと思ったのだ。


 その計画を殿下に話した。 


「凛花、それなぁお前の名でやってみないか?」


「え?」


「いや、直接お前が経営しろと言っているのではないぞ? それは駄目だ。店の経営や販売は誰か信用出来る者にさせれば良い」


「え??」

 私は殿下の顔を見る。もしかして私の名のブランドを立ち上げるってこと??


「勿論、お前次第だがな? 俺は良いと思うぞ?」


「殿下、それは、私の名を冠した店を作るって意味ですか?」


「流石だな。ご名答」


 殿下はにっこり微笑んだ。


 うん、今日も後光が眩しい。いや眩しすぎる。


「宜しいのですか?」


「お前が店の経営は行わない。店は人に完全に任せる。販売、接客含め店には絶対立たない。これを絶対に守るのであればな」


 読まれている……


「……せめてデザインの一つぐらいは私も参加しても宜しいでしょうか?」


()()だけだぞ?」


 そう言って殿下が笑った。


「ありがとう御座います」

 そう言って私は殿下の頬に軽く口づけをした。


「上手になったな……」


「何のことでしょうか?」


「ただし、店に立つことは絶対に赦さん。発覚した場合は店ごと潰す。よく覚えておくように」


 よく読んでいらっしゃる……流石は国の頂点の御方。一枚も二枚も上手だわ……。


 凛花は下斜め45度から殿下の顔をじっと見つめて見た。



「駄目なものは駄目。何をしても変わらんぞ?」


 バレたか!!


 私の額に、殿下が自分の額をコツンと当てた。


「ねぇ? どうしても駄目ぇ~?」

 殿下の両腕に抱かれたまま、再度下斜め45度から覗き込む。


「駄目」


 そう言って額に口づけされた。



 違う手を考えよう! と 負けず嫌いの凛花が作戦をこのあと練ったのはまた別のお話。










 第三章(完)












今回で第三章完です。

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