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5.女心

 ──その甲斐があってか、以前に私が出していた「提案書」も無事受理され「重」に振り分けられたようだ。支宣様の配下の方達が一旦仕分けしその中の「重」がここの「政務秘書官室」に持って来られる流れだ。


 以前はこの「政務秘書官室」が存在していなかった為、光様と支宣様で殆ど仕分けしていたが、さすがに到底無理なので、中将様も度々駆り出されていたそうだ。最近は中将様は本来の自分の仕事である警備と、軍の育成、と開墾事業に精を出していると聞く。最近では週に一から二回程度しか顔を見なくなっていた。


 その代わりと言うぐらい最近は弟である支宣様が毎日定刻にやって来る。


 ──トントントン。ガチャリ。

「おはよう御座います」


「おはよう御座います」


 互いにいつもの挨拶を終え、席に着き仕事に取りかかる。


 が、支宣様の視線が私に突き刺さる。

 目の下には影が。クマができている。


 私は、気になったが敢えてそっとしておく。

 何となくその理由を察した私は、一度席を立ち、濃い目の茶を無言で支宣様の机に置いた。


 支宣様は、周りをキョロキョロ見て小さく無言で私に会釈をし、茶を啜った。


「何かお探しですか?」

「いえ、探し者に見られては私の首が飛んでしまうので、用心したまでのこと」


「……すいません?」


「いえ。凛花様のせいではこざいませんから」


「支宣様、その様は……」

「いえ、いずれ私のお仕えする御方になるのですから」


「……お仕えするって」

 光様が私に()()()()の好意を持っておいでなのは、流石に最近の彼の行動をみれば私にも分かってきた。でも彼は皇族。しかも皇弟君。親王殿下がまだ幼いため、何かの際には頂上に立つかもわからない御身。


 そのような御方が私に本気になる訳がない。数多居るであろう、壁の花の一人に加えて戴けるだけで身に余る光栄なのだから。

 数多の女性達……名家の姫様や、国一番の美女達……

 そんな方々の中で敵う訳がない。


 気づいたら、頬を冷たい物が伝っていた。


「ちょ、凛花ちゃん!」


「ごめんなさい」


 私は立ち上がって席を離れた。


「ちゃんと伝えてるのかなぁ……意外とそういうとこだけ抜けてるからなぁあの御方は。と言うか、相手がなぁ」


 支宣は、鈍い女子と、言葉足らずな上司を心配しながら目の前の書類に目を落とした。

「でも、このままって訳にも行かないよなぁ、それこそ首が飛ぶかも、寒い所行きたくないしなぁ」


 そう言って、彼は隣の資料室に入り、本棚のある場所に赤い紙切れを挟んだ。


「至急会って話しがしたい旨があります」の符号だった。

 その符号を受け取った彼方の密偵が直ぐさま主の元へ届けた。


 暫くして隣の部屋の天井がトンと一度だけ音がした。


「正午」

 小さな紙切れに二文字だけ記されていた。


 ソレを見て支宣は深くため息を吐いて、紙を水の中に入れた。

 あっと言うまに溶けて水だけになる。



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