4.受難
多少大人な回になります。苦手な方は飛ばして下さい。
※多少情景を加筆しました。
──「あれ? 私? ここは??」
それは見慣れるぬ部屋だった。豪華な調度品に囲まれ、ふかふかの高級絹地布団。
寝台には天蓋が付いていて、寝台自体も総白檀で作られた最高級の寝台だった。
そしてほのかに薫あの香り。
──光様の寝室?!
「起きたか? 居眠り娘」
ソファからむくっと身体を起こした御人は、寝間着の前が少しはだけ、上半身が見え隠れしている。均整のとれた筋肉は六つに割れていた。
「着痩せするタイプなのか」
見事なシックスパックだわ。
「何か言ったか?」
「いえ何でも御座いません。ってキャッ」
私は自分の姿を見て赤面した。
白い下着、長襦袢姿の自分を見て思わず硬直してしまった。
「心配するな。何もしてないぞ。今はな」
「……今はって……」
「そのままでも俺は良いんだけどなぁ、もうすぐ貞舜が迎えにくる。残念だけどこれに着替えろ」
そう言って私の前に「侍女用衣装」を一式置いた。
が、その目は一点を見つめている。
「光様?」
「お前のせいだからな?」
「え? 光様?」
「何もせずこのまま帰すはずだったのに、お前が誘うから」
「誘うって……」
そう言って殿下は強く私を引き寄せ強引に口づけした。
そのまま両手首を強く掴まれ、そのまま寝台に押し倒されたと思ったら、殿下が私の上に覆い被さるように、両膝の間に殿下の脚が割って入ってきた。
──思わず私は目を瞑る。
──頭の中が真っ白になった。
「どうやら、お預けのようだな」
部屋の外に衣擦れの音が段々と近くなっているのが分かった。
「これくらいは、赦せ」
そう言って、殿下が私を再度強く抱きしめ、口づけをしながら、その唇は首を過ぎ、徐々に下へと下りて行く。髪を掻き上げられ、首筋や唇、胸の上までを何度も上下する。
「で、殿下……ん」
「続きは今度な。これ以上は俺も理性を保てる自信がもうない」
「着替えろ」
そう言って光様は、さっと背を向け奥の間へ足早に去った。
私は自分の開けた襟を戻す。胸上に小さく赤い痕が残っていた。
──急いで私は着替えをする。ちょうど着替えを終えた時、扉の外で声がした。
「お迎えに参りました」
母様の声だ!
光様が私を抱き寄せ耳元で囁いた。
「いつか貰い行くからな。覚悟しとけよ」
「……はい」
何故だか、自分でも分からなかった。何故このとき素直に「はい」と答えてしまったのか?
そして「いつか」を期待してしまう自分が。
あの続きを望んでしまう自分が。
迎えの馬車の中で私は俯きながら、光様の激しい吐息を思い出す。
思わず赤面し、身体の奥が熱くなるのを感じていた。
◇
そんな中、寸止めを食らわされた男は朝から、超不機嫌だった。
不完全燃焼。
若き健康な男性。怒るなと言うほうがご無体であろう。
「はぁ……」
艶やかなため息が何度も漏れた。
火照る身体の感覚がまだ抜けておらず、仕事に集中しようとしても、髪の香、頬の感触、細く折れてしまいそうな腕。開けた下着からのぞいた白い肌。唇を押し当てた瞬間止まらなくなり、無理やり付けた印。
「あんなに乱暴にするつもりはなかったのにな……」
不完全燃焼にモヤモヤした気持ちと、自己嫌悪で深いため息が何度も漏れる。
そんな彼を一晩中悩ませた一人である仕掛け人の支宣は、朝からしっかり仕返しをされていた
彼の机の上にはアルプス連峰か? の如く白い紙の山がどっさり連なっていた。
「終わるまで帰れると思うなよ?」
そう言って、主は大きな足音を廊下中に響き渡らせて出て行った。
彼が自室に戻ったのは、すでに朝の鐘が聞こえた頃だった。のはまた別のお話。




