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はじまりの刻 ~堅物姫と麗し皇子の秘め事の始まり〜甘美な世界でイケメン皇子に溺愛される〜美しの君は実はドS皇子でした〜  作者: 蒼良美月
第三章 婚約(仮)編

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6.罰

 騒動から翌日の昼下がり。いつもの執務室で慣れない手つきで、茶を淹れる男がいた。


「殿下~~ お茶淹れてください~」

 トイプードル兄が言う。


「殿下~~茶菓子まだですか?」

 柴犬弟が言う。


「お前らぶっ殺す!」


『はぁああ??』

 仲良し兄弟が、美丈夫を睨む。


「………。ってかさぁ、仕事しろよ? こんなに溜まってるじゃないか?」


『誰のせいですか?』


 堪らず彼は、助けを求めて最愛の婚約者を(すが)る目で見つめた。


「凛花()()や? 何とか言ってくれないかい? この阿呆面兄弟に?」


「自業自得です! お茶淹れてください!」


 そう言って私は湯呑を殿下にグッと突き出した。


「謝ったろ? な? な? って? もうしないって言ったろ?」


「嫌いになりますからね? 今度したら」


 凛花はギロリと睨んだ。


「すいませんでした……」


 美丈夫は深々と頭を下げた。

 犬兄弟を睨む。

 犬兄弟は、二人揃って首をブンブン横に、千切れるか? 程に振る。


 そう、感冒のはずが、何故バレた?

 そこは親切? 侍女達が変な薬を盛られたらしい? と、話しているのを凛花が聞いて問いただしたからだ。


 湯浴みに人払いされ、一晩中支宣が人払いしてまで廊下で控えている。

 只事でないのは、長年殿下に仕えた侍女達が気づかない訳がない。


 あくまでも、彼女らは主の容体を心配して話していただけだった。

 不可抗力である。



「そう言えばさぁ。バタバタ騒ぎで、渡すの忘れてたのよ! これこれ! 本当は光様に最初にと思ってたんだけど……今回は罰で無しね?」


「は?」


 そんな美丈夫の声を無視して、以前買ったままになっていた「ハンカチ」を()()に渡した。


「俺に?」

 惟光はクシャクシャの笑顔で喜んだ。


「はい。これは支宣様に」


「ありがたく頂戴致します!」


 凛花は何事も無かったように、席に戻り茶を啜る。



「おーーい。 おーーーーいい。誰か一人忘れてはいませんか?」


 無視して茶を啜る。


「だから謝っただろ? 二度としないって」

 少しイライラした様子で言う。



「私が怒ってるのは()()ではありません。其方も勿論許せないですが、でもそれ以上に許せないのは、何故私を頼ってはくださらなかったのですか? あの夜。何故お一人で苦しまれたのですか? 私達は夫婦になるのではないのですか? 私はその程度の女ですか?」


「違う! 決してそのようなことは!」



「り、凛花ちゃん。流石にそれは……いくらなんでも愛する女性には……」

 支宣は、主の苦しみが分かる分、急いで凛花に訳を説いた。


「それでも、わたくしは殿下の妻になる女です。どんなことがあろうと覚悟は出来ております。夫の苦難はわたくしが受け止めます」


 凛花は支宣と、惟光の目をしっかり見てはっきりと言った。


「ご無礼を致しました」

 支宣は凛花に素直に謝った。が、その声は喜びとも思える声だった。


「宣、惟光、悪いが席を外してくれ」


『御意』


 そう言って二人は部屋を後にした。



 ◇



「すまなかった。ただお前を抱くなら自分の意思がある時、自分が自分である時が良かったんだ。分かってくれと言うのは勝手かもだが、分かって欲しい。獣のような我を忘れる醜態でお前を壊したくなかった……赦せ」


 彼の頬からキラリと一筋の雫が零れ落ちた。まるでダイヤモンドのような輝きを放ちながら。


「愛している凛花。すまなかった」

 そう言って彼は、目の前の最愛の女性を抱きしめた。


「ごめんなさい。辛かったのは私じゃなくて殿下なのに……ごめんなさい」


「今夜、うちに来ないか?」

 彼女を腕の中に抱いたまま、耳元でたずねる。


「駄目でしょう?」

 彼女は意地悪そうに微笑んだ。


「春まで待てるかなぁ……」

 淋しそうな顔をする、当代一の美丈夫の後頭部に両手を絡ませ、自分の方へ引き寄せ、そっと自分から口づけをした。


「お前それずるくないか?」


「罰です」


「もう一回して?」


「駄目です」


「もう一回だけして?」


「駄目です」


「凛花さん?」


 そう言って彼は目を閉じた。長い睫毛は綺麗に巻いている。


 凛花は彼のすっと通った高い鼻をカプッと軽く噛んだ。


「お預けです」


「なぁ。やっぱりもう無理だわ……今夜来なさい」


「ご兄弟の許可が下りたらね?」


「……。無理だろ」


「頑張ってね?」


「なぁ。俺のハンカチは?」

「ちゃんとありますよ」

「後で見せて?」

「今出す?」

「いや、もう少しこのままがいい。寧ろずっとこのままでもいいぞ」

「それじゃぁ何もできませんよ?」

「こんなことも出来るぞ?」


 そう言って再び彼は口づけした。



 この抱き合ったままのやり取りが、このあと夕刻まで続いたことは、外でずっと待っている仲良し兄弟しか知らなかった。




「宣。もう良くないか? 婚姻先にしても?」

「駄目でしょう? 帝と皇后になる御方ですよ?」

「だよな……」









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