セイギノミカタ-3
「やれやれ、 下らない事を言ってないでさっさと入れれば良いんだよ」
イチが文句を言いながら家に入っていくのを、 猿が苦笑しながら見送った。
そしてアリスの方に向き直る。
「さぁ、 遠慮せずにどうぞ」
ところがアリスは下を向いたままの格好から動かない。
それどころか肩にかけていたボストンバックを地面に下ろした。
「どうかした……?」
「やっと、 やっとたどり着いた」
アリスは呟くように言った。
そしてそのまま猿の方に倒れてしまった。
「おっと」
猿が腕で抱えるように受け止める。
「おーい、 大丈夫かー」
アリスからの返事は無い。
代わりに返って来たのは、 すやすやというアリスの寝息だけだった。
「おい、 どうしたんだい?」
異変を感じ取ったのか、 イチが顔を覗かせた。
「寝ちまったよ」
猿は肩をすくめて答える。
「昔よりは良くなったとはいえ、 宇宙で育った人間には重力は辛かったんだろう」
「やれやれ、 さっさと運んでやんな」
「……ちったぁ手伝ってくれよ」
「客人に手伝わせんじゃないよ。 とっとと茶でも出しな」
イチはそう言いながら鼻で笑うと首を引っ込めた。
「やれやれ」
猿はため息をつきながら片方の肩にアリスを乗せ、 反対側にボストンバックをかけて家に入っていった。
「正義の味方の娘、 ねぇ」
アリスをソファーに寝かせ、 猿はイチから話を聞いていた。
「ああ、 確かにそう言ってたよ。 本当かどうかは知らないけどね」
「ンでもって、 正義の味方は死んだと……」
「らしいねぇ」
イチはアリスの向かいのソファーに座りながら、 猿は近くに椅子を置いておいてその背もたれに持たれながら、 懐かしむように上を見上げた。
「あれからもう10年かぁ……」
「早いものだねぇ」
「まったくだ。こんな所にいる俺達のほうが早く死ぬと思っていたんだが、 人間解らないもんだ」
猿がため息をつきながらいうと、 二人は無言になった。
「で、 この子はどうするんだい?」
「どうするも何もイチが連れてきたんだろうが……」
「お前さんの客だろう、 むしろ連れてきてもらった事を感謝しな」
「……まぁおっさんに任せるよ。同じ宇宙の人間のほうがいいだろう」
「はん、 人任せかい?」
「同じ家に住んでるんだから完全に任せる訳じゃないさ」
猿はそういいながら席を立ち、 奥の部屋へ向かう
「どうだか……」
イチは鼻で笑いながらそれを見送った。




