セイギノミカタ-2
しばらく二人は無言で歩いた。
杖を持ちながら無言で歩くイチ、 それを追いかけるアリス。
なんとも言いがたい空気が続いていたが、 唐突にアリスが口を開いた。
「父をご存知なのですか?」
「ああ、 あの正義の味方のことならよく知っているよ」
「"正義の味方"ですか?」
「ああ」
アリスは首を傾げ、 イチは懐かしむように空を見上げる。
「こんな吹きだまりみたいな場所に来て、 突然法と秩序を叫び始めたんだ。正義がどうの人情がどうのってね」
「……」
「最初は町の連中も無視してたんだけどね、 次第にやつの人柄に引かれていくやつも出てきて遂には決まりを作るところまで持ち込みやがった。 まぁやつが居なくなって多少緩みはしたが、 それでもその辺に死体とが転がってないのと銃声が聞こえないのはあいつのお陰だよ」
「そうですか、 父がそんな事を……」
「そういや正義の味方は元気かい?」
イチが尋ねると急にアリスの顔が暗くなった。
「父は……死にました」
それを聞いたイチが驚いた顔をして振り返った。
が、 何か納得したようにまた前を向き歩き始める。
「……どうして死んだのかい?」
「正確には殺されました、 今日の来たのはその事も含めてです」
「詳しいことは猿の家で聞こう」
そう言ってイチは一件の家の前で止まった。
家と言っても、 有り合わせの資材で素人が組んだというのが一目で分かるような物だ。
家の隣にはこの家には不釣り合いなほど立派なアンテナが設置してある。
イチはその家の前にたつと、 扉を叩き始めた。
「猿っ!私だよ、イチだ!開けな!」
しばらくすると中からどたばたしている音が聞こえた。
そしてようやく扉が開くと、 中から中年の男が出てきる。
「こんな朝から一体何の用だよ……」
出てきた男は頭を丸刈りにしてスーツを来ている。
そして初対面のアリスでも、 この男が猿と呼ばれているのが分かるような顔をしている。
男はイチを睨んだ後、 アリスを見て目を丸くした。
「……イチ、 子供が居たのか?」
「そんなわけが無いだろう……、 お前さんへの客だよ」
ため息をつきながらイチが答える。
それを聞いた男はもう一度アリスの顔を見た後、 ドアを押さえながら一歩引いた。
「まあ、 中で話を聞こう」
男はそう言って二人を招き入れた。




