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私と第二王子であるエドワード様との10年余りに及ぶ婚約があっさりと破棄され、魔王を倒したモクビリー様に求婚されてすんなり結婚ができたってことは、きっと私の悪役令嬢扱いは学園で継続ってことじゃないかしら。だって、楽だったんだもの。エドワード様の婚約者である以上、他の男子生徒に好かれるわけにはいかないし、女子生徒からやっかまれるのが面倒だから一人でいたらいつの間にか悪役令嬢になっていた。で、なぜか私を推す派閥とそれ以外の生徒の間にいざこざが続いて、私はそれも放置した。勝手にしていたことだし、関わりたくなかった。それがいけなかった。王にまで私の噂が及んでいたのかもしれない。エドワード様がそんな私との結婚を拒んだのかもしれない。ミユを好きになってしまったのだから仕方のないこと。でもね、私の悪役令嬢はこの顔だけなの。どうしてこんなことを悩んでいるかというと、自分のことよりも今は勇者である旦那様の評判を下げたくないから。
「ふぁ」
ため息をしながら家の掃除。
「どうした、アン?」
これまでもエドワード様に近づく女たちからいろんなことされてきて我慢してきたけど、結果的にはよかったかもしれない。モクビリー様との生活はあのギスギスしていた感じがない。僻まれたりして私だって大変だったのだ。
「なんでもございませんわ」
まさか私が床掃除をする日が来ようとは。でも、何事も経験だわ。料理だって、頑張っているところ。
思っていたほど嫌じゃない。人目がないからだろう。家でも学校でもいつも誰かに見られていた。今は私を見てくださるのはモクビリー様だけだわ。
「元気のないアンにはこれをやろう」
「ブルーベリーね。おいしいわ」
庭先にたくさん植わっていて、この時期はたくさん採れるからジャムでも作ってみようかしら。
そうだわ。
「モクビリー様、あーん」
おかえし。
「ん? 冷たい」
「ブルーベリーを魔法で凍らせたの。妹が好きでね」
こうすると喜んで食べた。
「こりゃ驚いた。アンは魔法が使えるのか?」
「少しだけよ。授業で習うの」
モクビリー様も気に入ってくれたのかぱくぱく。でも一粒ずつしかできないから待ってくださいまし。
「こっちの貴族にはそういう力があると聞いたが、真実だったか」
「モクビリー様だって少しは使えるでしょう?」
「いいや。魔力は皆無だ」
勇者なのに?
「魔法使いの方に習ったりしないのですか?」
「ゼロの奴は鍛錬しても魔力は増えないと、うちの魔法使いも言ってたぞ」
「そうなの?」
確かに王立の学園の生徒たちはみんなそれなりの家柄。優秀な生徒を集めて国の力強めたいのかしら。
もうこんな国のこと知ったこっちゃない。
「アン、今日の服はいいな」
モクビリー様がまじまじと見る。
「家の人間が持ってきてくれたんです」
我が家で着ていた服だが、掃除には不向きね。裾を捲るのははしたないし。そう言えば下女たちの裾が汚れていたのはこうやって働いていたからなのね。頭が下がるわ。
「また背中の紐は脱ぐときに解いてやるからな」
モクビリー様がにやっといやらしく笑った。
「コルセットはドレスのときだけですわ」
「そうなのか、残念」




