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モクビリー様がお風呂の準備をしてくれたけれど、体をお湯に沈めても動機が速まるだけだった。体の内側から熱くて、変だわ。
「アン?」
モクビリー様がお風呂場に顔を出す。
「やだっ。モクビリー様、見ないで」
「心配だよ」
私が手で体を覆っても、見られたくない部分が見えちゃう。湯船の隅で膝を抱える。背中程度なら見られてもいいわ。
「のぼせそう」
顔は熱いままだ。
「落ち着いて」
あなたの声にまで耳が反応するようで。
「モクビリー様、なにを?」
「頭のマッサージ。気持ちいいだろう?」
「はい」
頭の上のほうを押してくれる。不思議と落ち着いてきた。
「俺の故郷では575の言葉で相手に気持ちを伝えるんだ。例えば、
「『愛してる 愛してるったら 愛してる』とか」
とモクビリー様がゆっくり話してくれる。
「どうして?」
「手紙で愛を伝えていた時代の名残かな」
「ややこしいし、伝わらないわ」
「短い言葉でどれだけ愛を伝えられるか競っていたのかも」
私は長い言葉で口頭で言ってほしい。頭の奥で冷静に考えながら指折り数える。
「わからない あなたの気持ち 魂胆が」
どうしてこんな私とあんな状況で結婚してくれたのだろう。婚約破棄されたばかりの私に。
「うまいもんだな」
とモクビリー様も指で言葉を数える。
記憶があるのはそこまで。
朝になったらベッドで目覚めた。
「モクビリー様?」
「おはよう、アン。大丈夫か?」
「はい」
あの異常に熱い熱も引いた。
「私、昨日…」
「覚えてないのか?」
「はい?」
「催淫効果のある食べ物にあてられたようで」
「催淫効果?」
「ずっとドキドキしてただろう?」
「はい」
お酒だって得意ではない。
「俺の腕の中で熱にうなされて、危うく流されそうになった。あの顔、たまらないな」
「み、乱れてましたの?」
恥ずかしくて、私は布団で顔を隠した。
「涙目で『抱き締めて』って」
「嘘だわ。言ってない」
「よかった。少しは覚えてる? 朝食作っておくから大丈夫そうなら起きて。今日は学校だろう?」
「はい。ご迷惑をおかけしました」
寝間着に着替えていたし下着も身に着けていた。記憶がないって怖い。
立ち上がったら瞬間に体からどろりと何か出た気持ち悪い感触があった。
「旦那様、下着が気持ち悪い。やっぱりなにかしまして?」
と聞いてもモクビリー様は笑うばかりだった。なんだろう、これ。自分の体なのによくわからないことばかりだわ。




