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試験は二日間が筆記、三日目が魔法の実技。学園は王立で、身分は関係なし。卒業してからの仕事に就くのには家柄が関係しているのは否めない。
「ラナミエラナミエ、シエルッテェ」
実技のほうが得意なのよね。なんなくクリア。これまで間違いなく卒業できるだろう。
でもまだ編み物が進んでいない。これから目を減らすから一人ではできそうにない。
「エミール、基本の編み方はわかってきたからこれ以外は図にしてくれないかしら」
私はお願いした。
「図に? 私にできるでしょうか? 卒業したら考えてみますわ」
それも結婚が決まるまでだろう。遠くへ嫁ぐ人もいる。
ああ、今日で試験が終わる。
家に帰り、久々にモクビリー様と再会。薪を割る勇者ってどうなの?
「モクビリー様」
「アン、迎えに行こうと思っていたのに」
「試験だから早く終わったの」
あら、いい匂い。モクビリー様がごはんを作ってくれたのかしら。
違う。家の中に誰かいる。
「う、浮気?」
私が学校に行っている間に、女を連れ込むなんて。
そうよね。私ではあんなこともこんなこともできないから。辛いけど、ここは正妻として冷静に。
「アン、違うぞ。リタ、ちょっといいか?」
「なによ?」
大人の女の人の声。すらりとした腕、それに白髪?
「リタ、我が妻アンだ。アン、リタだよ。君がいない間、うちの家政婦をしてもらっていたんだ」
「料理が得意なだけで掃除は嫌いだよ」
強い口調で女性は言った。
「リタは旦那さんと街で食堂を営んでいたけれど、旦那さんに先立たれてしまってね」
「店も閉めたんだ。一人じゃ無理さ。食堂をたたむ話をしていたらモクビリーからお話をいただいて、店の片付けも手伝ってくれて。ここは住まいも近いから助かるよ」
とリタさんは言った。
「そうでしたか」
「あんたたちの子どもができても子守りくらいできるから。じゃあ、帰るよ。次は明後日ね」
リタさんは一日おきに来るようだ。
「リタの飯は本当にうまい。みんなも好きでさ。戦いに勝っても負けてもいつも同じ味で安心したな」
モクビリー様にとっては懐かしい味なのだろうか。魔王を倒そうとしても手下が群がったり、魔王に攻撃ができても回復したり、長期戦になるのも頷ける。
家の中も少し片づけてくれたよう。お鍋が輝いている。
「どうして急に?」
私は尋ねた。
「アンには学校もあるし、人がいれば耐えられることもある」
「耐えられること?」
「なんでもない。さぁ、食べよう」
パンとトマトの煮込み料理だった。
「おいしい」
肉がほろほろ。
「だろ?」
この味が食べてくて、戦いの途中でリタさんに届けてもらったこともあったそうだ。
「畑のトマトもできてるぞ。まだ青いが」
「あとで見に行きましょう」
モクビリー様が彼女を雇ったのは自分のためではなく、私と彼女のためなのだろう。自己犠牲が得意なのは勇者だから?
「緑じゃない?」
畑のトマトを見て私は言った。
「これを青いと言うんだ」
わからない。絶対に緑だ。知らなかったけど赤くならないと毒があるらしい。
「きゅうりもできてる」
曲がってるけど。
「きゅうりは小さいほうが味がいいんだ」
「そうなの?」
採りたてをぽりっと割って口に入れられた。味が濃い。みずみずしい。
知らないことだらけね。見ていても大きくなっている気がしないのに日々、成長している。




