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モクビリー様は夕方まで働いた。そのせいで私はするはずだった洗濯を忘れた。
「今日はここまで。アン、家へ入ろう」
「はい」
さすがのモクビリー様もへとへと。
「臭い?」
ってまた聞く。
「お風呂入りますか?」
「ああ、そうする」
お風呂に入って夕飯。モクビリー様はちょっとお酒を嗜む。
「アンは?」
「国の法律では飲める歳だけれどすぐに赤くなってしまうの」
「見たいな」
と意地悪な顔で笑う。
「だめですわ。変なこと叫ぶかもしれないし」
「聞きたいよ」
と顔を近づけてきた。
「雨の音?」
急に降ってきた。
「ちょうどいい。種まきのあと雨が降ると芽が出やすいんだ」
「へぇ」
モクビリー様との生活では授業で習わないことをたくさん知っているような気がする。むしろこの人と結婚しなかったら無知なままだった。それでも生きては行けたのだろう。きっとこういう生き方があることさえ気づかなかった。
夕飯はちょっと失敗してしまった。肉は焼きすぎると硬くなるのね。スープは薄味だし。モクビリー様にまたおいしいと言ってほしいな。
「眠るか」
あくびをしながらモクビリー様が言う。
「はい」
農作業で疲れていらっしゃるみたい。
モクビリー様は雨が降らない国のこと、遠い国で飲んだパチパチするお酒のこと、切っても死なない魔物のことなどをベッドの中で話してくれる。
「そのときってお酒飲める年齢?」
私は尋ねた。
「国によっては法律がないんだよ」
「そうなのね」
「ん? 今日はやけにアンの匂いがする」
布団のせいかしら。
「私が使っていた布団なんです。ふかふかでしょう? この寝間着も家の者が持ってきてくれたのですよ」
「俺の服より更に脱がせやすそうだが」
「えっ?」
私の口が塞がれた。蝋燭を消してしまったから真っ暗なのでわからない。
キスしてる?
「夫婦になったのだ。いいだろう?」
「モクビリー様、んんっ」
服の中に手が入って来た。
「嫌なことはしない」
だめ。そんなところ、誰にも触られたことないのに。
「や、やめてください」
モクビリー様に覆いかぶされ、押してもびくともしない。
「ずっと我慢しているこちらの身にもなってくれ、アン」
名前を呼ばれただけなのに、ぞくぞくする。足を撫でるように下から上に触れてくる。首元を舐めるのはなぜなの?
「怖いです」
泣いて懇願したらようやく手を止めてくれた。
「すまない」
とぎゅっと体を抱き締められる。
「これは好き」
「うん」
いつかは乗り越えなければならない壁なのだろう。いつになったら怖くなくなるのだろう。モクビリー様が怖いわけではないから、早くそうなるといいな。




