第8話 クエストを終え、冒険者ギルドに戻ると
目的の薬草を採取し終え、俺達は冒険者ギルドに戻る。
簡単なクエストかつ近場なので、朝に受注すれば昼前には帰ってこられる。
ランクが上がれば、これは難しいだろうな。
「これが薬草です」
「はい、ありがとうございます。しっかり数も揃っていますね」
受付の女性は袋の中の薬草を確認する。
不正を見逃さないため、必要なことである。
俺達はそんなことをするつもりはないが・・・・・・
「これでヴィラさんとクロードさんはFランクに昇格ですね。おめでとうございます」
「「ありがとうございます」」
もう昇格してしまった。
これで討伐系のクエストを受けることができる。
「二人とも、おめでとうね。大丈夫だと思うけど、気をつけて頑張ってね」
「もちろんですわ」
ヘルバさんの言葉にお嬢様は自信満々に答える。
本心から応援してくれているのだろうが、先程の話を聞くと少し申し訳ない気持ちになる。
「おいおい、ヘルバじゃないか」
「っ⁉」
いきなり声を掛けられ、ヘルバさんの身体が震える。
その表情は強ばっており、何らかの事情があるように見えた。
声を掛けてきたのは20代ぐらいの男だった。
ヘルバさんと同年代ぐらいだろうか?
彼の後ろには男女が3人いた。
「まだ薬草をせこせこ集めてるのか? それで新人に追い抜かれて可哀想だな」
「・・・・・・」
男の言葉にヘルバさんは反論しない。
言われたことは事実だと思っているのだろう。
だが、その反応は相手をさらに増長させる。
「【薬草狩り】だっけ? 魔物すら討伐できないお前にはお似合いの異名だよな。俺だったら、恥ずかしくて冒険者を辞めちまうよ」
「・・・・・・」
彼女の異名を悪く言う。
たしかに魔物を討伐できず、薬草の採取しかできないのは馬鹿にされても仕方がない。
だが、彼女の仕事ぶりを近くで見て、ただただ言葉通りの意味ではない気がした。
「俺達はもうDランク──いや、あと少しでCランクに昇格できそうなんだよ。羨ましいだろ」
「・・・・・・別に」
ようやくヘルバさんは反応する。
本心はどうかわからないが、気にしないようにしているようだ。
けど、その反応が悪かった。
「あぁ? ヘルバのくせに生意気だな」
望み通りの反応ではなかったせいか、男の表情が怒りに満ちる。
ズンズンと近づいてきて、右手を伸ばしてくる。
(グイッ)
「くっ⁉」
襟首を掴まれ、ヘルバさんの身体が浮き上がる。
相手は筋骨隆々の前衛タイプなのだろう。
比較的小柄なヘルバさんなら簡単に持ち上げられるようだ。
首が絞まった彼女は苦しげな表情を浮かべる。
「薬草しか集められない落ちこぼれが偉そうな態度を取るんじゃねえよ。もっとへこへこ俺達を敬えよ」
男はヘルバさんに命令する。
完全に下に見ているからこその発言である。
実力があるからこそ、そのような考えになったのかもしれない。
「誰が、あんたみたいな奴を・・・・・・」
苦しげな表情を浮かべながらも、ヘルバさんは要求を拒否する。
彼女にも譲れないものがあるのかもしれない。
「そうかよ」
彼女の言葉を聞いた男は呆れたような表情を浮かべる。
少し力が抜け───
「おらあっ」
(グワッ)
「っ⁉」
──他と思いきや、いきなり右手を力強く振るう。
その勢いにヘルバさんの小柄な身体が投げ飛ばされる。
このままでは壁に叩きつけられる。
(グルッ、スタッ)
「えっ⁉」
だが、彼女が壁にぶつかることはなかった。
直前にお嬢様が割って入り、ヘルバさんを救ったからだ。
「あ、ありがとう」
「これぐらいなんでもないですわ。大変お世話になりましたから」
感謝を伝える彼女にお嬢様は笑顔で答える。
ヘルバさんの頬が赤くなっている。
ああ、またこうなってしまったか・・・・・・
「邪魔してんじゃねえよ」
男はお嬢様に文句を言ってくる。
明らかに自分が悪いのに、まったくそのことを反省していなかった。
そういう男はお嬢様が一番嫌いな人種だった。
「非力な女性を集団で虐め、大怪我を負わせようとした──許せませんわ」
お嬢様はビシッと指さし、宣言した。
あいかわらずこの人は・・・・・・
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