第7話 薬草採取冒険者の苦悩を聞いて
あれから採取系クエストをこなし、10回目のクエストを受注した。
これをクリアすれば、俺とお嬢様は晴れてFランク冒険者に昇格する。
Fランクになれば、ゴブリンなどの魔物の討伐系クエストを受注できるようになるのだ。
「そういえば、ヘルバさんはFランクなんですよね?」
薬草を採取しながら、俺は気になったことを質問する。
世間話をしながらも手は動かしている。
「そうだけど、それがどうしたの?」
「いえ、Fランクなら討伐系クエストを受けないのかな、と。収入的にもそちらの方がいいでしょう?」
ここ数日を彼女と過ごしていて、疑問に思っていた。
彼女の動きはさほど悪くはない。
戦闘している姿を見たわけではないが、採取の際の身体の動かし方はスムーズだった。
だからこそ、いつまでも採取系クエストを続ける理由がわからなかった。
「私、武器を扱う才能がなかったの」
「才能ですか?」
「そう。いろんな武器を使ってみたけど、どれも上手くはいかなかったの。大型の武器は持ち上がらないし、小さな武器は振ったらすっぽ抜けてしまう。遠距離武器も狙ったところには飛ばなかったわ」
「それはなんとも・・・・・・」
話を聞いて、どう反応して良いかわからなかった。
おそらく彼女は色々と挑戦したのだろう。
結果、武器を扱うのを諦めたのだ。
そのため、戦闘ができずに討伐系クエストを受けなくなったわけだ。
「まあ、ある意味ありがたい話なんだけどね」
「というと?」
「冒険者になったあとに気づいたんだけど、私は血を見たりするのが苦手だったみたい。初めての討伐系クエストで斬られて血を吹き出すゴブリンを見て気持ち悪くなっちゃったの」
「ゴブリンが気持ち悪いからではなく?」
「ゴブリンそのものを見てならなかったから、血の方が駄目だったんだと思うわ」
「なるほど」
話を聞く限り、たしかに血が駄目なんだろう。
冒険者としてはかなり致命的な欠陥かもしれない。
敵味方問わず、血を見る機会には事欠かない職業だ。
「まあ、そのおかげで採取系クエストに専念できるようになったから良かったわ。まあ、周囲からは冷たい目で見られているけど」
「・・・・・・」
彼女は笑みを浮かべているが、不本意な気持ちも隠せていなかった。
やはり現状に満足できていないのだろう。
「そういえば、ヘルバさんは【薬草狩り】と呼ばれているんですよね? ということは、採取しているのはほとんどが薬草ということですか?」
「まあ、そうね。他にも毒草とか痺れ草も採取しているけど、大まかな分類で薬草に入るかしら」
「他の素材を採取したりしないんですか?」
素材の需要は薬草系だけではない。
魔物の身体の一部や鉱物なども使われるので需要があるのだ。
魔物に関しては難しいかもしれないが、鉱物などなら血を見ることはないと思う。
「残念ながら難しいわね」
「そうなんですか?」
だが、あっさりと否定されてしまう。
理由が分からず、思わず聞き返してしまう。
「鉱物などの採取技術は私にもあるわ。でも、採取できる場所に行く実力が私にはないの」
「実力ですか?」
「素材に使われるような鉱物の側にはゴーレム系──【土属性】の魔物たちの素になっていることが多いの。血を見ることは少ないだろうけど、ゴブリンとすら戦えない私では力不足なのよ」
「なるほど。そんな理由が・・・・・・」
彼女の説明に納得してしまう。
人間にとって需要のある素材は魔物にとっても需要がある可能性がある。
それを奪おうとするわけだから、当然戦闘になるだろう。
彼女の言うとおり、たしかに力不足かもしれない。
「そういう素材を自分で採取したい気持ちはもちろんあるわ。でも、分不相応だと自覚はしているの」
「そんなことは・・・・・・」
「私みたいになっちゃだめよ? まあ、才能のある二人ならそんなことはないかしら」
「・・・・・・」
フォローしようとしたが、何も言葉が浮かばなかった。
今の俺が何を言っても、根拠のない慰めにしかならない。
失敗を経験した彼女を立ち直らせるのは難しいと思う。
お世話になった彼女だからこそ、なんとかしてあげたいけど・・・・・・
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