第5話 実力は自分ではわからないもの
「俺は冒険者になるつもりはないです」
「他の冒険者から信頼されないからか? そんなこと、あるわけないだろう」
「え?」
反論しようとしたが、予想外の言葉に驚きの声を漏らす。
一体、どういうことなのだろうか?
「クロードだったかい?」
「はい」
「あんたは自分の能力を過小評価しているよ。そして、冒険者という職業に対してもね」
「どういうことですか?」
言葉の意味が分からず、思わず聞き返してしまった。
正確な評価をしているつもりだが、どこが過小評価なのだろうか?
「私から見て、あんたの能力はかなり高い。すでに中堅──Cランクに匹敵するだろうね」
「はぁ」
「そして、まだまだ若いから、経験を積むことでもっと高みに至れるだろうさ。Aランク──いや、私と同じSランクになることも夢じゃないだろう」
「そんなにですか?」
想像以上の褒め言葉に実感が沸かない。
たしかに周囲より高い実力を有していると思うが、自分がそこまで上がる想像ができない。
「そんな能力を持った奴を腐らせるのはギルドマスターとして看過できない。だからこそ、あんたは冒険者になるべきなんだよ」
「・・・・・・それは理解しました。ですが、周囲の信頼はどうするのですか? 特定の一人を優先するような冒険者など信頼されるわけがない」
評価してくれるのはありがたいが、俺の行動原理が信頼されない限りは冒険者になることはできない。
自分のことだからこそ、誰よりも理解できる。
だが、そんな僕の様子を見て、リオネスは首を横に振る。
「別にあんたがお嬢様を優先することは構わないさ。だが、必ずしもその行動が周囲の信頼を損なうものじゃないさ」
「どういうことですか?」
意味が分からず、聞き返してしまう。
他者よりお嬢様を優先するのに、どうして信頼を損なわないのだろうか?
「例えば、魔物が強力な攻撃をしてきたとする。そのとき、あんたはどうする?」
「攻撃にもよりますが、おそらく軌道を逸らそうとしますね。お嬢様に被害がいかないように」
「そうだろう。だが、それは冒険者としては当然の行動だ。他の仲間に被害が及ばないように行動するんだよ」
「でも、お嬢様を優先して・・・・・・」
思わず反論しようとする。
彼女の言い分がわからなくはないが、お嬢様を優先している事実は変わりない。
だったら、信頼など得られるはずは──
「優先したって良いじゃないか」
「は?」
呆けた声を漏らしてしまう。
とんでもないことを言われてしまったからだ。
「一般の冒険者だって、守る相手の優先順位はあるさ。例えば、回復ができるが攻撃をできない者を一番に守るの」
「それは・・・・・・」
「そもそも一人しか守れないと思っているのがおかしいね。あんたの実力だったら、仲間全員を守ることだってできるはず」
「そうですか?」
イマイチ実感がわかない。
おそらくお嬢様を守ることに集中して、他を守るはできないと思うけど・・・・・・
「まあ、他の冒険者とパーティーを組むのはもう少し経験を積んでからだろう。それまでは低ランクのクエストを受けて、自分の実力を把握しな」
「・・・・・・わかりました」
完全に納得はできないが、実力を把握するのは必要だと判断した。
今まではやらずにできないと思っていたが、彼女の話を聞いて間違いだと感じたからだ。
やって損はないだろう。
「じゃあ、これからもよろしくね、クロード」
「かしこまりました、お嬢様」
俺が冒険者になるのが嬉しかったのか、笑顔で話しかけてくるお嬢様。
その笑顔を見れただけでも、悪くはなかったのかもしれない。
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