第2話 冒険者ギルドに現れたとんでもない二人
ようやく主人公(予定)の登場です。
「では、行かせてもらいますわ」
仰向けの男を放ってヴィラは受付に向かう。
先程の出来事のせいで周囲の視線は集中する。
「このクソアマぁっ!」
仰向けだった男が起き上がり、ヴィラに遅いかかった。
先程と同じような直線的な動きではあったが、助走で勢いがついてしまった。
その手には片手剣が握られていた。
「くっ⁉」
不意をつかれたせいでヴィラは焦った表情を浮かべる。
思わず右手に魔力を集中させ、黒い剣を作り出す。
そのまま男に向かって振ろうとして──
「そこまで」
「「っ⁉」」
一人の青年が現れ、それぞれの手首を掴んでいた。
そのせいで二人は攻撃を止められていた。
「誰だ、あいつ?」
「いきなり現れなかったか?」
「というか、あの馬鹿を簡単に止めてるぞ? 力だけならかなり強いのに・・・・・・」
周囲からざわめきの声が聞こえる。
冒険者だからこそ、いきなりの乱入者の登場が気になったのだろう。
「やはり問題を起こしましたね、お嬢様」
青年は呆れた様子でヴィラに話しかける。
だが、その言葉から彼女が問題を起こすことは予想していたことがわかる。
「仕方がないですわ。入った瞬間に話しかけられたのですから」
「それは見ていたので知っていますよ。ですが、もう少し穏便に済ませられませんでした? 例えば、嘘でも「後で時間を作る」とか言うとか」
「「嘘をついてはいけない」と教えてくれたのはクロードでしょう?」
「・・・・・・そうでしたね」
思わぬ反論に青年は少し申し訳なさそうな表情をする。
後悔している雰囲気もある。
「ですが、それは流石にやり過ぎです」
「あ」
彼の視線が黒い剣に向けられる。
黒いもやがかかった──いや、黒いもやで作り出された剣は誰が見ても禍々しさがあった。
指摘を受け、ヴィラは焦ってしまう。
「だって、いきなり襲い掛かられたのよ。反撃するのは当然でしょう」
「もちろん、反撃するのは当然でしょう。ですが、お嬢様なら素手で制圧するのは可能だったはずです」
「だから、不意を突かれて・・・・・・」
「だとしても、です。不意を突かれても、常に冷静に対応しなければいけません」
「むぅ」
言い訳をするも反論され、思わず頬を膨らませるヴィラ。
大人っぽい雰囲気のある彼女だが、その反応から少し幼さがあった。
「てめぇ、とっとと離せ」
今まで無視され続けていた男が怒り、顔面に向かって蹴りを放つ。
手首を掴む手を外そうとしたが、なぜか外すことができない。
なので、自由に動かせる足で攻撃をしかけたのだ。
経験値のある冒険者だからこそ、状況に合わせた対応を可能にしているのだ。
だが、冷静さを完全には取り戻せてはおらず、相手との力量差を判断できていなかった。
(スカッ)
「なっ⁉」
蹴りが当たる直線、青年は体勢を低くする。
反対側で掴んでいるヴィラも引っ張られて同じように動く。
そして、掴まれていた手首を離された男は蹴りが回避され──
(ガンッ)
「いっ⁉」
体勢を崩して床を蹴ってしまう。
あまりの痛みに涙目を浮かべた。
「申し訳ありませんが、終わりにしましょう。これ以上は怪我をさせてしまいます」
痛がる男に青年は提案をする。
周囲への迷惑を考え、これ以上暴れるのは避けたかったのだろう。
だが、その言葉遣いが悪かった。
「舐めるんじゃねえっ!」
下に見られたと感じた男が激高する。
持っていた片手剣を振りかぶる。
(パンッ)
(ドサッ)
「「「「「っ⁉」」」」」
破裂したような音と共に激高した男は前のめりに倒れた。
躓いて転んだ感じではない。
倒れた男は気を失っているのか、起き上がる様子はなかった。
いきなりの光景に全員が驚愕した。
「ふぅ」
青年が一息つき、汗を拭う。
おそらく彼が何かしたのだろうが、その場にいた誰もわからなかった。
なぜなら、動いている様子はなかったからだ
「流石はクロードね。でも、あなたも問題を起こしたわね」
「・・・・・・俺は良いんです」
「そんなわけないでしょ」
倒れた男を放って、言い争いをする二人。
その光景がさらに驚きを生んでいた。
二人にとって、気にならない程度の出来事だと証明されたからだ。
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○キャラクター紹介(簡易)
・クロード
ヴィラに仕える執事。
幼い頃にヴィラに救われてから、彼女に生涯仕えることを熱望。
ある事件を機にその気持ちが増し、ほぼ彼女への狂信者となっている。
純粋な戦闘能力だけならヴィラを上回っているが、ほぼ彼女を守るためだけに使われている。
黒髪でどこかくらい雰囲気のあるイケメン。
180cmぐらいの細身。




