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第1話 悪役令嬢は冒険者ギルドにやってくる


 建物の中には大勢の人々がいた。

 知り合いと近況を話す者。

 カウンターで受付の女性と話す者。

 掲示板で仕事の依頼を吟味している者。

 昼間から酒を飲んで管を巻いている者


 それが冒険者ギルドの日常だった。

 王侯貴族のいないこの都市でもっとも大きな組織である。

 様々なクエストを受け、稼ぐことができる冒険者は人気の職業だ。

 近隣にダンジョンという魔物の巣窟が複数あることで冒険者ギルドが設立され、この都市に多くの冒険者がやってきた。

 その結果、他国の主要都市並の規模になったのだ。


「ここが冒険者ギルドなのね」


 ワクワクしたような声音が聞こえ、周囲の視線が一点に集まる。

 そこには一人の少女がいた。

 十代半ばぐらいの年齢だろうか、どこか世間知らずな雰囲気があった。

 ドレスのような服を着ているのもその要因だった。

 どこかの貴族令嬢だろうか?


「おいおい、嬢ちゃん。ここがどこかわかっているのか?」


 一人の冒険者が少女に話しかける。

 入り口付近のテーブルで酒を飲んで管を巻いていた者だ。

 顔は赤くなっており、明らかに酔っている。


「もちろんですわ。冒険者ギルドでしょう?」


 少女は自信満々に答える。

 おそらく彼女は目的があって、冒険者ギルドにやってきたのだろう。

 だが、ここは彼女のような貴族令嬢が一人で来るような場所ではなかった。


「なるほど、クエストを依頼しに来たんだな。だったら、俺が受けてやろう」


 男は偉そうな態度で話を進める。

 荒くれ者の多い冒険者ギルドに貴族令嬢が一人でやってくる理由で最も考えられるのは「クエストを依頼しにきた」である。

 態度はともかく、見当外れな推測ではなかった。

 自分の実力に自信があるのか、整ったルックスの彼女とお近づきになれることを狙ったのかはわからないが・・・・・・


「お断りしますわ」

「なっ⁉」


 だが、少女はあっさりと断った。

 その反応に男は驚いてしまう。

 周囲も同様で全員がじっと状況を見守る。


「第一、私はクエストの依頼で来たわけじゃないですわ」

「はぁ? だったら、何のために──」

「もちろん、冒険者になるためですわ」


 少女ははっきりと宣言した。

 たしかに冒険者になるためには冒険者ギルドに来るのが当然である。

 その目的のためなら、彼女がこの場に来たことはなんらおかしくはない。


「はははっ」


 だが、その目的を聞いた瞬間、男は馬鹿にしたように笑う。

 周囲も彼ほどではないが、笑いをこらえている者が多かった。

 笑われている理由が分からず、少女は思わず質問する。


「なにがおかしいですの?」

「冒険者ってのは温室育ちのお嬢様に務まる仕事じゃないんだよ。どうせペンより重い物を持ったことはないんだろう?」

「こう見えて、学院では魔法の授業で好成績だったのですが?」

「所詮、お貴族様の頭でっかちな理論を学んだだけだろう? そこで成績が良くたって、実践で使い物になるかはまた別だぜ」


 男の言っていることももっともだった。

 冒険者は様々なクエストを受注するいわゆる何でも屋のような職業だ。

 その中には魔物と戦う危険なクエストも多い。

 命の危険にさらされることもざらにあるのだ。

 しかも、実践では何が起こるか分からず、状況に合わせて臨機応変に動く必要がある。


「そんなこと、やってみないとわからないでしょう」

「お嬢ちゃんみたいな可愛い子は俺みたいな強い奴に守られてれば良いんだよ。こう見えて、女の子は大切にするんだぜ」

「ごめんなさい。私の琴美じゃないですわ」

「なっ⁉」


 自分のものにしようとしたのに、ノータイムであっさりと断られる。

 今度は彼が周囲に笑われる立場だった。

 フラれたこともかっこ悪いが、不細工とは言わないが女性からモテるような見た目をしていない彼の先程の行動は分不相応だった。

 それも笑われる理由の一端である。

 だが、プライドの高い彼は笑われることが許せなかった。

 当然、その怒りは目の前の少女に向けられる。


「おとなしく俺の言うことを聞けよ」


 男は右手を伸ばし、少女に掴みかかった。

 怒りで直線的な動きにはなっているが、冒険者の身体能力のおかげでかなり速い。

 華奢な貴族令嬢が対処できるはずもなく──


(ドオオオオオオオオオオオオンッ)

「「「「「はっ⁉」」」」」


 次の瞬間、予想外の出来事が起こった。

 その場にいた全員が驚愕で口を開いた。


「こう見えて、私は強いですわ。あなたを倒せるのなら、冒険者としてやっていけますわよね?」


 仰向けに倒れる男に少女は笑顔で語りかけた。

 その光景に誰もが目を疑った。







作者のやる気につながるので、読んでくださった方は是非とも評価やブックマークをお願いします。

★5でも★1でもつけていただけると幸いです。


○キャラクター紹介(簡易)

・ヴィラ=フェロニー

 悪役令嬢として婚約破棄され、自由を勝ち取った公爵令嬢。

 夢だった冒険者として隣国の都市にやってきた。

 近接戦闘および魔法による遠距離戦闘も可能。

 貴族令嬢として教育を受けてきたので、頭も悪くはない。

 光り輝くほど金髪と鋭い目つきが特徴。

 160cm程度の身長で出るところは出ている。

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