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第10話 お嬢様は大立ち回りする 2


(チラ)

「「「・・・・・・」」」


 視線を男の仲間に向ける。

 だが、まったく動いている様子はなかった。

 右肘の関節を拘束され、このままでは折られてしまう可能性がある。

 その状況にまったく焦った様子はなかった。

 信じているのだろうか?


「あめぇんだよ」

「っ⁉」


 男の行動にお嬢様は驚愕の表情を浮かべる。

 完全に関節を極めたはずなのに動かれたからだ。

 腕にしがみつく彼女をそのままに無理矢理立ち上がる。


「おらぁっ!」

(ゴキッ)


 男は右腕を思いっきり振るう。

 その勢いでお嬢様は吹き飛ばされてしまう。

 だが、その反動で男の腕から鈍い音が聞こえてくる。

 おそらくお嬢様を無理矢理引き剥がした反動で関節が外れたのだろう。


(ゴキゴキッ)

「いてぇな」


 男は関節を無理矢理はめてしまう。

 顔をしかめているが、その程度で済むような痛みではないはずだ。

 どれだけがんじょうなのだろうか?


「化け物ですわね」

「おいおい、ひでえこと言うなよ」


 お嬢様が思わず呟いてしまう。

 まあ、外された関節を普通に嵌めている様子を見れば、仕方がない反応である。

 正直、俺も若干引いている。


「さて、攻撃がまったく通用しない相手にどうする、お嬢ちゃん?」


 今度は男が煽る番だった。

 先程煽られたのを根に持っているのだろう。

 やはり心が狭い男である。


「どうするの、クロード君。このままじゃ、ヴィラちゃんが負けちゃうよ」


 この状況にヘルバさんが慌ててしまう。

 お嬢様は女性にしては力がある方ではあるが、殴打によるダメージが男に通るほど力があるわけではない。

 相手の力に合わせたカウンターも対応されれば、効果も期待できない。

 そう考えれば、かなりまずい状況なわけだ。


「これ以上は難しいと判断すれば、助けに入りますよ」

「今がそうじゃないの?」


 信じられないといった表情で彼女はこちらを見てくる。

 普通に考えれば、今の状況は助けに入るべきだろう。

 だが、この程度で助けに入るようでは今後もかなりの回数を助けないといけないだろう。

 それよりもピンチを自分で解決する力をお嬢様に身につけてもらいたい。


「その程度で勝ち誇るなんて、先を見通す力もないようですわね」

「・・・・・・お嬢ちゃんにはあるのかい?」


 お嬢様の煽りに男は冷静に反応する。

 怒りにまかせた行動で投げ飛ばされたことを警戒しているのだろう。

 なので、先程とは同じ流れにはならない。


「もちろんですわ」

「じゃあ、見せてもらおうか?」


 男は再びお嬢様に襲い掛かる。

 先程と同じようにジャブの嵐が襲い掛かる。

 そのジャブをギリギリのところでお嬢様は見切る。


「先を見通せないのはお嬢ちゃんの方だなっ!」


 男は高らかに宣言する。

 それに呼応してジャブのスピードが上がった。

 どうやら先程までは全力ではなかったようだ。

 ギリギリだった回避は追いつかず、不完全ながら当たり始める。

 そして、ついに顔にジャブが当たり──


「ここですわ」


──そうになった瞬間、お嬢様は相手の懐に潜り込む。

 そして左手で右腕を掴み、そこを軸に身体を半回転させる。


(ドゴッ)

「かはっ⁉」


 お嬢様の右肘が男の鳩尾にめり込む。

 あまりの激痛に男の顔が歪む。


(グルッ、ドオオオオンッ)


 その流れのままお嬢様は全身を回転させる。

 背負い投げの要領で男を投げ飛ばし、地面に叩きつけた。


「私の勝ちですわね」


 倒れた男を見下ろし、お嬢様は高らかに宣言した。







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