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違う世界

「準備できました?さあ、リノさん、いきましょうか。」

うん、と頷いてシオンの後ろについて外に出ると、綺麗な石畳の道、通りを行く人々、木とレンガで作られた家々が目に入り、

スッと吹き抜ける爽やかな風、温かい夕日を体に受けた。

おお、シオン、おでかけかい、そんな声が通りを行く人から投げかけられる。

ここは…私の知ってる世界じゃない。そんな確信をその風景、光景から受けた。

「ポルタの町ははじめてですよね。おいしいとこ、紹介しますね。もうすぐそこですから。」

シオンが振り返りながら話かけてくれる。

「なんか…すごく…いい街ですね。」

「そうですか?」

シオンはニコッと笑った。

なんか、死後の世界とかじゃない…。最近アニメとかで流行ってる…異世界系?みたいなやつだっけ…。

私ほんとにトラックに跳ねられて…。

別の世界に来ちゃったのかな…。

「リノさん?大丈夫ですか?もしかして、まだ具合が…」

シオンが心配そうに話しかけてきた。

「あ、うん、大丈夫ですよ。少し考え事してただけで…」

シオンの顔を見ながら答えると、視界の端に馬に乗った男性が通り過ぎるのが見えた。

馬とかはいるんだ…そう思いながら馬に乗った男性に目をやると、甲冑と剣を身に着けていることに気が付いた。

「あっ…剣!?」

驚き思わず声が出てしまった。

「えっ、珍しいですか?」

シオンも驚いたような顔でこちらを見ている。

「う、うん少し…」

「リノさんの暮らしてたところは平和なんですね。」

「平和…そうですね。私の暮らしてたところは。」

「そんな国があるんですね。私はこの国からあまり出たことがありませんでから…知りませんでした。」

少しシオンが悲しそうな、物憂げな顔をしたような気がした。

「着きました!ここですよ。」

シオンが入った店についていくと、肉とパンの焼けるいい匂いが鼻を通り抜けた。

「わぁ…いいにおい」

思わず口にでてしまった。

「おー、シオン。来たのかい。あれ、そこのお嬢ちゃんは?」

お嬢ちゃん?私のこと?とリノは思った。

「この人はリノさん。私の叔父さんが森で倒れてたのを見つけて連れてきた子だよ。」

「ああ、その子が!お嬢ちゃん、よかったなあ。見つけたのがこの子の叔父さんで。あんな森でなにしてたんだい?」

「あ、私その…」

何と答えていいかわからなかった。

「今、リノさん、記憶がはっきりしないみたいなんだ。だからそのへんで!とにかくいつものお願い。」

シオンが店主のおじさんに言ってくれて助かった。

「そうか…あいよ、好きなとこ座ってな。」

そういって店主も作業に戻っていった。

「さ、たぶんすぐできますから。」

店内には何組か客がいたが、空いている場所にシオンと向かい合わせで座った。

「…ありがとう、ごちそうにまでなっちゃって。」

「本当に気にしないでください。」

「そういえば、私…その…」

「はい」

シオンにもしかすると、トラックに轢かれて死んでしまったことで、この世界に転移してしまったのかもしれない、ということを伝えようとしたが、

何と説明したらいいか、信じてもらえるのか、と思い言葉が上手くでてこなかった。

「…どうしましたか?」

「いや、やっぱり何でもない。」

「?」

シオンはまたも不思議そうな顔をした。

「…あの、リノさんの住んでた国ってどんなところなんですか?剣をあまり見たことはないんですよね?」

「あ、はい。あまり、というより本物をみたのは初めてかも。」

「魔法も?」

「え、魔法?」

「…魔法も?」

「魔法…とかあるんですか…?」

「じゃあ、剣以外の武器を見たことも?」

「うーん…あんまり…ないです。私の住んでたところは割と平和だったから。」

「えっ、じゃあ魔物もいないんですか?」

「…魔物?いないです!」

シオンに立て続けに質問されたが、魔法と魔物が存在するということが信じられなかった。というかあるの?

「そんな国が…あるんですね?」

「…う~ん…」

国というか、世界だと思うがなんと説明すればいいかわからなかった。


「はい、おまちどう」

店主が料理を持ってやってきた。

パンに肉、チーズを一緒に乗せて焼いたピザのような食べ物が目の前に置かれていった。

「あ、ありがとう」

シオンは気づいて店主に礼を言った。

「すごくおいしそう…」

リノが言った。

「おいしいですよ、是非食べてください。」

「はい、いただきます。」

一口ほおばると、カリカリしたパン生地と、肉、チーズがなんとも絶妙で思わず目を見開いてしまった。

「おいしい!」

「でしょう?よかったです。」

シオンが笑った。

「それで…リノさんは、たぶん遠いところから旅をしてきたんですよね?」

旅というより、ワープ?と思ったが、黙っていた。

「ただ、リノさんは記憶が少し曖昧なんですよね…」

シオンは考えるようにつぶやいた。

「私…色んな国について知りたいんです。」

シオンが言った。

「え?」

「すいません、いきなり…。リノさんのように色んな場所にいって色んなものをみてみたいんです。」

「え、それって旅行とか、観光ってこと?」

「はい…ただ、近年魔物が活発化してきたりしていて、あまり冒険者の往来もありませんし、危険だから…できないんです。だから…」

「私もリノさんの旅についていきたいなって…」

「え…」

「…だめですか?」

「いや、私旅とかあんまりしたことなくて、その…」

「…ごめんなさい、いきなりこんな話をして…困りますよね。」

「あ…」

「さ、もう帰りましょうか。さっき起きたばかりだし、家でゆっくり休んだほうがいいですよね。」

「…うん。」

シオンがとても悲しそうな顔をしたことに、そしてなにもフォローしてあげられなかったことが悔しかった。

…私も最後に旅行したのいつだっけ…

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