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エピローグ.2 デビュー~高校生

中学3年~の話。長め・・エピローグ1の倍以上あります。2つに分けようかとも思いましたが、そのまま1話で載せることにしました。若干説明多めかも?

(注)後半亮が少しキモイ?です。ご容赦ください。

 中学3年生になって、花粉症が落ち着いてきた頃、亮が、

「なんかノドの調子が変わった。よくなったかも」

 朱里と学校に向かいながら言ってきた。「ノドが変」と言い出してから約10か月、変声期が落ち着いてきたのかもしれない。


 その週末、プロデューサーに会いに行った亮は、帰りに朱里の家に来ると、

「デビュー決まった!」

 やったー!と、嬉しそうに叫んだ。

「正確には、これからデビューに向けて進めていくんだけど・・ボイトレ、少しハードにして、デビュー曲決めてー・・うーん、忙しくなりそう」

「そっか、良かったね」

 忙しくなる=会う時間が減ることになるけれど、亮の夢が叶うのだ。朱里としても、応援したいと思っていたので、素直に喜ぶ。

「うん、ありがと。まぁ、朱里と会う時間が減りそうなのは、すごく残念なんだけどー・・」

 そう言って、亮はコテッと朱里の膝の上に寝転んできた。朱里の部屋のソファーに並んで座っていたのだが、亮は朱里に膝枕された状態になり、見上げている。その状況を理解すると、朱里は顔が真っ赤になる。

「ち・・ちょっと・・」

 手の置き場に困りながら、朱里が照れまくっていると、亮はクスクスと笑い、

「朱里、全然慣れないねぇ」

 寝転んだまま、少し呆れたかんじに言う。

「う・・だって急に・・」

 急なことには、すぐ対応できない。だからと言って、予告されても照れるものは照れる朱里だが、亮はどこか嬉しそうに、起き上がりながら問いかける。

「相変わらずだなー朱里は。じゃあ、抱きしめていい?」

 問いかけてはいるが、確定であることは朱里も分かっているため、しばし心を落ち着ける。


「うん」

「待たせすぎー」

 少しして朱里が頷くと、笑いながら、亮は朱里の肩を引き寄せ抱きしめた。亮ばかり落ち着いていてずるいと思う事もあったが、今、朱里は亮の胸に顔をうずめている状態で、そうなると亮の激しく響く心音が聞こえるので、亮もドキドキしてくれていることは理解していた。それでも、からかうように言われて、

「うるさいのっ」

 と言ってしまうことは、分かってほしいと朱里は思う。

「はいはい、好きだよ、朱里」

 分かっているくせに、また不意打ちで言ってくる亮に、いつも振り回されている朱里だった。



 朱里と亮が付き合い始めて2年が経つ、中学3年の夏休み少し前、亮からお願いがあると言われる。

「朱里、作詞家になるつもりは無い? オレ、朱里の詩を使いたいんだけど」

 それは1年くらい前から言われていたことだった。そろそろ朱里も進路を確定させる時期だ。ピアニストにはなれるとも、なるつもりもなく、声楽の道も考えてはいなかったが、音楽に関われることがあればとは思っていた。作詞家についても全く考えていなかったわけではなかったが、以前は兄のバンドがデビューすることがあれば、ついていくのも良いかもしれないと思う程度だった。だが、亮と付き合うようになって、亮のプロデューサーや社長たちと会うこともあり、朱里の詩が評価されることもあったため、作詞家の道も、意識するようになってきていた。


 また、二人の付き合いに関しては、OKをもらえている。ただし、公表は、「亮が成人した時、交際が続いていたら」ということになった。亮は早生まれ、しかも3月生まれなので、少しでも早く公表したい、できればデビューの時に公表したい亮としては、別れるつもりもないため、反論したが、プロデューサーとしては、デビューの際に、「彼女が居る」ことが話題で売り出したくはなく、社長としても、成人まで一人の人を想い続けていたというのは、亮のイメージ的に良いなど説明される。デビューの頃に公表すれば、朱里が好奇の目にさらされることになること、そして、「別れるつもりは無いだろ?なら、問題ないではないか?」と言われれば、亮も頷くしかなく、結局、「成人まで秘密」ということになった。


「デビュー曲でね、使いたいって思ったんだけど、オレがデビューするんだから、まずは自分の作詞作曲したものが良いってプロデューサーに言われてね。でもオレ、諦められなくて・・だって、プロデューサーだって、朱里の詩、本気で気に入ってたから。したらね、朱里と、朱里は未成年だから、朱里の親の許可があれば、どこかのタイミングで使うのはいいって言ってくれたんだけど・・」

(はい?)

 朱里が作詞家になることについて考えていたら、何故か知らぬ間に話がかなり進んでいた。1年くらい前から話していたとはいえ、急展開すぎる話に朱里は驚きを隠せなかった。ただ、亮がそうしたいと思って、話を進めていたわけだが、朱里も、自分の詩を亮に役立ててもらえるなら、亮のためになるのなら、そんな道も悪くないと思い始めていた。

 そして、朱里は心を決めると、

「うん、いいよ。やる。やりたい!」

 亮に告げると、満面の笑みで喜ばれた。


 そうと決まれば、まずは両親に話さなければならないわけで、今は、夏休みに日本でツアーするため、家にいることが多いため、二人はすぐ話すことにした。両親には、亮と付き合い始めてすぐ会わせていて、亮が歌手になるために頑張っていることや、朱里の作詞についても話すことはあったため、この話はけっこうすぐに受け入れられた。ただ、1度事務所の社長やプロデューサーに会って、直接話をしたいと父が要望し、父は何故か自分の顧問弁護士まで連れて、細かい内容などを色々調整していたようで、その後、朱里は亮と同じ事務所に作詞家として契約することになった。学生の間は、学校の勉強が最優先。基本は亮への詩の提供であるが、他の人への提供も作詞依頼を受けることも可能とすること。これは、いずれ兄のバンドがデビューすることがあった際の処置だと後から聞いた。そして、もし亮と別れたとしても、作詞家としての扱いは解除しないことなど両親が要望し決められた。



 ―――――――――――――――――――



 朱里と亮は中学を卒業し、亮は15歳になり歌手デビューした。もちろんあっという間に人気歌手の仲間入りを果たして、二人は高校生になった。

 高校生になって数か月後、朱里の作詞した曲が発売された。もちろん、朱里がその詩を書いていることは、家族以外は知らない。朱里は亮に詩を書くにあたって、初めて書いた時から、“らいと”という名で書いていたので、その名前で出し、RYOは「オレの作詞の先生」と周囲には言っていた。怜は気づいていた可能性はあるが、高校の友人は、朱里と亮の関係すら知らないわけで、朱里は「RYOのファン」という立場で過ごしていた。


 そんな中、兄のバンドが、RYOとは別の事務所からメジャーデビューすることが決まる。しばらくして、『circuit(サーキット)』からも朱里(らいと)作詞の曲が出される。それまでも、同じ事務所の人から作詞依頼が来ることが数回あったが、circuitに書いたことで、他からも依頼が来て、朱里が高校2年生の夏休みの少し前から、忙しい時期を過ごすことになった。その頃、夏休みということで、亮も全国ツアーを行うことになり、地方へ泊りがけで行くことが増える。


 毎日メッセージのやり取りはしていたものの、会話することが減り、簡素なやり取りになってきた頃、

(このまま関係が途切れてしまうのではないだろうか・・)

 突然とてつもない不安感に朱里は襲われた。

(会いたい、話したい)

 とは思えど、亮はツアーの真っ最中で、今の時間はそろそろ23時を迎える。きっと疲れているのではないだろうかと、連絡は諦めようかとため息をつく。

「はぁ・・」

(今、亮はどこにいるんだっけ?)

 そんなことすら把握してなかった自分に驚く。スマホを手に取る。亮とのメッセージに確か書かれていたはずと、確認し始めると、


 ―――コンコン


 部屋のドアがノックされた。今は夕飯もお風呂も済ませ、寝るまでソファーでまったりしている時間だ。そんな時間に部屋にくるのは、兄くらいだろうと思い、

「はい」

 スマホを見たまま返事をすれば、扉が開く。


 ―――ガチャ


「朱里、久しぶり」

「え?」

 亮の声が聞こえて、朱里は驚き、手からスマホが落ちる。現れたのは、亮だった。


(幻・・じゃないよね?)


 と、思っていると、ガバッと勢いよく亮に抱きしめられた。

(ホントに亮だ)

「あー・・朱里だぁ」

 抱きしめながら、亮も懐かしそうにつぶやいていた。


「なんで、ここにいるの?」

 疑問が現れて問いただす。さっき確認した内容によると、今日は北陸へ移動して、準備をして明日からライブだったはずである。

「朱里に会いたかったから。会って話がしたかったから・・遅くにゴメン」

 それは少し前に朱里も思っていたことだったので、亮に抱きしめられたまま、プルプルと首を横に振った。


 しばらくすると、

「はぁー・・やっと朱里を補給できた」

 まるで朱里が栄養ドリンクかのように、つぶやいた亮は、ようやく朱里の体を離して、顔をあげた。その顔を見た朱里は、

(うわっ、顔色わるっっ)

 高校生とは思えないほど、亮の顔色はくすんでいて、肌の調子も悪そうに見えた。

「ちょっと、大丈夫なの? あっ、沙織さんに何か・・」

 そう言って、朱里が立ち上がり扉へ向かおうとすると、手を捕まれ引き留められる。

「亮? どうしたのよ・・」

 亮の行動が読めず、戸惑っていると、両手で手を握りしめられる。

「名前・・久しぶりだと染みる・・あぁ朱里の手だぁ・・」

 亮がおかしい。いや、北陸にいるはずなのに、ここに居る時点で十分おかしいのだが、朱里に会いたいと暴走して、来てしまうくらい亮ならありえると思えてしまう。


「朱里、オレと一緒に暮らそう」


 朱里が自分の手を亮ににぎにぎされている様子を見ていたら、突然亮が真面目な顔してはっきりと言った。

「いやいや、それは無・・」

 無理と言おうとしたら、口を塞がれた。亮のキスによって。最近は、こういう突然のキスにも大分慣れてきた朱里は、自然と目をつぶる。ただ、

(一緒に暮らすって、どうするつもりよぉ)

 内心では、戸惑いまくっていたわけだが。更に一度唇を離したあと、

「も一回」

 と、亮は要求し、再びキスしてきたものだから、軽いパニックに陥っていく。


 キスを終え離れた亮は、頬を赤く染め幸せそうな顔で、

「朱里の味だぁ」

 と、満足気につぶやいた。

(さっきからなんか本音だだ漏れしてない?)

 亮の普段見せない様子に、訳がわからなくなってくる。

(疲れすぎて壊れてしまったのだろうか?)

 朱里は少し心配になって、亮を見ると、目が合う。


「朱里、前に会ったのいつだったか覚えてる?」

 唐突に亮が聞いてきた。いつだろう・・と考え、

「3か月前くらい?」

 気づけばそんなに直接会っていなかったことに気づき、内心驚く。

「そうだ。そして、電話で話したのも、3週間くらい前、夏休み入ってからは、メッセージの回数も内容も減ってきてた」

 それには朱里も気づいていたので、頷く。

「これじゃあ、このままじゃ、オレたちダメになり兼ねない。オレは、そんなのは嫌だ。だから、一緒に暮らそう」

 確かに、このまま関係を終わりにはしたくない・・それは分かるが、一緒に暮らすこととの繋がりが見えない朱里は、

「それは・・難しいんじゃ?」

 意味は分からないが、亮と暮らすなんて無理だと思えた。亮は人気歌手で、朱里との関係は成人まで秘密なのだ。亮は今、都内のマンションに一人で暮らしているわけだが、未成年だし、そんな彼と、同じ部屋で暮らすなんて、事務所だって認めるとは思えなかった。


 だが、さすが策を講じる亮というところだろうか、亮は飄々と朱里の疑問と戸惑いを払拭してきた。

「最近、オレのパフォーマンスが落ちてることに、プロデューサーたちも気づいてきてね、今日はもうダメだと、送り出されて、川崎さんに車で連れてきてもらった」

 それは地下の駐車場に川崎さんが居るってことではないか、と朱里は驚いて、それこそ沙織さんにお願いしなきゃと思っていると、

「あっ、もう沙織さんが対応してくれてるから大丈夫だよ」

 その亮の言葉に、そういえばチャイムの音が聞こえなかったことを思い出す。いつの間にか、連絡取る手段を得ていたのだろうか?と、思っていると、

「そりゃあ、夜遅くに訪れるんだからね、事前連絡は必要でしょ? 連絡入れたのは川崎さんだけどね」

 朱里の疑問が分かったかのように、亮は回答をくれた。


「この3か月、家に帰ることはあったし、一緒に暮らせば今より会う回数は着実に増えるだろ? オレの部屋は朱里用に元々1室空けてて、家具も入れてあるし、セキュリティーもしっかりしてるから大丈夫だと思うんだ。オレの部屋ではなく、母さんの部屋に入ってる体にもできるし」

 亮の母親は、亮と同じマンションの別の部屋で暮らしている。母親の職場にも通いやすい場所のマンションを選んだと引っ越す際に朱里は聞いていた。そして、亮の家には、何度か行ったことがあった。その際も、亮の母親に部屋に行く体で、マンションに入り、亮の部屋へ行った。もちろん泊まることはなく、いつも明るいうちに帰っていたわけだが。

「もちろん数日帰れない時もあるから、そういう時は、ここに帰ってくるとかもアリだと思うんだ」

 そうすれば両親や兄とも、たまに会えるだろ?と、付け加える。

「なんつーか、家に来た時の延長だと思って・・不安もあるかもしれないけど、朱里が嫌がることはしないから」


 嫌がることはしない・・それは、この部屋に入る際も、亮の部屋へ行った際にも言ってくれていたので、余り意識してなかったが、改めて言われると、朱里はドキドキしてくる。それでも、1つ1つ丁寧に説明されていくと、一緒に暮らすのも良いかもしれないと思えてきていた。ただ、朱里には不安がもう1つあった。


「私、何もできないけど・・いいの?」

 朱里は普段、食事も掃除も家事全般を沙織さん頼みなため、お手伝いさんがいないと生活なんて出来ないと思っていた。亮は普段から色々自分でやっているようだが、いくらなんでも自分のことまでしてもらうわけにはいかないだろうと、ましてやお手伝いさんを入れることは無理だろうと思うわけで、それでも良いのか心配だった。

「いいよ。食事はオレが作れるし、たまにさっ一緒にやるのもいいし。一応母さんも1週間に1回くらい来て、掃除とかしてくれてるし、なんとかなるとも思うんだ」

 亮はそれでも良いと言ってくれた。


(少しずつ沙織さんに教わっておこうかな?)


 すぐに引っ越すことはないと思うので、それまでに、せめて自分の身の回りだけでも整えられるようにしておくのも良いだろうと思った。元々高校卒業したら一緒に暮らす予定で、口約束ではあるが二人は結婚も考えていた。少し早まるが、朱里も亮と会えていない今の状況は嫌だったので、亮も同じ気持ちだと思うと嬉しかった。


 朱里の不安な様子が消えたことに気づいた亮は、再び問いかける。

「朱里、オレと一緒に暮らしてくれる?」

「うん」

 朱里が頷けば、亮も満面の笑顔になり、再び朱里を抱きしめた。



 一緒に暮らすためには、朱里の両親や事務所の社長など、許可がいるだろうなーと朱里は思っていたのだが、なんと亮は、朱里の部屋に入る前に、すでに両親と会って許可をもらっていたそうで、根回しの良さに脱帽するしかなかった。事務所の社長たちも説得済み・・というか、それだけ今の亮の状態が続くのは良くないと思われているみたいだと話を聞いた朱里は感じていた。そして、もちろん亮はツアー中ということもあり、すぐに一緒に暮らすとはいかず、2学期の終業式後、冬休み中に引っ越すことが決まった。家具類はあるので問題なく、荷物は亮の母親の家に送って、亮の部屋に行く際に少しずつ片付けていった。因みに朱里が通う高校への通学時間は、今とあまり変わらなかったのだが、それも亮が加味して住む場所を選んでいたようで、朱里は一緒に暮らすと決めた後にその事に気づいたのだった。


やっと二人のイチャイチャが、少しですが書けました。


朱里の家も亮のマンションも駐車場は地下にあるので、来る時は、いつも川崎さん(変装したり車変えたり駆使してくれている)に送り迎えしてもらっていた。

二人が一緒に暮らすと決めた日、二人が話終えたあとは、5~6時間客間で亮と川崎は休んで、早朝にライブを行う地へと帰っていきました。


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