↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/35

エピローグ.3 公表の時~ライブを終えて

エピローグ2と同じくらいの長さです。

『オレことRYO(りょう)には中学の頃からお付き合いしている彼女がいます』


 高校を卒業して1週間、佐伯朱里は歌手RYOのライブに中学時代の友人たちと来ていた。

 RYOは昨日18歳を迎え、高校を卒業し、これから本格的に歌手活動に専念すべく、今日のライブを皮切りに全国ツアーを開始する。


 そんなライブが終わろうかというところ、RYOのMCタイムにて、本人から突然の暴露に会場は大騒ぎになった。泣き出す者もいて軽いパニックが起こっているかんじだ。


 RYOが経緯を話して、温かく見守ってほしいと要望を語り、頭をさげると、朱里の周囲の友人たちから起こった拍手が会場中に広がっていった。ファンたちに二人の交際が受け入れられたことを感じて、朱里は涙があふれてきた。


 RYOは頭をあげ、会場をぐるりと見渡すと、

『ありがとう』

 と、笑顔でつぶやいた。そして、拍手がどんどん小さくなっていくのを感じたRYOは、更に話し始める。


『言い訳になるかもしれないけど、オレはファンのみんなに秘密はしたくなくて、もっと早く話せれば良かったんだけど、今まで話せなくて本当にごめんなさい。だから・・と言っては変だけど、ファンのみんなに、ここに来られなかったファンもたくさんいるのも分かってるけど、ファンのみんなにはちゃんと直接報告したくて、この場を設けてもらいました。だから、もう少しだけ話を聞いてください』


「あやまらないでー」「いいよー」という声が響く。


『ありがとう。彼女のことは黙ってきたけれど、それ以外ではオレは嘘偽りなくみんなの前に立ってたから、それは信じてほしい。これからは、新曲の発売とかは情報解禁可能になってからになるけれど、ちゃんと話していきます。彼女とは、実は1年くらい前から一緒に暮らしてて、今は口約束だけどいつか結婚しようと思ってます。あっ、プロポーズは、サプライズにしたいから事後報告になっちゃうかな?・・・え? 今言ったらサプライズにならない? うーん・・彼女サプライズが苦手で、言っておかないと当日固まっちゃって話が進められなくなっちゃいそうたから、このくらいはいいかな』


 RYOがステージ中央で、バックバンドのメンバーに突っ込まれ、照れながら話すと、会場から笑いがおき、空気がどんどん和らいでいく。気づけば彼のペースになっていた。

 朱里はといえば、サプライズプロポーズの言葉だけで固まって、打ち震えていた。


『それから、あと1つ彼女のことで話しておかないといけないことがあるんだけど・・彼女とは中学1年で出会って、すごく好きになって、何度も告白して、夏休みからお付き合いすることが叶ったんだ。そして今は”作詞家らいと”としても、オレの活動を支えてくれています。オレが彼女の詩を気に入って、それが好きになったきっかけでもあるんだけど、詩を書いてもらったり、アドバイスもらったり・・いゃー懐かしいな』


 亮のおかげで朱里の詩が事務所に気にいられたわけだけど、実際らいと=朱里の作詞した曲は人気が高かったりする。彼女=作詞家らいとという爆弾発言に会場では小さくつぶやく声がざわざわと、なんとも言えない微妙な空気になっていった。しかし、「懐かしい」と照れながらRYOが言うと、少しずつやわらいでいく気がした。


『・・ってことで、話はおわりっっ! 歌うぞーっ!!』

 RYOが叫ぶと、再び会場は大盛り上がりになり、アンコールがはじまった。


 ♪ ♪ ♪ ♪ ♪ ♪


 ライブが終わり―――――――


 朱里は友人たちと別れ、会場に居た。これから事前に預かったスタッフパスを使って、RYOのところに行く予定だが、通路の端で友達を待つふりをしながら、会場から出るファンたちの声を聞いていた。


「好きだったのに彼女が居たなんてー・・そりゃ私が付き合えるなんて思ってないけどー」

「うんうん、でも生で話してくれて聞けたのは良かったよね」

「ちゃんと話してくれたのは嬉しかったねー」

「彼女が大切で本当に好きなんだろうね」


 泣いている子もいて、それを慰めてるかんじの様子もちらほら見えたけど、今までRYOが見せてきた人柄のおかげか、まあまあ好意的なのかな?と感じていた。


「・・・にしてもRYOの彼女がらいとだったなんて・・詩は好きだけど複雑~」

「どんな子なんだろうねー」


 らいと(私)のことを話す声も聞こえた。

 スマホを見ると未読メッセージがたくさん・・でも、みんな「良かったね」とお祝いのメッセージでほっこりする。このライブでRYOが話していた部分の映像は、ファンクラブのサイトにほぼ同時に公開され、さらにRYOの話した文面も掲載されたので、ライブに来ていないファンにもほぼ時差なく彼女の存在は流れていた。ネット上でもかなり騒がれていたらしい。チェックしてくれてた友達も居て、反応を送ってくれていた。「らいと=朱里には私もビックリしたんだけどー」と加えて。

 ネット上もやはりちゃんと自分の言葉で説明したことで、かなり好意的に受け取られているようだった。


 ざっと確認を終えると、大分会場内が減ってきたので、移動することにする。バックから渡されていたスタッフパスを取り出し首にかけ、スタッフ専用入口に向かうと扉の前に人垣ができていた。

(うげっっ記者だらけじゃん・・)

「先ほどの話について本人からコメントくださいっ」

「先ほどの話について説明をー」

「恋人について説明してください」

 などなど声がきこえる。今日のライブは全国ツアーのはじまりのため、いくつか新聞や雑誌記者たちが来てはいたのだけど、会場内のスタッフ専用出入り口につめかけられているようで、

「ただいま確認しておりますのでお待ちください!」

 扉の前に居るであろうスタッフが対応に追われていた。


(どう入ろう・・)

 人垣を眺めていると、

「佐伯さん」

 左側から呼ぶ声が聞こえ、そちらを見ると少し離れた人垣の端から、見慣れた顔の男性スタッフが声かけてきた。私が反応すると、

「こちらからどうぞ」

 人垣の端に確保された通路に案内された。

「ありがとうございます」

「川崎さんに頼まれまして・・」

 彼はまだ、朱里がRYOの彼女とは知らないが、普段RYOのライブの際、川崎の下で動いてくれるスタッフの一人だ。朱里は亮と暮らすようになってから、時々アルバイトとしてライブスタッフの手伝いをしていた。チラッとマスコミ対応しているスタッフを見ると、こちらも普段会場スタッフをまとめている顔見知りの男性だった。朱里がライブ後に来るということで、配置してくれていたのだろう。川崎の気配りにさすがだなと思っていた。そして、記者たちの視線を少しあびた気がしながらスタッフ専用扉から入った。


 RYOの控室前、川崎のところに行くと、バックバンド用の控室へ案内された。川崎が扉を開け、

「お待たせしました」

 中に入ると、バックバンドのメンバーとRYOのプロデューサー、そしてRYOが居た。朱里が入るとRYOは満面の笑顔になってこちらを見つめてくるので目が合う。軽く微笑んでバンドメンバーに向かい、

「お疲れさまです。改めて自己紹介いたします。作詞をしています、らいとです。えっと・・RYOとはお付き合いしています。よろしくお願いします」

(改めて言うと照れるな・・)

 朱里が挨拶すると、

「朱里ちゃんがRYOを好きっぽいのは気づいていたけど、まさか既に何年も前から付き合っていたとか、良く今まで隠してきたなぁ」

 RYOがライブ後あらかた話したみたいで、バンドのリーダーであるドラムのTokiさんが関心しながら言う。

「RYOの時はスイッチが切り替わるみたいで・・ひゃっ」

 言っている途中で、RYOが後ろから腰に手をまわして抱きしめるようにくっついてきた。想定外の行動に、

「ち・・ちょっとスイッチは?」

 スイッチとは?な顔になっている面々を見て、右腰にある亮の頭に向けて問うと、

「もう無いよ。オレたちが恋人同士なの話した時に壊れたし」

 RYOは立ち上がりながら答えた。そして朱里の右に立ち、腰に手をまわして自分のほうに寄せると、

「・・ってことで、よろしくっ!」

 満面の笑顔で敬礼する仕草をしながら言った。周りの大人たちは「はいはい」というかんじになる。


「RYO、マスコミが殺到しているので、対応を決めたいんだけど。できればRYOが直接マスコミの前で話すのが良いと思うけど、どうかな?」

 川崎が確認する。

「朱里抜きだよね?」

「それが良いかと」

「OK」

「では会場内はそろそろ出てもらわないとだから、帰りに裏でということにして、朱里ちゃんはプロデューサーと一緒に他の方々への挨拶してもらって、RYOたちは帰り支度をお願いします。」

 てきぱきと指示する川崎に従い、行動を開始した。


 普段ライブに関わる裏方スタッフ、RYOの事務所から来ているスタッフー先ほど案内してくれた人たちなど、ある程度集まっているので、朱里はらいとであるという話しをしたわけだが、まあかなり驚かれたわけで、分かっていたこととはいえ、これから今までと同じにはいかなそうだなーと、思っていた。


「佐伯さん」

 先ほど案内してくれた男性スタッフが、声をかけてきた。

「ライブで話を聞いた時、「彼女」は佐伯さんではないかという予想はしてましたが・・佐伯さん、RYOが好きみたいでしたが、ファン的な感情だと思ってましたよ~」

 そう言われ、

(あれ?さっきも似たようなことを・・)

「そんなに分かりやすかったですか?」

「付き合ってるとまでは思いませんでしたけどね、多分そう思っていた人は多かったかと」

(マジか・・)

「あっでもホント、ファンなんだろうなーって思ってたくらいだよ」

 と、フォローされた。

「おっと、あまり話していると視線が怖いな・・」

 そう彼が私が背にしている通路の奥を見つつ言うので、振り返ると、RYOが不機嫌な顔してこちらに向かってきていた。

「じゃ、お疲れさま」

 そう言ってRYOとは逆のほうへと彼は去っていった。


 RYOは朱里の横にくると、手を取った。

(亮ってホント、私と手を繋ぐの好きだよね・・)

「何話してたの?」

「ん? 挨拶してたんだよ。あと、なんかRYOのファンって、バレてた」

 この場で好きと言うのは照れ臭くて、ごまかした。

「まぁ、確かに朱里は分かりやすいからね」

 亮にクスクスと笑いながら言われ、

(マジか)

 と、思っていると、

「だってオレ、朱里に好かれてる自信あったから、諦めずに告白できたんだし」

「え?」

 ライブで昔話して、色々思い出していたのだろう。中学1年の時の話を持ち出してきた。

「表面では頑なに距離取ろうとしてたけど、なんとなくね。だから、関わっていけば、ちゃんとオレを見てくれるようになるかなー?と。まぁ、朱里に振り向いて欲しくて必死だったな、オレ」

 懐かしそうに亮は語りながら、歩き出した。


 亮の話を聞きながら、朱里は混乱していた。朱里は亮が告白してきた頃は、まだ好きじゃ・・あれ? 好きにならないよう必死だった?

 ・・あれ? それって・・・あれ?・・・


 ……私、亮のこと、かなり早い時期(うち)から好きだった?


 今になって、それを自覚した途端、朱里は顔が熱くなるのを感じた。心臓が高速で脈打つ。

(ひぃー・・待って、嘘でしょ)

 ぷるぷると朱里が真っ赤になって頭を横に振っていると、亮が怪訝な顔をして朱里の顔を覗き込んだ。

「朱里? どうかした? 大丈夫?」

「えと・・うん、へ・・平気。ちょっと、昔を思い出してただけ」

 戸惑いながら、なんとか取り繕って朱里が答えると、

「そう?・・もしかして、今まで自覚してなかった?」

「・・っ」

 亮がニヤニヤしながら、直球で朱里が今感じていたことを口にしてきた。亮に気付かれ、朱里は余計に恥ずかしさに悶えることになった。その反応に、

「あははは・・ごめんって」

 亮は楽しそうに、朱里の頭をなでながら、謝った。

「うぅ・・もぉ・・」

 軽い謝罪に諦めつつ、照れて悶えるしかない朱里だった。


 端から見れば、イチャイチャしながら、ホール裏の出入口へ向かっていたわけで・・

「オイ、そこのバカップル。そろそろ、いいか。仕事だ、切り替えて」

 川崎が少し怒気を込めて、二人に言ってきた。気づけば外に出る扉の手前に着いていて、周囲の大人たちからはどこか生暖かい目で見られていた。完全に二人の世界に浸っていたことに気づいた朱里と亮は、居心地の悪さを感じて、

「「すみません」」

 そろって、謝罪した。

「いや・・分からなくもないけど、とにかく、ここから外に出るから、家に着くまで自重してくれよ」

「はーい・・で?」

 亮がRYOの顔つきに、仕事モードに戻って、この後の流れを確認した。


 まずRYOと川崎、他数名のスタッフが先に出て、記者の対応をする。その間に、朱里やプロデューサー、残りのスタッフがそれぞれ用意された車へと移動するそうだ。朱里の乗る車への案内は、ある女性スタッフがしてくれることになった。因みにバックバンドのメンバーやダンサーの人たちなどは、既に移動を始めているらしい。


「じゃ、RYO出るよ」

 川崎が言うと、ドアが開く。その瞬間、外の喧騒が聞こえてくる。


 出待ちのファンが居るようで、RYOの名前が口々に叫ばれていた。RYOの姿が視認されたのか、


「せーのっ!」

「「「RYO、ありがとー! ずっと大好きだよー!」」」

 パチパチパチパチ・・・


 ファン同士で打ち合わせたみたいで、叫んだあと、拍手が鳴り響いていた。ドアが閉まれば、外の様子は分からなくなるが、朱里は、変わらずファンが待っていてくれたことが嬉しかった。


 少しすると外からドアが叩かれる。RYOと記者との話が始まった合図だ。そして、朱里がドキドキしながら外へ出ると、ファンたちが口々に叫んでいる声が聞こえてきた。多少遠いので、そんなにはっきのとは聞こえないが、いくつか通る声が漏れ聞こえてくる。


「彼女の話、聞かせてー!」

「RYO、カッコよかったよー!」

「これからも応援してるよー!」

 好意的な声に嬉しく思っていると、

「らいとの詩も好きだよー!」

「らいとーありがとー!」

 らいとへの声援も聞こえてきた。その声に朱里は胸が熱くなり、涙がこぼれた。


 用意された車に乗り込む直前、朱里は遠くに見える、RYOのファンたちに向かって、深く一礼した。暗いので、恐らく誰にも気づかれていないと思うが、朱里は、「ありがとう」と「よろしく」を込めて、頭を下げた後、車に乗り込んで亮を待った。


 ……ホントに良かった。

 亮と出会った頃は、まさかこんな関係になるとは、なれるとは思っていなかった。付き合うことができて、しかも自分の詩まで受け入れられた。


 亮が川崎と車に戻ってきて、朱里の隣に座ると、すぐ手を取って、満面の笑顔を向けてきた。

 この笑顔が好きだった。彼の隣に居ることができて、当たり前に一緒にいることができる幸せを噛みしめる朱里だった。



 ***おしまい***


全35話、完結です!

ここまで、読んでいただき、ありがとうございます!!


なんとか1作、無事書き終えることができました。今後は、また、別の作品を書く予定です。

良ければ、また、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。