↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/35

隼人との夕食

 週末・・・

 最近週末土日のどちらかに、良く亮が家に来る。それは、兄に会いに来ているようだが、今週は来なかったようだ。

 それにホッともするが、少しモヤモヤした気分を感じてから、朱里はふと亮のことを考えていたことに気づき、ブンブンと考えを振り払うように頭を横に振った。


「朱里? どうかしたか?」


 いつの間にか、ダイニングに入ってきた隼人に、声をかけられた。これから久しぶりに二人で夕食だったので、嬉しくて頬が緩む。隼人は、帰宅時間が不規則で、週末も出かけることが多く、食事の時間が合わないことが多い。両親は今、父の海外公演に、母も付いて行っているので、不在中だ。


「何でもない」

 隼人にそう返したにも関わらず、

「そう?」

 朱里の前に座ると、勘繰るような視線を向けてきた。


 隼人が座ったところで、沙織さんが残りの食事を運んできたので、二人は食事を始めた。食べはじめて、少しすると、隼人が口を開いた。

「この土日、亮くんは、芸能事務所に行ってたそうだよ。最近作った曲、プロデューサーから良くなったって、褒められたってさ」

「・・ふーん」

 何を話すのかと思えば、隼人は亮の話をしてきた。ずいぶん二人は仲良くなったようだ。朱里が興味なさげに返すと、

「なんか反応薄くない? お前、作詞のアドバイスしてあげたんだろ?」

 そう問われるが、朱里としてはアドバイスをしたつもりはないので、

「感想言っただけだし、活かしたのは向こうでしょ」

「だとしても、気になるだろ?」

「別に」


 朱里は、気にしていないというかんじで黙々と食べていると、何故か隼人は驚いて、不思議そうに聞いてくる。

「別にって・・この土日、亮くんが来ないこと、朱里、気にしてただろ?」

「・・・してないけど」

 一瞬夕食前に考えていたことが頭に浮かび、若干間をおいて答えてしまう。

「そうかなぁ?」

 隼人の納得いかなそうな様子に、

「お兄こそ、なんでそんなにあの人のこと・・私のことは全然考えてくれないんだね」

 朱里がふてくされたように、つぶやくと、

「あの人ってお前は・・ちゃんと考えてるにきまってるだろ?」

 その言葉に、朱里は首を横に振る。


 亮のことは、苦手だし関わりたくないと言ったはずなのに、GWのライブの時は、「妹に手を出すな」というくらい、兄バカだったのに、作詞のことにしても、この間は二人で出かけることを薦めるとか、わざわざ関わるような話をしてくる。とても妹のことを、考えてくれているとは思えなかった。


「お兄ちゃんは、亮くんのこと、気に入ったし、朱里にとっても良いと思って提案してきたんだが」

「全然良くない」

「そうか? 少なくとも、この間の作詞は、朱里のためになったと思うよ。お兄ちゃん以外に書くとまた違っただろ? それに、この前くれた詩、亮くんに書いたあとに書いただろ? なんかテイストが今までと違ってたし」

「ダメだった?」

「いや、良かったよ。なんつーか、雰囲気が変わって、お兄ちゃんたちも、曲作り楽しめたし」

「・・そう」

 思わず顔がほころぶ。兄に褒められるのは、嬉しくてたまらない。あれは確かにいい経験だった。別の人に詩を書くことが、こんなにいつもと違うとは思わなかった。


「それに、朱里は亮くんが好きなんだろ? お兄ちゃん、彼ならいいと思うぞ」


(なっっ)

 詩のことを喜んでいると、隼人がそんなことを言ってきた。


「好きじゃないっ!」


 思わず立ち上がって、叫んでしまう。

「朱里、食事中。行儀悪い」

 これには、さすがにピシャリと怒られる。マナーには厳しい兄だ。

「ごめんなさい」

 座りながら謝れば、隼人は頷くと、仕切り直しとばかり、一度目を伏せる。


 そして、再び朱里を見据えると、

「じゃあ、朱里は結局、亮くんのこと、どう思ってるんだ?」

 直球で聞いてきた。GWの時は、関わりたくないと説明していたわけだが、あれから1か月経ち、告白もされて、変化があるのかを聞きたいのだろう。朱里は、兄から聞かれれば、はぐらかしても無駄なため、話さないわけにはいかないと思うが、

「誰にも言わない?」

 まだ誰にも話しておらず、亮を気に入っている隼人から、伝わるのは避けたい。確認すると、隼人は首肯した。


「最近は・・気になってきてるし好感もある。けど、まだ本当に好きじゃないから。好きになりたくないから、関わりたくないと思ってる」

「なんでそう思うの?」

 隼人に優しく尋ねられ、朱里は、今まで心に重く抱えていたことを一気に話す。

「あの人は、これから歌手としてデビューすることになるから。仮に今、付き合うことができたとしても、デビューが決まったら、どの道別れなきゃならなくなる。そんな、付き合う前から、いずれ一緒にいられなくなることが分かってる相手と、付き合うなんて出来ないよ。だったら最初から好きにならないほうがいい」


「なるほどな・・・でも、それくらいは、彼も考えてるんじゃないか?」

 朱里の話を聞いて、納得したあと、間をおいて隼人は言う。言われてみれば、自分本位で自分の望みを叶える為なら全力で、策を講じそうな亮のことを考えると、何かしら考えているかもしれないとは思う。でも、

「・・かもしれないけど、無理だよ」

 そのことで亮の歌手への道が、遠のいたりしてしまうのではないだろうか。朱里が彼の邪魔をするわけにはいかないと思う。

「うーん・・相変わらず頑固だなぁ。もっとポジティブに考えればいいのに」

「そうは言っても、あの人の学校での人気も考えれば、関わらないのが一番だよ」

「そこはまあ、彼に頑張ってもらうしかないかな」

 隼人が苦笑いをし、思い返すような仕草をするので、何かあるのかと目で訴えれば、

「先週、ちょっと相談されただけだよ。お兄ちゃんも高校では人気者だったからな」

「・・そう」

 先週、亮が来ていたのは、そういうことだったのかと、朱里は理解した。


 隼人が先に食事を終える。

「ごちそうさま」

 沙織さんに声をかけ、いつもどおり、ミネラルウォーターのペットボトルを受け取ると、立ち上がり、朱里の横に立つ。

「朱里の考えは分かったけど、あれこれ考えすぎずにさ、自分の想いに素直になったほうがいいと思うな。お兄ちゃんとしては、今そんな、辛そうな顔の朱里を見ていたくないかな」

 そう言うと、朱里の頭を優しく撫でる。朱里は、表情に出ていたのかと思ったが、兄に撫でられ、頬がゆるむ。

「まあ、無理にとは言わないけど、いつまでもはぐらかしてないで、亮くんにはちゃんと伝えることだな」

「・・分かってるよ。お兄、絶対言わないでよね」

 再度口止めする。

「言わないよ。これは朱里から話すべきことだからな」

「うん」

 朱里の返事を聞いて、隼人は満足し、ダイニングから出て行った。


 いつかは、ちゃんと結論出さないといけないということは、朱里にも分かってはいたが、はっきりさせることに、まだ戸惑いがあった。すぐには無理だけど、これからは、少しずつちゃんと向き合っていく必要があるかもしれない・・とはいえ、まだあまり関わりたくはないけど。そう思う朱里だった。


色々あやふや?落とし物? ぼんやりさせていたことの回収回でした。

誰を聞き役にするか悩んだ結果、お兄ちゃんにお願いしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。