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6月頭-トラブル-

20投稿(話)目~

 亮が告白しはじめた週の、週末の朝、6月に入り、朝から暑い日だった。朱里が学校の門を通ると、昇降口へ向かう道沿いに普段より多くの人が居る気がした。そこからは校庭が見えるので、朝練をしている運動部の様子も見られる。亮や怜、サッカー部など女子から人気の男子がいると、見ている女子も多いわけだが、今日はそんな様子ではなさそうだ。そう思い、昇降口へ向かっていると、朝霧が数人のクラスに居る亮の取り巻きたちと一緒にいるのが見え、なんとなく嫌な予感がしながら歩を進めると、

「佐伯さん、話があるんだけど」

 朝霧が目の前に立ち、若干とげのある声で話しかけてきた。そして、取り巻きたちは朱里を囲うように立つ。


 ……話しか、まあ、あの人のことだろうけど


 最近、亮が朱里に告白していることは、ほぼ学校中に知れ渡っているためか、クラスメイト以外にも、亮に好意を持っている人たちが、周囲あちこちから、こちらの様子を窺うように見ている。他にも何が起きるか興味津々というかんじで、遠巻きに見ている人たちもいるほどだ。

 朱里は面倒だと思いながらも、逃れられそうにないと思い足を止め、

「何?」

 それだけ返す。

「佐伯さん、最近亮くんと仲いいみたいだけど・・どういうつもりで近づいてるのかしら?」

(近づくも何も)

「向こうが勝手に・・」

 口数少なく小さく答えると、朝霧の右に立っていた磯貝が、

「そうやって大人しいふりして、男子の気を引いてるんでしょ!」

 と言ってくる。


 ……大人しいふり――ふり、とは?


 そんなつもりは朱里に無いので、首を掲げる。


 朱里の反応の薄い様子に、朝霧たちは更に不機嫌になる。

「私たちに断りもなく、毎日毎日教室で告白とか、いい加減にしてもらいたいんだけど」

 それが本題か・・と、朱里は思う。はぁーとため息をつき、

「それはあの人が言ってるだけ・・」

「佐伯さんがちゃんと返事しないからでしょ!」

 被せるように朝霧は言ってくる。

(返事か・・)

「断ってるんだけど?」

 ここ数日朱里は断っているつもりだったのだが、断っているということに、磯貝が、

「亮くんのこと断るなんてっ」

 ヒドイというかんじで言う。朱里はそちらをチラッと見て、

「なら、どうすれば?」

 どうして欲しいのか言ってくれと問う。


 ……断るのがダメで、OKなら付き合うことになるわけだが、それは良いのだろうか? そもそも、あなたたちは、あの人と付き合いたいと思っているのだろうか?


「あの人が好きなら、本人に言えばいいじゃない」

 朱里の問いかけに、答えを出せずにいる朝霧たちに向かって言うと、全員一瞬で顔を真っ赤にし、

「そんなこと言えるわけがないじゃない!」

「ななな・・何てこと言うのよっ」

「亮くんはみんなのアイドルなんだからっ」

 口々に叫び出す。そして、

「付き合えるわけないじゃないっ」

 と、朝霧が言うので、その言葉に朱里は、

「わかってるじゃない」

 小さくつぶやいた。


「え?」


 朝霧が反応したが、朱里はそれをスルーして、

「話しは終わり・・よね?」

 まだ顔の赤い面々を見渡し、その場を離れようとするが、朝霧が気を取り直し、

「いやいや、そうじゃなくてっっ」

 くいさがってくるので、もういい加減にしてほしいと思った朱里は、ついに、


「あの人には私も迷惑してるの。こっちは、付き合うつもりなんて、無いから」

 きっぱり迷惑だと言うと、

「迷惑って、そこまで言わなくても」

 朝霧が信じられないというかんじに言うので、

「こっちとしては、毎回断ってるのに、寄ってこられて、更にあなたたちみたいな人も現れて、私としても迷惑でしかないから」

 少し怒気をこめて言ったことで、周囲に居た、取り巻きたちは押し黙る。それを機に、立ち去ろうとすると、


「朱里?」

 背後から亮の声がした。教室に居たのか、昇降口のほうから、こちらに向かってくる。

 取り巻きたちの人垣をかき分けるように、朱里の近くまでくると、

「おはよう、朱里。何してんだ?」

 挨拶をしてきた。その視線は、朱里を一度見たあと、朱里の前に立つ朝霧に向けられる。


 朱里が黙っていると、朝霧が、

「亮くん、おはよう。えっとね、佐伯さんが最近亮くんと仲が良いみたいだから、ちょっと話をしていたの」

 ただ話をしていただけだと、説明をする。その様子に、朱里はもう良いだろうと思い、取り巻きたちの人垣から、昇降口へ向かおうと、歩きはじめた。すると、今度は背後から磯貝の声が聞こえる。

「佐伯さん、亮くんのこと迷惑って言ったのよ。付き合うつもりも無いんですって、だから・・」

「知ってるよ」

 磯貝の話をさえぎって、亮が返事をした。それを聞いて、驚く取り巻きたち。

「朱里はオレのこと嫌いみたいだからな。でも朱里の気持ちは関係ない。オレが、オレ自身が朱里のことが好きで、付き合いたいと思ってるんだ。オレから関わってることだから、朱里にこういうことはやめて欲しい」

 取り巻きたちに囲まれている亮が、宣言するように言う。そして、昇降口へ向かおうとしている、朱里のほうへ体を向けると、

「オレは朱里のこと、大好きだから。諦めるつもりは無いからな!」

 朱里に向け叫ぶが、言われた朱里は、振り返ることなく、昇降口に入った。


(そんなこと言われても、困るよ・・)

 胸が痛む。顔が熱い・・赤くなっている気がする。

 自分の下駄箱に手を置いたまま俯き、朱里はなんとか心を鎮めようとするのであった。



 亮が戻って来る前にと、朱里は教室へ移動する。

「おはよう。今日は遅いね」

 教室に入ると、朝練から戻った莉奈が声をかけてきた。どうやら外の騒動は、知らない様子だ。

「あー・・」

 なんと言えばよいのかと、窓の外に目を向けたら、人垣が、ばらけて移動するのが見えた。

(ここからあの人は見て、来たわけか)

 1年の教室は1階で、植え込みがあるが、昇降口へ向かう人たちが見えるので、正面ではなくとも、気づいて来てくれたのだろうと朱里は判断した。


「なんか、ずいぶん集団が移動してるけど・・」

 莉奈も朱里の視線の先を追い、外を見て、疑問を口にする。多少、距離があるので、良く見ないと誰がいるか分からないだろうと思い、

「あの人の取り巻き」

「え?」

 莉奈に回答を与える。

「・・に囲まれてた」

「え? それって・・大丈夫だったの?」

「あの人が来たから、逃げてきた」

「そっか・・」

 莉奈はホッとしたあと、苦笑いをした。そこに、亮が教室に戻ってきた。


「朱里」

 呼ばれるが、先ほどのことで、なんか気まずいというか、名前を呼ばれると、構えてしまう。ビクッとしたことで、亮はそれに気づいたのか、普段話かける時より、距離を取ったところで立ち止まり、

「ごめん、朱里。あんな事が起こらないよう気をつけてたつもりだったけど、結局巻き込んで。あの子たちには、ちゃんと説明して、納得してもらったから・・」

「納得って本当に? もう問題はおきないってこと?」

 莉奈が亮の話を聞いて、朱里を守るようにして食い下がる。

「・・・多分」

「多分って」

「ちゃんと考えるから。朱里をちゃんと守るから。何かあったらオレに伝えてほしい」

「分かった。朱里もそれでいい?」

 莉奈が亮に対応し、朱里に確認すると、朱里は小さくうなずいた。それを見て、亮は自分の席へ向かうのだった。


そして初投稿から1か月経ったことに気づきました。

現在約47500字・・次かその次あたりで5万文字なかんじでした。


ブクマ&感想、ありがとうございます。読んでいただき感謝です!

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