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中間テスト期間~終了

 翌日、金曜日。 

 「朱里、おはよう!」

 教室に着くと、さっそく亮が挨拶しに来た。最近いつものことなので、クラス内では慣れてきたのか、あまり注目されなくなった。ただ相変わらず、取り巻きの彼女たちの視線は痛かった。


 朱里もいつも通り会釈すると、亮はあからさまに顔をしかめる。ご不満のようだ。

「来週のテストってどんなだろうな。朱里は、テスト勉強ってどんな風にやるの?」

 いつもは挨拶だけで去るのに、今日は質問してきた。しかも答えざるを得ない聞き方で。

「毎日、復習・・してるから」

 小さく答える。会話ができ、亮の不満顔が消える。

「ちゃんと復習してるんだ。オレ全然だよ、やばいかなー?」

 関心しながら言ってくる。

 心の中で「今からやればいいじゃん」と言いつつ、

「さぁ?」

 と、短く答える。莉奈がこちらを見て、呆れるようにため息をついていた。

 そこに怜が登校してきたので、亮はそちらへ挨拶し話はじめた。



 テストが終わるまで1週間、部活動停止期間なので、テニス部の莉奈と帰る。帰りの話題は、最近亮のことばかりだ。話題にすることすら気が重い。


「やっぱり距離縮まってるし」

 莉奈が呆れて、朝のことを言う。

「違う。あの人が返事させようとしてくるから」

 仕方なく答えているだけだ。

「朱里だけじゃなくて、亮くんも、朱里の習性を理解しはじめてるってことだよ。それだけ距離が近づいてるんだって」

「うっ・・」

 そう言われるとそうかもしれない。

「朱里もね、亮くんに向ける表情とか雰囲気が、柔らかくなってるんだよ、気づいてる?」

「なってる?」

 莉奈は頷く。無意識だった。朱里がうなだれていると、

「まあ、話しすれば苦手意識も減るだろうし、慣れてきたんだろうけど・・距離取りたいなら気をつけないと」

「だよねー」

 でも向こうから近づいてくるから、距離取るにも限界があるんだよなーと悩む。


「でも別に、普通に友達になればいいんじゃない?」

「怜みたいなこと言わないでよ・・」

 クスクス・・と、莉奈が笑う。なんで二人して、亮と仲良くなることを推奨してくるのだろうか。

「だって亮くん、朱里と仲良くなりたいみたいだし」

「莉奈もそう思う?」

「うん。多分、朝霧さんたちも、気づいてると思う」

 朝霧さんとは、同じクラスで、亮の取り巻きたちの中心にいる人だ。GW明けに付き合っているのかと、尋ねてきた彼女のことを思い浮かべる。そこそこ確信があって聞いてきたのだろうか?


 参ったなー・・と思っていると、

「朱里は結局、亮くんのこと、どう思ってるの?」

「はぁ? 分かってるでしょ?」

 なんてこと聞いてくるのか。

「いや・・前はキライだ苦手だとか言ってたけどさっ、最近話すようになって、変わったのかなー?と」

「・・変わってないよ」

 むしろ迷惑感が増えてる。確かに苦手意識は薄れつつあるかもしれないけれど、彼と仲良くする気はないという点は、変わっていないのだ。

「ホントかなー?」

 じぃーっと、莉奈は朱里の顔を見てくる。


「まぁ、今はそういうことにしておきますか」

 ここ通学路だしね! と、右手の人差し指を口元に当てて加える。確かに、どこで誰が聞いているか分からない。

「何かあったら、ちゃんと話してね! 話し聞くから」

「ありがと」

 そうして「またねー」「バイバイ」と、互いの家の方向へと別れたのであった。



 --------------------



 中間テストが終わってしまった。まだ答案用紙は戻ってきてないが、自己採点的にそんなに悪くはないと、朱里は満足に思う。

 それよりも別のテスト・・とまではいかずとも、やらなければならない事があった。


 週末自宅のピアノ部屋で、亮の楽譜を弾いてみた。相変わらずいい曲だ。イメージを膨らませる。

 これは亮が歌う曲だ。兄やバンドで歌うわけではない。テイストをかえるべきだろうか?


「フフッ・・」


 普段と違う作詞の感覚に、自然と笑いがこぼれる。これはこれで楽しい。

 やって良かったと思う朱里であった。


 そして朱里は考える・・。 

 詩を書きあげ満足したわけだが、さて、これ、どう渡そうか? こちらから接触するのは避けたいし・・木曜に音楽室に来るだろうか?

 満足のいく詩が書けて、早く見てもらいたい気持ちもでて、そわそわしてしまう。当然連絡先は交換していないし、するつもりもないので、渡す手段が限られる。

 怜に頼んでも、自分で渡せと言われそうだし・・お兄は連絡先交換しているだろうか? 兄へのお願いに備えて、とりあえず兄にも1曲書いておこうと決めた。週明けに向こうから、何かしらアクションがあるかもしれないから、それに対処するのが良いかもしれない。




 そう決めて、月曜日の学校を迎えた。今日から、夏服移行期間になり、チラホラ夏服姿が見られる。

「おはよう! 朱里!」

 教室に入り自席に着くと、いつものように亮が挨拶してきた。「おはよう」と、言いそうになるのをこらえて会釈する。一瞬顔をしかめたが、亮はニコニコと、何か聞きたそうにしている。それに反応しないでいると、諦めたのか、そのまま自分の席へと戻っていき、ドスッと座り頬杖をついた。



 ――その日の放課後・・・

 部活へ向かおうと、朱里が準備をしていると、ニコニコ顔の亮が近づいてきた。

 ……嫌な予感しかしない。


「朱里、連絡先交換しよ♪」


 やっぱり面倒ごとだった。クラス内に残っている人たちの意識が、二人に向いているのが分かる。話をするつもりはないので、首を横に振って立ち去ろうとしたが、亮が進行方向に立ちふさがる。

「いいじゃん、連絡あるとき困るでしょ?」

 と、スマホを出して言う。

(困らないし、困ってるのは今だよ)

 そう思い、チラッと亮の後方を見ると、朝と違って怜がいるのが見えたので、手招きする。


 それに気付いた怜は、すごく嫌そうな顔をしながらも、隣にきてくれた。口元を右手で隠して、左に立つ怜に耳打ちする。


「はぁ? オレを伝言係にするなよ」


 小声で言うが、近くの亮に怜の声は、聞こえているようだ。顔が引きつっている様子が見え、それをチラリ見てから、怜に再び耳打ちする。目の前で朱里と怜が、自分より近い位置で内緒話しているのを見て、だんだん不機嫌な顔になっていく。


「自分で言えよ」

(話したくないの知ってるでしょ)

「だからってオレを経由するか?」

(他にいないし)

「それにどの道、今回だけじゃ済まないだろ?」

(今、回避できればもう来ないでしょ)

「・・そうならないと思うぞ」

(怖いこと言わないでよ)


「あのさ、目の前でコソコソされると、気になるんだが・・」

 亮がしびれをきらして声をかけてきた。怜と目を見合わせて、朱里は笑顔を向けたあと、怜を亮のほうへ押し出した。


「お願いね!」と言って、朱里は二人とは反対側に行き、教室を出た。


 あとは怜に任せたっ!


怜との内緒話部分。朱里の( )内の声は、亮にはボソボソくらいにしか聞こえていなくて、怜の声は小声で聞こえているというかんじです。

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